人形町にある蕎麦屋さんで、アットホームに開催された桂塩鯛独演会!
これに行ってきました。誠に贅沢な落語の楽しみ方だと思います。
客は44人で、マイクなしで生の落語が楽しめる会なのです。
前から二列目で、私は聴く事ができました。
客層は、さまざまでね。米朝一門のファンもあれば、
塩鯛師匠が“都丸”時代からのファンもあり、
また、塩鯛師匠の身内/従姉妹という女性も!!
大津や彦根からも泊まりがけで来ている濃いファンもいました。
そんな襲名1年、桂塩鯛独演会は、こんな内容でした。
・鉄砲勇助/立命亭談作
・延陽伯(たらちね)/笑福亭笑助
・猫の皿/桂塩鯛
仲入り
・百年目/桂塩鯛
1.鉄砲勇助/立命亭談作
開口一番は、素人さんでした。亭号をみると立命館出身なのでしょうか?
塩鯛さんの落研時代の後輩なんですかねぇー 素人にしては、まずまず。
マクラで、お子さん二人を連れて、この落語会に子守を兼ねてやって来たと言い、
客席をゆっくり暖めて、高座を下りて行きました。
2.延陽伯(たらちね)/笑福亭笑助
昨年暮れの、銀瓶くんの会でも手伝っていた笑瓶の弟子・笑助さん。
前回は『運廻し』を聴かせてもらいましたが、今回は『延陽伯』。
江戸の『たらちね』と、ほとんど同じ噺ですが、笑助さんは、
八公が嫁取り前に、入念にお風呂へ行く場面を丁寧にやりました。
凄いですよ、シャボンなんて無いからと、糠袋を持って行くのですが、
なんと!座布団カバーを米屋に持ち込んで、一杯の糠を仕込ませるのです。
二升以上もの糠の詰まった座布団を風呂屋へ担いで行って使うのですが、
綺麗を通り越して、糠の化け物のような姿で帰宅して、そこから掃除を始めます。
普通は、掃除してから、風呂なんでしょうが、八公にそんな常識はありません。
言葉の丁寧な嫁が来て、名前が長すぎて覚えられない辺りで時間となりました。
上方落語らしい演出で、なかなか受けておりました。
3.猫の皿/桂塩鯛
長い長いマクラで、昨年の塩鯛襲名から米朝師匠の近況までを話しました。
ご存知の方も多いかと思いますが、米朝師匠が水虫の薬を、目に注した事件。
しかも、「水虫の薬やなぁー」と確認してから、目に注したそうです。アホでしょう。
そいでもって、七転八倒したあげく、目医者で眼底洗浄してもらって大事には至らなかった。
それから、数日後、弟子が縁側で足の爪を切っている米朝師を見ていると、
今度は、なんと!足に目薬を注しているじゃありませんか?“ついにボケたか?”と思って、
「師匠、何ぃしてはりまんの?それ目薬でっせ、そんなもん足に注して、どないしはりますの?」
と言うと、「なにがやねん、魚の目に注してまんねん」と答えたそうです。
流石、人間国宝、洒落がきつい。
米朝師と、枝雀師匠は、ほんとうに変人だそうで、一門の皆さんがビックリしている。
塩鯛師匠に言わせたら、ざこば師匠の方が、なんぼかまともで、普通、常識人やと言います。
二人とも、食への執着が異常やと聞きますからなぁー
米朝師は、自分が鰻を食べたい日に、近所のうなぎ屋が休んだ事に腹を立てて、
弟子に当りちらすらしいですよねぇー 結局、違う遠くにあるうなぎ屋まで、
弟子に買いに行かせて、そこまでしても食べるんやそうです。
それと、飲み屋で酒を呑むと、店が“看板時間”で営業を止めるのに怒るそうですよね。
「何で、もう仕舞いやねん!まだ、営業せい」と愚痴になるので、もっぱら家呑みしはるらしい。
あと、米朝師匠は、口ん中になんでも沢山ほうばって食べなさると聞きます。
あないに色んなもん入れたら、味が混ざって訳分からんようになるやろう!
と、陰口されるくらい、肉も野菜も、魚も、飯もなんでもかんでも入んと気が済まんらしい。
それと、焼肉、鍋、すき焼をやる時、自分が鍋奉行せんと気が済まない。
それでいて、途中で「なんで、ワシばっかり世話せんならんねん!!」と怒り出すそうです。
あんたが、自分でやり出した事やないかぁー とは思うけど、だれも言えないからタチが悪い。
それと、無類の話好きなんですよねぇー 米朝師匠。
特に、芝居(歌舞伎)や浄瑠璃、能の話になると止まらなくなる。
吉朝その酒の相手し過ぎて死んだのか?、そして吉坊も危ないのでは?
それくらい、酒を飲んで芸談をするのが、大好きなんだそうです、米朝師。
最後に、米朝一門会の後の反省会でのコメントが厳しいのも有名ですね。
一門を集めて、今日の高座の反省会をするんですよ、米朝一門は。
ただ、枝雀師匠だけは特別で、みんなの前で注意はしなかったそうです。
でもね、ざこば師匠クラスの芸暦40年にもなる人にまで、前座を叱るような事を言うらしいのです。
塩鯛師匠が聞いて、一番強烈だったのは、ざこば師匠の弟子の喜丸くんが、
『どうらんの幸助』をやった時に、米朝師匠からお前の浄瑠璃の先生は下手すぎる!!
そう注意されたので、師匠としてざこば師も、「お前!本物の浄瑠璃を銭出して観に行って勉強してこい!」
と、叱り飛ばしたそうです。そしたら、その後、米朝師匠が「次ぎ、ざこばの『首提灯』、
おまえなぁー上下の切り方がおかしいトコがある!直しなさい」って、
一門の前で、ざこば師匠が注意されたそうです。米朝おそるべしです。
本編『猫の皿』は、まずまず面白かったです。
4.百年目/桂塩鯛
米潮流の『百年目』を楽しみに行ったのですが、なんだろう、旦那様の貫禄がいまいちでした。
番頭さんの小言、花見での弾け具合、それはいいのですが、旦那さんの部分がまだまだでした。
それと、テンポがゆるすぎる感じで、ダレて長く感じました。もう少し花見の場面を工夫して欲しいです。
市馬/権太楼/志の輔の『百年目』に、やや負けてました。工夫も入れた方がいいですね。
米朝テーストをベースに、塩鯛の味も付けて欲しいと思いました。
さて、桂塩鯛独演会の点数は、80点!!
会の後に、セイロを頂きました。まずくはないけど、平凡な感じ。
また、東京での会があれば、行きたい咄家です、塩鯛さ
ん。