濱永さんが主催する神奈川県民寄席のスペシャル企画、今年で二回目となる「談春の音楽堂」です。
小雨の降るあいにくの天気にも関わらず、千人の談春ファンが集まりました。
しかし、残念ながら風邪の治り掛でコンディションは最悪でした。
それでも、お茶を飲み飲みしつつ、風邪薬で朦朧としながらの熱演でした。
まず、開口一番は前座の春太でした。久しぶりに“こはる”が聴きたかったけど、なかなか良いデキの『出来心』をやりました。
しかし、談春目当てで来ている客は、クスリとも笑いません!お前なんかで笑うもんか、そんな気合いを感じます。
だんだん、似てきますね談志独演会と。あの会に出る開口一番も、全く笑って貰えませんでした。
志の輔、昇太や志らく、談春、談笑が出ても、クスリとも笑わない会でした。
そんな春太がやり切った後、黒紋付姿で談春登場!いつもより長いマクラを振りました。
マクラは20分くらい振りました。被災地での落語会から、世田谷でのラジウム騒動!
ラジウム温泉は、なぜ効能があるのか?って話から、漁師町では、落語は受けないって話へ。
そして、だんだん、客の年令が自分より若くなって出来るように成った噺もあります。
なんて事を言いながら、小三治師匠が、さも簡単そうに短い噺をサラリとやりますが…
そう言って始めたのは『長短』でした。五代目の『長短』をして、「あれは気が長い奴じゃなく、単に動作がスローモーな奴だ」
と、よく談志師匠が、嬉しげに話していたのを思いだします。
志らくもそうですが、こういう噺をやると、あぁ~こいつらも、柳家だなぁ~と感じます。
特に、長さんが饅頭を食べる仕種が、談春のは工夫があります。
あと、タバコに火を点けられない長さんに、短七さんがイライラする場面も笑いたっぷりです。
大爆笑のうちに仲間入りとなりました。
高座に、湯呑が出ていました。圓生の真似か?喉の調子を押して、長講モノをやる予感!
「えぇ~季節は少し早いけど、圓朝こしらえた作品の『文七元結』をやります」と言う談春。
圓朝は、明治維新の要人から贔屓にされていて、我々は江戸を東京に変えたが、
江戸っ子気質ってもんは、まだまだ生きているだろう。しかし、東京が続くとそれも次第に薄れ無くなる。
だから、お前に「これぞ!江戸前」「これこそ江戸っ子気質!」って噺をこしらえて欲しいと言われて、
それを受けて作ったのが、この『文七元結』だと言われています。
そう言って、名人の話して、そこから博打の話へ。そして、ゆっくり『文七元結』へ入りました。
長かった!マクラを含めて1時間20分喋りました。
娘のお久が居ないから、佐野鎚で五十両借りるまで45分!ここまではいつも通りだが、スピーディーじゃないんです。長兵衛さんの江戸弁が切れない。
佐野鎚の女将が、相変わらず談春流に、お小言を言います。
ここ数年、言い立ては変わりません。名人と呼ばれる職人は、左甚五郎だって、
自分の業/技よりも、目の方、見立ての方が先々と成長するから、
自分の修行/努力がおかしいのか?なぜ、俺は進歩しないんだ?と、迷い不安になる。
でも、それが選ばれしものの運命というか、名人の宿命なんだと女将が説教する場面は泣かせます。
そして、吾妻橋で文七と出逢う長兵衛。ここでのやり取りは、毎回変化するんですよ。
大まかなセリフ決めはあるけど、アドリブ満載です。今回は、親子情について語りながら、長兵衛は文七に五十両の銭を投げつけました。
ただ、カミカミで言い間違いの多いのには、風邪のせいもあるが、少しがっかり。
素晴らしくデキた『文七元結』を過去に聴いているだけに、残念でした。
最後、笑いを取ってめでたしめでたしで終わりはしたが85点のできでした。