◇一之輔真打披露口上
司会の“たま”が不慣れでたどたどしく喋り始めます。
三三くんが太鼓を叩き、兼好くんが笛を吹くオープニング。
まずは、なぜか年功序列、一番芸歴の長い柳家三三から始まりました。
中身の無い長いダラダラした挨拶に、並ぶ4人から激しい突っ込みに合う。
結局、一之輔は勿論のこと残る5人も宜しくお願いしますと結ぶ。
次に、圓楽党を代表して三遊亭兼好からの挨拶。一之輔には、落語界の枠にとらわれず広く世界に羽ばたく芸人に成って下さい!と、ほめ殺しのような口上を行いました。
次に、上方講談協会から旭堂南湖からの口上!これが一番面白かったです。
一之輔との出会いから講談調に語ったのでしたが、一之輔が如何に天狗かと言う裏話を披露しました。
続いて“たま”が、何故か上方の一之輔同期である林家イチローさんが謹慎を喰った話を披露して、いよいよグズグズな口上に成りました。
口上の最後は、芸協を代表して三遊亭遊馬よりご挨拶。
高校、大学と憧れる先々に一之輔が進学したと言う埼玉出身の遊馬。
更に、国立演芸場の“芸術選”においても、遊馬さんは、漸く自身銀賞を貰ったと思ったら、
一之輔さんは、今年は“大賞”を授賞しました!と、祝福しました。
そして、この後、口上では珍しく当人の挨拶。一之輔曰く、この会は既に四年続いているが、始まった時は、三三兄さんが二回で厭きると予想していたのに…
どうぞ、皆さん!この六人を宜しくお願いしますと〆て、更に三本〆へ。
で、この後、じゃん拳大会で出番決め。先勝は一之輔で5番目を選ぶと、
次が南湖さんで4番目、その次が三三くんで3番目を、更にその次が兼好くんで二番目を選びました。
いよいよ、たまと遊馬さんが残されて、ラストじゃん拳の末に、トップバッターが遊馬さんに。
そして、トリを一番嫌がっていた、たまに決まりました。
◆『出来心』遊馬
この人も、この会でしか聴かない咄家さんです。芸術協会の方は、本当に聴きに行きません。昇太、鯉昇、小柳枝、遊雀、それと年に1~2度の桃太郎。
この人の声は、米丸師匠にどことなく似ていますね。
さて、『出来心』。最初の親分から、子分が説教される場面で、
子分曰く「こう見えて私も土蔵破りをした事がある」と言う。
実は土蔵ではなく、寺の外塀で、墓場に入って石ばかりというのはよく聴くパターンだが、
遊馬さんのは、洋館に忍び込んだ!と言って実は、公衆便所でした!みたいな話なんです。新作の芸協って臭いがしました。
勿論、前座さんの『出来心』よりは、それはデキていますよ。ただ、小三治の『出来心』と比べたりすると悲しくなります。
何を聴かせようとしているのか?したいのか?基本的に『出来心』なんて、語って聴かせる噺じゃないから、もう少し笑わせて欲しい。
◇黄金の大黒/兼好
かなり無理栗に20分で演じた兼好くん。それなりに上手さを見せたけど、間も詰めないと入らない尺でした。
もう少しジックリできる根多が聴きたかったと感じました。
◆のめる/三三
何度も聴いている三三くん自身が好きで、十八番の根多です。
しかし、毎度私が不満なのは、詰め将棋の場面です。
将棋をやらないのは分かるかけど、本当に気のない演技に見えてしまいます。
◇旭堂南北伝/南湖
これは笑いました。兄弟子「南北先生」の高校生時代を、勝手に伝記にした講釈です。
南北さんは、広島商業出身で、あの達川光男と同級生なのです。
あの江川作新と達川広商が激突した甲子園を舞台に、
広島商業の応援団で太鼓を叩き、血の太鼓打ちとして一斉風靡した南北先生の物語なのです。
南北先生の地元独演会には、達川、衣笠、山本浩二、などなど広島カープのスター選手が聴きに来るらしいです。
◇蛇含草/春風亭一之輔
『そば清』でなく、『蛇含草』をやるのは、一之輔らしいと思いました。
餅を大好物だから、無限に食えると豪語する主人公です。
カチン!と来たご隠居が、本らな40とか50の餅は屁でもないやろうと、挑発して食べさせる。
ここから曲芸食いの極意を見せる一之輔!「愛宕山」の瓦毛投げ食いとかは、想像できましたが、
「粗忽長屋」食いというのは、想像を越えました。外から餅に食われて、内側からは餅を食べる自分が居て、俺は誰?みたいな一之輔らしい芸でした。
◆茶屋迎え/笑福亭たま
三三くんから上げて貰った根多なんだそうです。三三くんの『不幸者』を上方落語に直してますが…
枝雀さんみたいなテーストを期待したが、小枝くんか雀々くんみたいな仕上がりでした。
練り不足ですね。将来良くなる根多です。
最後は大喜利のコーナーで「一之輔出世数えて歌」でした。
これは、関西の大喜利で有名な数えて歌というのが在ります。
「1.イチで芋屋の兄ぃちゃんと」「2.ニで肉屋の姉ぇちゃんが」「3.サンでサルマタ脱ぎ出して」
みたいな卑猥な歌がありまして、それを“一之輔”の落語人生を歌う企画です。
たま「1.イチで田舎者やと嫌われて~」
一之輔「ダメ!初めて言われた」
「1.いちで、一朝師匠に入門し」
遊馬「2.にで、日本一を志し」
南湖「3.サンで三日であきらめた」
一之輔「ダメ!諦めない」
南湖「3.サンで三日目に初高座」
兼好「4.シで師匠が亡くなって」
一之輔「ダメ!勝手に殺すな!」
兼好「4.シで師匠を変えまして」
一之輔「バカ!圓楽党、お前んとこと一緒じゃねぇー」
兼好「4.シで真打に昇進し」
三三「5.ゴでご祝儀地下室に」たま「6.ロクで牢屋に入れられた」
一之輔「違う!脱税しても初犯なら牢屋には入らずに済むんだ、実際入ってないし」
たま「6.ムでムッチャ嫌われて!」
一之輔「俺はそんな奴じゃない」
たま「6.ムでムッチャ努力して」
遊馬「7.ナナで七つのキズを持ち」
南湖「8.ヤでヤクザに成りました」
一之輔「ヤクザはダメ!カタギでお願いします」
南湖「8.ヤで柳家に成りまして」
一之輔「成りません!」
南湖「8.ハチで鉢巻きタスキで努力して」
兼好「9.ココノツで古今亭に成りまして」
一之輔「成りません!まだ、柳家の方がまし」
三三「誰が居るから?、菊之丞?」兼好「白酒さん?」
一之輔「違う、字画」
兼好「9.キュウで苦労の甲斐有って」
三三「10.トウでとうとう御臨終!」
一之輔「兄さん!頼むよ。」
三三「10.トウでとうとう大看板!」
この後、三本〆で御開きに成りました。