時間を1時間勘違いして、着いたら2人目の出演者・米團治の『七段目』をやっていました。
既に、定吉が二階に上がり“一力茶屋”をやっている。
また、コレかぁー。米團治は、何かあると『七段目』です。
米團治が終わって、出囃子が鳴る“吾妻八景”です。柳亭市馬だ!副会長だ!二列目の自分の席へ。
超~満員です。マクラは、人間国宝の話から、よく使う根多です。
小さん師匠が人間国宝に指定された話から、米團治が育ちが良すぎて、粗忽だと言う話に。
暑い!暑い!と言って長襦袢を二枚着ていた話、片頭痛で大変だと言ってコンタクトレンズを二枚片方に入れていた話、
そして極めつけは、学校寄席での帰りに、タクシーに乗ってから「すまん!戻ってくれ、忘れ物した」と言う米團治。マネージャーが「何を忘れたんですか?」と言うと、ヒゲ剃り。
そしてバックからは、ヒゲ剃りと間違えて入れたマイクが出てきたそうです。
そんな米團治の粗忽話から、粗忽繋がりで『粗忽の釘』へ。
つい昨日、古今亭朝太くんで聴いたばっかりの『粗忽の釘』でしたが、
細部に違いがありますね、朝太さんのは勢いと、トントントンと流れる感じが江戸前で良かったが、
市馬師匠のは、それに加えて適度な“間”があるんですよね。この“間”で笑いが起きるのがよく分かります。
粗忽な主人公の女房が、気が強い一辺倒ではなく、一瞬可愛い時も有ったりします。
更に市馬師匠、この『粗忽の釘』でも、歌うんです。夫婦の馴れ初めを語りながら、
“貴方と二人…”トンコ節を歌うんです。フルコーラス、貴方何をしに来たんですか!と隣の主人に言われて、
「私ですか?何をしにって、別に、私しゃ一曲歌えたら何でもいいんです」には、爆笑でした。
市馬師匠に続いて、仲トリは、ざこば師匠でした。
マクラは、JAL名人会と全く同じ“孫の話”でした。
「孫は宝物言うんは、嘘ですなぁ、喋るようになる前、泣くだけの孫は要りません!」と、言うところから、
孫にまつわる嫌いな理由を、ざこば風に訴えます。孫と軍事施設は遠くに、できれば県外がよろしいと言うのです。
孫の泣き声、チョロQでよう遊ばない、タバコを折って投げる、歩行機暴走族、トイプードルとの事、財布の札を投げる話
そこから、今回は『強情』をやりました。
ある時払いの催促無しで、借金をした辰さん。その男気に惚れて、この銭は1月で返済すると心に決める。
その話を友人にして、何とか返済金:50円を工面して届けるが、そんな窮した銭は受けとれんと言われる。
強情と強情のぶつかり合い。何とか返済金を受け取らせたが、その祝にと酒を飲むのだが牛スキか鶏スキかで喧嘩に。
仲入り後は、襲名披露の口上から。
司会は紅雀、まずは、こごろう改め南天の師匠である桂南光からのご挨拶から、
こごろうくんが弟子入りした21年前の回想から。この南天/尾崎祐司くん、一度、高校を卒業してすぐに弟子入りに来て断られ、再度、大学を卒業して弟子入り志願に来た話からしました。
師弟の付き合いは、一生涯の付き合いだから、私は弟子は取らないと再度断ったものの、
南天さんの情熱に押し切られて、強いパッションを感じました。と、言うとざこば師匠が横から、
「パッションって何や?情熱か!」と突然、突っ込みを入れて、口上がグスグスに成り出します。
続いて、米朝一門の御曹司/米團治からの口上。先代の南天さんの想い出話から入りました。
なかなか良い話だと思っていたら、後ろ幕が南天さんの母校・大阪芸大の落研から贈られた物でしたが、大阪芸大が、東京芸大みたいな学校ではないと力説し客が引きました。
裏幕は、大変素晴らしいもので南天の花と実が描かれて、枝雀一門だから雀も飛び、中央部分には米朝一門の家紋が描かれていました。
米團治の次を勤めたのが、ざこば師匠で、若い頃東京に先代の南天さんと仕事に行った想い出話を披露しました。
米朝師との俳句の繋がりで永六輔さん、小沢昭一さんらが、大阪の面白い芸人でアングラな人を東京に呼ぼう!と成って、南天師匠に声が掛かったそうです。
東京駅で待ち合わせした、永さんが「今夜は、九ちゃんも来るんですよ、南天さん」と言うと、
東京オリンピック直後ですよ、南天さんは坂本九を知らないと言うのです。
驚いた永さんは、南天さんのステージで、彼を紹介する時に「この戦後昭和の時代に、坂本九を知らない南天さんです!」と言ったら、客の芸能人達は大爆笑だったそうです。
勿論、南天さんは、坂本九を知っていて、わざと知らない事にして話題を提供したのです。大阪芸能人らしい。
更に、南天さんと一緒に泊まった東京の旅館での話をするざこば師匠。
何でも深夜2時頃に、南天師の部屋から声が聞こえてきて、気持ち悪いが気になり、恐る恐る近付くと、
南天師匠が、床の間に向かって座り、小さな声で般若神行を唱えてらしたんだそうです。
その話を米朝師匠にすると「もう、あと何年生きるか?生きられるか?の年やさかいに、他人様に迷惑掛けずにあの世へ逝きたいんじゃろう、それは。」と仰ったそうです。
で、それだけです。だから般若神行がどうした!?言われても…
口上にオチが付けられないまんま、南天を今後とも宜しくと言って終わるざこば師匠でした。
口上の最後は、市馬師匠。初代南天さん、米朝師匠に自らの師匠・南光と言う名前を復活させて欲しいというのが遺言だったそうです。
それが実現し、更に現・南光師の弟子が南天を襲名するなんて、愛でたい限りと言って最後は相撲甚句と三本〆でした!
久しぶりに「大阪〆」かと思ってyoutubeで練習したのに、東京流の三本〆でした。
さて、そんなフレンドリーな口上の後は、南光師匠の『鹿政談』でした。
名物はとマクラを振り、米朝師匠がやったマクラを南光流にアレンジしていて実にたまらない感じでした。
江戸の名物は、有名ですね、歌にも成っているし、他の落語のマクラにも使われます。
「武士、鰹、大名小路、生鰯、茶店、紫、火消し、錦絵、(中っ腹、伊勢屋稲荷に、犬のクソ)」
次に京都の名物は、「水、壬生菜、女、羽二重、御簾屋針(みっしゃばり)、寺に、織屋、人形、焼物」
ここに出てくる“御簾屋針”は、京都で有名なんですよ、今も三条にあります針屋「忠兵衛」
そして大阪名物は「橋に、舟、お城、芝居に米相場、問屋、揚屋に、石屋、植木屋」
更に奈良名物は「大仏に、鹿の撒き餌、あられ髪、春日通りに、街の早起き」となります。
この奈良名物に登場する最後の“街の早起き”と言うのだけ、名詞じゃないのが異質でしょう?
これがなぜか?を語ってから『鹿政談』に入って行くのです。上手い入り方です。
つまり、昔、奈良では鹿を殺すと死罪と成った。たとえ事故や過失であっても鹿殺しは死罪。
だから、朝起きて行き倒れの鹿が家の前に在ったりすると、まだ寝ている御近所の家の前に移動させたらしい。
だから、家の前に鹿を置かれてはたまらんから、奈良では皆が早起きに成ったという嘘のような本当の話!とやって『鹿政談』へ。
なかなか、南光さんらしい『鹿政談』で、弟子の襲名披露でも、一切手抜きなし!弟子の芸を喰うぐらいの勢いの『鹿政談』でした。
相変わらずダミ声で、魚市場の競人みたいな声ですが、そこがまた南光師匠の魅力です。
トリは南天さん!マクラでは、大阪あるある。「“ちゃうねん”を付けると喋り易い」「語尾に“正味の話が”を付けたがる」「大阪のオバチャンは“何でや思う?”とクイズを出す」「大阪のオバチャンは“なんぼした思う?”と値段をきく」
そんな大阪あるあるから電車の話へ。新快速と呼ばれるJRの電車話から、『野崎詣り』へ。
喜六と清八が登場する、『野崎詣り』、ハメ物もふんだんに入る陽気な一席です。
野崎詣りは、舟で行く人と土手を歩く人が座興で口喧嘩すると言うお笑いです。
賢い清八に、アホの喜六が喧嘩の啖呵を教えられるが、上手く言えずに笑いに成ります。
南天さんも、立て板に水な啖呵を披露して、爆笑のうちにお開きとなりました。
それにしても、凄く気になったのが、小学三年生くらいの男の子が、
大阪から父親に連れて来られていて、この子が絶妙の間で笑うんです。
お前に分かるんかい!と思うギャグにも!!