この三連休も、池袋の新文芸坐で開催中の「原田芳雄追悼映画祭」に2回行きました。

9時の映画館オープン前から行列に成っていました。そして並んで観た最初の作品は、コレです。


◇悲愁物語

1977年の鈴木清順作品です。鈴木清順監督が、日活から不当解雇され、裁判で争って、

裁判には勝ったものの、映画配給会社から“問題児監督”のレッテルを貼られて…

10年、映画界から仕事を干された後、万を辞してメガホンを取ったカムバック作なのです。


しかも、主演女優はトップモデルから女優へと輝かしく転身した白木葉子の初作品。

原作は、梶原一騎で、相手役が原田芳雄。脇を固めているのも、岡田真澄/佐野周二/和田浩二/江波杏子/左佐知子/小池朝雄などなど豪華です。

ただ、鈴木監督の耽美さと脚本のアナーキーでサイケな感じが不気味に作用するんです。

77年なのに、60年代後半の排他的な匂いの作品です。

◇夢二

竹久夢二の映画、主演の夢二役は、沢田研二です。

原田芳雄は、夢二が惹かれる妖しい金沢の盟主の未亡人、この旦那の役。

これも鈴木清順作品だから、非常に耽美に描かれます。

金沢の田舎、大きな湖のある街が舞台で、山々と湖が鈴木作品らしく丁寧に撮られていて、

建物の大正デモクラシーを思わせる外装/内装、そして加賀友禅に代表される着物!全てが耽美でアンニュイ感じ。

また、主演が変に演技ができる俳優ではなく、やり過ぎないジュリーだから、斜の掛かった仕上がりで私は気に入りました。

上手く表現できないのですが、演技の不連続性と矛盾が、作品全体と上手く調和し、違和感なく進行させていました。

そんな不協和音と奇数拍子な作品が、凄く後味悪く、綺麗な映像だけを残しながら終わるんです。

普通なら、脇を固めている坂東玉三郎を夢二にして撮るが、あえて沢田研二、ここがこの作品の肝だと思いました。


◇浪人街

マキノさんの追悼作品で、勝新太郎、石橋連次、佐藤慶、伊佐山ひろ子、中尾彬、田中邦衛、長門裕之、樋口可南子、杉田かおるが脇を固めて、芳雄チャンが主演。

キネマの良き時代の時代劇を再現する、マカロニウエスタンのテーストも感じさせながら、勧善懲悪な物語です。

黒沢明や、市川昆とは違う、写実的じゃない、あくまでシネマな時代劇なんですよね。

それを一番感じだのが、「あぁー関東人が喋るエセ関西弁丸出しの長門裕之」と、「流石、京都暮らしが長く流暢な関西弁を操る勝新太郎」が、

この二人が“うどん屋”と“客の浪人”で会話するのです。味のあるシーンなのだが、

黒沢明だったら、長門は使わないし、こんな演技しかできないならOKは絶対に出ません!

で、ラストシーン。牛裂き刑にされ掛かる樋口可南子を助ける場面、

ここは、なぜか芳雄チャンより石橋連次の方がカッコいいの!これも意外で素晴らしい。


◇龍馬暗殺

30年ぶりに、この作品を観ました。ATGの作品の中でも指折りの傑作です。

今の民主党議員は、全員見るべき作品です。いみじくも龍馬が言います。

「たとえ、討幕に成功しても、支配する側が、幕府から薩長に取って変わるだけなら、民衆の落胆/絶望は更に大きくなる」と。

だから、討幕はあくまでも手段であり、倒したあと何をするか?どんな社会になるか?ビジョンを示せないと、政治家としての価値はゼロだ!

あと、以前から思うのは、この作品に松田優作のあの薩摩の若き刺客!必要か?

原田芳雄の龍馬と、石橋連次の中岡新太郎の間に在って、

それなりにコミカルだったりするし、キーパーソンの女郎/中川絵莉の弟役だが…

ドッキリカメラの野呂啓介の方が、遥かにカッコいいぞ。

松田優作の無駄使いと感じるのは、私だけでしょうか?