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横浜NHKの横に、昨年秋にオープンした神奈川芸術劇場。

素晴らしい大ホールとこじんまりしたスタジオがあると聞いてはいたが、

中に入ったのは、今回が初めて。 益々、県民ホールがボロに見えるぜ。


さて、今回の会のテーマは、文学。本屋の店員から咄家になった喬太郎と、

若いのに、やたらと古典芸能に詳しい吉坊が選ばれての企画です。

ただ、二人は、「文学しばり」は聞かされずにオファーがあり、受けたら、

「文学しばり」だと言われたそうです。二人ともこれを強調。


昼の部と夜の部があるのは知っていたけど、演目が変わるとは?

ちなみに、夜は喬太郎が江戸川乱歩作「赤い部屋」で、

吉坊が正岡容作「夜櫻ばなし」だったようです。


そして、昼の部は、こんな感じでした。

 

 


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1.たらちね/辰じん

辰じんの前座姿も、もう見納め。彼は春から二つ目です。

この日は、『たらちね』よりも、太鼓で会に貢献しておりました。

まぁ、元気のいい一番太鼓に客席がビックリしていました。

さて、『たらちね』 丁寧な言葉使いの娘の自らの姓名を名乗る場面!

ここのセリフを、長いバージョンで丁寧にやりました。

それでも、せいこさんには眠い落語なんでしょうネ。

 

 

 


2.粗忽長屋/喬太郎

トリにやる『ウツセミ』が気になる様子で、『粗忽長屋』をやりました。

珍しく間違ったのです、“薄い長屋の壁だから”を、

“厚い長屋の壁だから”ってね。えらい違いなんだけど、

そこは、腕があるので、「俺って、粗忽だなぁー」と笑いに変えました。

この噺は、よく筋が出来ているから、あるレベルだれでも笑いにできますネ。

ただ、八五郎と熊五郎の会話以外の登場人物、ここへの工夫が必要です。

最初に出で来る、人だかりの野次馬ですとか、

行き倒れの面通ししている世話人とかね。勿論、そつなくまずまずの喬太郎でした。

 

 

 


3.淀の鯉/吉坊

この『淀の鯉』は、米朝師匠が“中川清”だった時代の師匠・正岡容の作品です。

ストーリーの大筋は、中川清作で、これを落語の台本にしたのが正岡容先生。

三作しか台本・速記が残っていない正岡容作品の一つなんだとか?

で、なぜこの作品の台本が残っているのか?それは、米朝師匠が、

ラジオの番組収録で、この根多を演じているからなんですよね。

ただし、それは本放送でオンエアされず、録音音源も残っていない。

唯一、その台本だけ米朝師匠の直筆のガリ版刷りで残されていたそうです。


で、米朝師匠に、稽古を付けてもらおうと吉坊は台本持参で宅へ行ったんだそうです。

すると、米朝師匠の第一声が「覚えてないなぁ~」 お前は、『代書屋』の“松本留五郎”か?!

そう言いたくなるぐらいのボケぶりでねぇ。台本をパラパラ捲りながら、俺の字や確かにと呟く。

そこで、米朝師に対して、吉坊が、お匠はん、何で1回録音でやっただけで、

その後、やらんかったんですか?と訊くと、「ほんなん、これ読んでわからんか? 面白ないからや」

あまりの発言に、吉坊、これからやろうという孫弟子の前で言うかぁー と思ったそうです。


そんな『淀の鯉』は、こんな噺です。


ある旦那さんが、春の花見の趣向で、淀川に屋形船で繰り出す計画を立てる。

いつものように、仕出弁当では芸がないので、行き付けの料亭から板前を借りることに。

ところが、この板前が、船嫌いで有名なのです。

船は板子一枚下は地獄と言って絶対に、船には乗ろうとはしないのです。

普通に声掛けたら仮病とか、親の不幸とかを口実に、絶対来ないのが分かっている。

そこで、幇間の一八に、祝儀をはずむから、板前をお前がなんとかして船に乗せろ!

と、命令するのです。


思案した結果、無類の酒好きの板前をまず酔わせる。

そして、掛け比べして、徐々に船宿の側の屋形船の近くに誘き寄せる。

それで、坂道から川面へ向けて走らせて、曲がることが困難な“岸辺”で、

船を待たせておいて、勢いのまんま板前を中に引き入れるのでした。

いかにも、落語!って感じの展開です。


そうやって、船に強引に引きこまれた板前ですが、そこが船だということが直ぐに分かります。

よって、ガタガタと震えて、包丁を満足に握れない。結局、包丁を川の中へ落としてしまう始末。

ブクブク沈む包丁を、まず、小鮒が発見!それを淀川の主、鯉の親分に知らせる。

何やろう?見たことないヤツや、川底に突き刺さり、ギラギラと光る包丁。

これは、一つ物知りのナマズ博士に訊こう!ってことになり、ナマズに見せたら、

「これぞ、悪名高い“魚の敵”包丁です」と、答える。


自分達の親兄弟、祖先をも「刺身、お造り」に変えた恐ろしい道具と知ったもんだから、

多くの魚たちが震える中、勇気のある若鯉が、これを加えて船に叩き返すと言い出すのです。

そして、包丁を持ってピチピチ!ピチピチ!と船に上がり、包丁を返して川に戻る。


ここの吉坊の魚の仕草が笑えました。クリオネみたいなポーズなのです。


そして、下げは、川底に戻った若鯉が言う「やっぱり、船は板子一枚下は地獄や」です。

意外と面白い噺でした。で、何が良いって、ハメモノが決まっていたんですよ。

しかも、西からお囃子さん、太鼓師さんを連れて来たんじゃないのよ。

この日の午前中に、恩田えりチャンと辰じんくんとリハーサルをやって決めたお囃子なんです。


凄いぞ!恩田えり。

 

 

 


4.七年目/吉坊

仲入り後、『淀の鯉』の呪縛から解き放たれた吉坊のもう一席が『七段目』

師匠である吉朝師匠が、十八番中の十八番にしていた一席に挑戦です。

師匠のとは、また少し赴きが違うのですが、若旦那と定吉の芝居が強烈に上手い。

いろんな『七年目』を知っていますが、おかるの艶っぽさが図抜けています。


私は、あんまりやり過ぎず、もう少しみたい!くらいの吉朝の『七段目』が好きでしたが、

このくらい“これでもか?!”そして、芝居のテンポとリズムの切替が完璧ならば、

ずーーーっと吉坊を聴いていたいと思いました。

談志や談春がやる講談の修羅場読みの、芝居版ですね。

この日は、この『七段目』が聴けただけでも満足でしたよ。

そう!勿論、恩田えり師匠の三味線のハメモノも光っていて、最高のコラボでした。

 

 

 

 

5.ウツセミ/喬太郎

「普通の落語がやりたい!」と、叫んで登場の喬太郎師。

吉坊がえりチャンと段取りの相談をしながら、『七段目』のハメモノをリハーサルしているのを見て、

喬太郎は、吉坊に言ったそうです、「トリを代わろう」って。でも、吉坊からダメですよ、と断られた。

まだ、これが三回目という『ウツセミ』 エロ満載の官能落語です。


CDにも成っていて、喬太郎はそれで練習したそうですが、

一応、書き物に起こして、それで稽古するらしいけど…

あまりに卑猥な言葉の羅列になるので、書いていて恥ずかしかったとか。

それでも、照れを堪えつつ、最大限に『ウツセミ』を語った喬太郎。

時代設定を色々変えて、様々な時代の『ウツセミ』を演じて欲しい!!

 

 

 


6.対談/宮本 亜門・喬太郎・吉坊

最後に、20分くらい座談会をやってお開きでした。

なぜ、宮本 亜門かというと、KAATの館長ではないが、

空間プロデューサーみたいな役割を担っているみたいです。

そして、宮本 亜門の舞台が、この日、大ホールでは上演されていました。

だから、帰りに上りエスカレーターは超満員!!

私は、下りだったから、それを尻目にスイスイでした。

 

 


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いやぁー素敵なホールです、KAAT。

でも、スタジオの椅子が、5人掛けのベンチみたいな椅子なんです。

だから、座る角度が難しいのと、隣の女性の笑いが振動でも伝わるのです。

椅子をなんとかしてくれたら、いいスタジオなんですけど
ねぇー