成城で、ここで始めて三回目、“春”の会です。
今回は、このような内容でした。
1.たらちね/おじさん
白酒くんが、おじさんに「今日は何をやるの?」と訊いたら、
「ハイ、『転失気』を」と答えたので、意地悪る白酒くんは、
「それ聴いた!違うの!」とリクエストして、あまり慣れていない、
『たらちね』を、おじさんに強要したようです。
おかげで、眠いのこの上ない『たらちね』でした。
せいこさんだと、間違いなく爆睡したと思います。
なんせ、ゆっくり紡ぐようにやるのです。
大して面白くないので、ゆっくりやると単なる“昔話”ですよね。
子供の寝る前の“お話”じゃないのだから…
2.四段目/白酒
この噺は、去年のWホワイトで聴いています。
そして、その時も二席目は『抜け雀』でしてね。
これは、落語ファン倶楽部のオマケCDに成っています。
白酒くんにしては、そんなに長くないマクラから、
『四段目』へ。そして、定吉を主人が呼んで“取調”
この最中に、一斉に携帯電話からアラーム音が鳴り出しました。
そうです、地震警報です。これだけはマナーモードでも鳴りマス。
その数秒後に、震度3の地震発生です。少し間を取って、
「定吉!なぜ、こんなに遅くなったんだ」
「ハイ、旦那様地震が…」と、早速、くすぐりに使う白酒くん。
彼が演じる定吉は、可愛げのあるワンパク野郎だと思います。
3.今戸の狐/白酒
あんまりやり手のない噺ですよね。私は白酒くん以外では彼の師匠雲助さんと、
志ん朝師匠だけです。古今亭らしい値多だと思います。
この噺は、去年行った国立演芸場での「白酒ひとり」で、9月に聴いて以来です。
落語の中に実名の咄家が登場する噺で、こんな内容です。
江戸の中橋に名人初代三笑亭可楽が住んでいた。
その門下に若い二つ目の良助さんという弟子がいました。
元々は、落語作家の弟子だったのが、芽が出ず咄家:演じ手に。
ただし、寄席の上がりだけでは生活が出来ない上に、
通い弟子なので暮らしに困りはてていた。
師匠は厳しく内職を禁じていたので、芸人の見栄もあるために、
最初のうちは我慢をしていた。
良助は橋場に住み、向かいの背負い小間物屋善吉の女房おサイさんは、
千住の女郎上がりの女だが、出身にも似ず働き者で近所の評判もよく、
千住のサイ(妻)と噂の、できた女房でした。
千住の通称は、コツなもんで、このお上さん“コツのサイ”なんて呼ばれていた。
コツのサイさんは今戸焼の狐の彩色の内職をやっていた。
教えを請うと親切に教えてくれた。
良助も器用だったので直ぐ習得して、雨戸を閉めて人目を避け、
引き窓からの明かりを頼りに狐を作った。
朝 、師匠の家へ行って用をたして帰り、
夕方寄席へ出かけるまでの間、せっせと内職をした。
当時、可楽は飛ぶ鳥を落とす勢いで人気が出ていた。
可楽が出ると周りの寄席の客足が途絶えるほどであった。
寄席がはねると弟子が売り上げをもって中橋の可楽の家まで持って帰り、
各出演者に小分けするのが仕事の一つであった。
それが何軒も掛け持ち出演しているので、小銭の配分に手間が掛かった。
誰それさんいくらとの声で、前座が「はい」チャリチャリンと分けていった。
この音が夜更けて来ると響いた。
ある夜、雨宿りで軒先に立ち寄ったやくざが、この銭の音を聞きつけた。
この音をサイコロの狐をご開帳とにらんで、翌朝可楽の家に乗り込んだ。
可楽に対し、素人が博打を打つとは不届きだが、
見逃してやるから口止め料を出せとゆする。
可楽は私は博打が大嫌いで、それは何かのお間違いでしょう、
弟子にも厳禁している、とんだお門違いだ、帰ってくれと、奥へ入ってしまう。
怒ったやくざは、狐ができていることはさぐってあるのだと、内弟子・円楽にすごむ。
三つ賽博打の狐のことを、焼き物の狐と勘違いした円楽は、
それなら橋場でこしらえていると、良助の住まいを教える。
「だったら少しはこさえてくれるな」、「勿論ですとも」。
「夕方まで待つか」、「いえ、朝からやっています」。
やくざに訪ねてこられた良助は、大慌わてで人形や道具を隠して迎え入れ、
その慌てぶりにヤクザは賭場が開かれているのを確信する。
狐などできていないと否定するが、内弟子に聞いてきたといわれて、やむなく肯定する。
「やはり狐(三つ賽博打)ができている」と安心するやくざ。
「それだったら、時々寄るから、少しこさえてくれ」、
「少しでは困るんです。多い方がいいので」 と良助、「それは有り難てぇ~」。
「で、出来はどうだい」、「最近やっと顔が揃うようになりました」、
「そうかい、顔が揃うようになれば後は楽だ」。
「大きいのか」、「え・・・、 大きいのも小さいのもあります」。
「金張り銀張りが有ります」、「え~、それは豪儀だ」。
「今、静かだが出来ているのか」、「出来てます」、
「どこで」、「戸棚の中に」 、「???」。
「ちょっと見せてもらおうか。ぶち壊すようなことはしないから」、「壊されたら困ります」。
「お見せします。こちらが大きいの。こちらが小さいのです。これが金張りでこちらが銀張りです」、
「なんだこれは」、「だから狐です」、「馬鹿野郎、狐は分かっていらぁ。
泥の狐を探しにこんな所まで来たんじゃねぇや。俺の言っているのは骨(こつ)の采(さい)だ」。
「千住(コツ)の妻(サイ)はお向かいのおかみさんでございます」。
この噺、あんまりやられないのがよく分ります。
狐=三つのサイコロでやる博打
コツのサイ=骨で作ったサイコロと千住女郎上がりの妻を掛けてのオチ。
前置きの説明、それから途中途中での説明なしには噺を進められません。
江戸の頃、「狐」なんて博打が流行っていた場面なら、ドッカン!ドッカン!受けたのやら。
4.抜け雀/白酒
流石に、今年三回目の『抜け雀』にはビックリです。
最初が、1月に神奈川県民ホールで聴いて、
同じ1月に、今度は文化放送でも聴きました。
そして、四月に成城ですよ!! もう一回ぐらい聴くのか?
今年は、『抜け雀』当たり年です。白酒くん以外に志の輔と喬太郎でも聴いています。
そうそう、今回の『抜け雀』で、ひとつチョンボがありました。
それは、墨を擦る場面が飛ばされたのです。
「いい匂いがしますね」「鼻だけは一人前だなぁ!」
これが、最初を飛ばしたから、二回目もなしでした
。