昨夜に続いて、昼&夜公演で「牡丹燈篭」を連続で語る喬太郎です。
この日、スタートしたらいきなり、ドンチョウが上がらないトラブル発生!!
ちょうど半分くらいで動かないのです。“お露さんの怨念か???”
そんな牡丹燈篭の祟りを思わせる怪奇現象でスタートしました。
そして、ようやくドンチョウが上がって、開口一番で登場したのが、
この日は、芸術協会の若手二つ目のホープ!! 瀧川鯉橋さん。
芸術協会の中では、かなりできる方だと思いますし、様子もイイ。
軽ぅーくマクラを振りながら、慣れた感じで『元犬』を始めました。
そして、落ちに近づいたその時、またしても事件が…
「おもと!おもとは居るか?」「ハイ、元は犬、今朝ほど人間になりました!」
これが、オチのはずですよねぇー それが鯉橋さん言い間違えたのです。
「ハイ、元は人、今朝ほど犬になりました!」と。
客席は、???の空気に。 そこは芸協のエース機転を利かせて、
「ソフトバンクCMに出ている、お父さん縁のお噺でした」と言ってサゲたのです。
完全に、間違っているのに、お洒落に終わりましたよ、鯉橋さん。
このクズクズを何とか挽回して終わった『元犬』を受けて、
喬太郎の登場、この日もマクラは振らずに、そのまま本編へ。
この日は、寄席や落語会でもおなじみの「お札はがし」の部分です。
萩原新三郎宅へ、幇間医者の山本志丈が久しぶりに訪ねて来て、
「お露さんはお前に恋こがれて死に、その看病疲れで女中の米も身罷った」と伝える。
半信半疑でいる新三郎、そこへある晩、米が明取の牡丹燈篭を点けて、
その後をお露が付いて歩く、カラン!コロン!と下駄を鳴らして、
新三郎宅の庭先へ、塀越しに歩く姿が見えるではないか?!
山本め、騙したなぁー さては、お露殿の父上が計った事か?
露には、新三郎は死んだ、新三郎にはお露は死んだと伝える。
これは飯島平左衛門:お露の父の企みだなぁーと思う新三郎。
米と露を屋敷に招きいれ、毎夜毎夜、枕を共にする仲となったのです。
色っぽい場面ですが、そこは落語なので、芝居のように、
ディープな描写はありませんが、喬太郎渾身の演技でした。
そんな密会が続く中、これを新三郎の後見人:白翁堂勇斎が目撃する。
そして、その翁堂勇斎の助言で新三郎が彼女の住まいだという、
谷中三崎町をいろいろ調べてみると、この二人、墓もちゃんとある。
つまり、お露とお米は幽霊であったのだ。新三郎のことを恋しくて、お露が通って来る。
このままだと、新三郎は幽霊に憑り殺されてしまうというので、
白翁堂はお露さんの墓のある新幡随院の和尚に助けを求める。
和尚は寺宝・海音如来の仏像を貸してくれ「これを肌身離さず、
それから魔除けのお札を家中の窓に貼り付けておくように」と固く言いつけた。
果たして、お露、お米の二人は、お札の為に家に入れない。
そこで萩原家の下男の伴蔵、お峰夫婦のもとへ幽霊二人が現れ
「どうかお札をはがして下さい」と頼む。
伴蔵夫婦は 最初半信半疑であったが、女房と相談の上
「それじゃ、百両と引き換えにはがしましょう」と、金に目が眩み、 約束をしてしまう。
新三郎に身体が汚いと幽霊が取り付くからと騙し、
行水をさせている隙に仏像をすり替え、お札をはがしてしまう。
その夜、新三郎の許へ、幽霊の二人が現れ、恋しさ余って憎さ百倍・新三郎を憑り付く。
新三郎がどうなったのか?伴蔵とお峰は、翌日恐る恐る部屋に入ってみると、
無残な姿の新三郎を目撃する!しかし、直ぐには助けを呼ばない二人。
数日後、伴蔵とお峰が血相を変えて、白翁堂宅へ駆け込んで来る。
「萩原様が!萩原様が!大変な事に…」 三人は、急いで新三郎の部屋に入ると、
そこには、モガキ苦しむ表情で、虚空を掴みながら、アバラが浮き出るように、
胸の前がはだけた状態で死んでいる新三郎、その両脇には、二体の骨と骸骨が散乱している。
仲入り後、喰い付きで登場したのは、江戸独楽曲芸の紋之助くん。
いつもの芸で、曲独楽の芸の数々を紹介した中で、こんな話をしました。
お盆休み中の浅草演芸場で、正蔵がトリの夜席で、トリ前の膝代わりに、
紋之助の出番が在って、その前が喬太郎だったそうです。
そこで、まばらな客入り、しかものんびりした老人空気の浅草の客に、
喬太郎は、あの古典落語『つる』の改作『極道のつる』をやったんだそうです。
紋之助くんも正蔵師も初めて、『極道のつる』を聴いたんだそうで、
あまりのアナーキーでエキセントリックなもんだから、気狂い!!と思ったそうです。
そんな盛り上がる喰い付きの後、喬太郎登場!
後半は、「お峰殺し」に入るのですが… その前に前半の総括(というより愚痴)を、
少しマクラで語る喬太郎でした。まず、知り合いの編集者など前の方の客が、
「お札はがし」の最中、ぐっすり寝ているのに腹を立てる喬太郎!!
確かに、俺も寝そうになるのを、ぐっとこらえて聴いていました。
更に、下北沢八幡宮“祭”の祭囃子と太鼓の音が、
シーンと静かな「お札はがし」の最中に遠くで聞こえて来たのにも、
喬太郎本人は不満だったようで、これまた牡丹燈篭の祟りなのか?
と、言ってましたネ。確かに聞こえました太鼓が遠くで鳴る音。
俺は、最初“演出?”と思ったけど、やっぱり外の雑音だったのかぁー
そんな愚痴をひとしきり言う喬太郎。確かに客層がねぇー
談春や志の輔みたいな本寸法を聴きましょう!!の客じゃない。
SWA/新作のファンが9割だと思います。だから、この本寸法の『牡丹燈篭』は、
やっぱり、厳しいのかも?です。俺も2~3割りは新作の香りでやるのか?
と、思いましたからねぇー それが100%古典:円朝の香りだもん。
さて、後半、「お峰殺し」です。ここから、物語は因縁/繋がりが出てきます。
新三郎を呪い殺す手助けをして、幽霊から百両をせしめた伴蔵とお峰。
「幽霊が出る!」「こんな恐い長屋には住んでいられない!」と、
散々、長屋の周囲に幽霊話を吹聴してここを去る二人。
二人は、その百両で伴蔵の生まれ故郷:栗橋の宿で“あらもの屋”を開業します。
伴蔵がセンスのいい商品を江戸から仕入れ、街道筋に構えた“あらもの屋”で売る。
近隣に、そんな気の利いた店がないのも幸いして、たいそう“あらもの屋”は繁盛します。
そして、繁盛すると銭が儲かる。貧乏を極めたような二人の暮らしが、
徐々に、徐々に、贅沢になります。特に、伴蔵は店の屋号で、関口屋の旦那なんて呼ばれ、
連日、近所の温泉宿の料理屋で贅沢するようになります。
そして、この温泉宿に、飯島家で主人・平左衛門を殺して逃げて来た、
お国と宮野辺源次郎が逗留している、やがて逃走資金が底を尽き、
お国の方が接客係として、この料理屋で働くようになるのです。
で、お国は、羽振りのいい伴蔵に近づきます。
いつもの手口で、伴蔵を色仕掛けで落として金蔓にします。
それをお峰が感づいて、「なんだい!お前さん、あんな女に…」
と、悋気の炎を燃やすのですが、煩わしく成った伴蔵。
こんな女、追い出してと思いましたが、伴蔵には弱みがある。
実は、萩原新三郎、幽霊に取り憑かれた時には、
まだ虫の息ではあるが、命は在ったのです。
それを伴蔵が蹴り殺して、墓から露・米二人の骸骨を掘り出して、
いかにも、彼女達の幽霊に呪い殺されたように仕組んだ。
更に、新三郎から奪った金無垢の仏像を、
この長屋に近い畑に埋めて、人が近づかないように、
幽霊話を吹聴して、栗橋へと逃げたのである。
これらの仔細を知られているお峰なだけに、簡単には別れられない。
このお峰を、プチ旅行に誘って、着物なんぞを買ってやって、
夫婦仲直りのふりをして、油断させた上で人気の無い街道で斬り殺す。
そして、自分も軽く手傷を負ったふりをして、追いはぎ強盗の仕業に見せかける。
ところが!!
お峰を殺してやれやれと思っていたら、店の女中にお峰の亡霊が宿り、
その口から、お札はがしの新三郎殺し、更には狂言強盗のお峰殺しと、
その一部始終を語るようになり、ほとほと困る伴蔵。
そこに、江戸の名医がいると聴いて、この亡霊に取り付いた女中を、
この名医に見せて、なんとかお峰の亡霊を祓って退散させようとするのだが、
この名医というのが、曲者で、なんと!江戸を食い詰めた、山本志丈だったのだ。
山本は一部始終の話を聞いて、伴蔵に従業員全員に暇を出し、
“あらもの屋”の関口屋を人手に売り払うように進言する。
その銭を持って、江戸へ戻り、あの金無垢の仏像を掘り起こして、
それを元手に、また違う商売を、今度は江戸でやればいいと言うのだ。
お峰の亡霊から逃れるには、それしかない!と悟った伴蔵、
山本志丈の言う通りに、関口屋を売り、江戸へと向かう。
そのおともには、山本志丈も同行するのでした。
ここまでが、お峰殺しの噺なのですが、この先、円朝全集を読むと、
伴蔵は、金の仏像を掘り起こして、邪魔になった山本志丈を殺します。
そして、そこから金の仏像を持って逃げるのですが…
途中、この志丈殺しを岡っ引に見られて、取り方に追われて江戸の街を逃げ惑う。
その伴蔵と、バッタリ遭遇して、これを取り押さえて番屋に突き出すのが、
あの孝助だったという展開になるのですが、この部分が喬太郎のでは出てきません。
おそらく時間の関係で割愛されたようです。志の輔版では、あるんだけどね。