今年最後のアナザーワールドに行って来ました。
今回の内容は、下記のようなものでした。
1.雑俳/春樹
柳昇師匠の型でない『雑俳』を久しぶりに聴きました。
柳家の連中もめったにやらない根多です。
柳昇のは、昇太がソックリにやりますから年に1度は聴くけれど、
「点が付いた!」のサゲの『雑俳』は、本当に7・8年ぶり。
春樹、この噺みたいなのは、前座のわりには上手いです。
談春の弟子では、“こはる”の次ぎに上手いのは、この春樹だなぁー
2.へっつい幽霊/談春
道具屋が売る竃(へっつい)から幽霊が出る噺です。
談志も十八番だったし、立川流はみんなやりますね。
志の輔のは、聴いたことないけど。
幽霊の手の仕草をあんな風にやり出したのも談志かな?
談志落語の特徴に、可愛いらしい手の動きがあります。
弟子たちも、みなさんこれを芸に踏襲しています。
特に、志らくの手の動きは、師匠そっくりです。
でも、談春は、これをあんまり感じさせません。
幽霊の手の動きもやりますが、可愛いって感じじゃないね。
ただ、この噺は、博打打ちの噺だから、
ギャンブル党の談春にはぴったりです。
笑いのツボが、賭け事好きの次元です。
3.人情八百屋/談春
これも談志の十八番です。しかし、逆にあんまりやり手がない。
談春は、「どうも、噺の展開に捻りがないから…」
と、これまで殆どやらなかった理由を述べておりました。
この噺、少し『唐茄子屋政談』に似ております。
こちらの方は、みんなやりますね。
圓生師匠風か、志ん朝師匠風に。
多分、志ん朝が人情を全面にこれを演じるから、
ライバルの談志としては、『人情八百屋』を人の業で演じる。
あらすじを簡単に書くと…
長屋に源兵衛さんという二年患う寝たきりが居る。
四人家族で、女房と7つの娘に、5つの息子。
そこにボテ売りの八百屋さんが通り掛る。
「八百屋さん!茄子を半分で売ってください」
と、その女房が言うので、荷を下ろして貫目を計ろうとすると、
飢えた坊やが、チビ茄子を生でかじり出す。
驚いた八百屋、訳を聞いて同情し、自分の弁当と売上の三百紋を置いて帰る。
一週間の後、あの親子どうしているかな?
八百屋さんの脳裏からあの貧乏な親子の事が離れない。
ヨシ、様子を見に行ってやろうと、家にある銭全てを持って見舞いに出掛ける。
しかし…
その家には「貸家」の札が貼られていて、家はもぬけの空。
隣の住人に訳をたずねると、源兵衛さんもお上さんも死んだという。
あの可愛い子供たちは、どうなったのか?どんな仔細があるのか?
そうたずねると、この先に鳶の頭の家があるからそこで聞けと教えられる。
鳶の頭の家に行くと、頭の女房が居て仔細を語る。
実は、あなたから三百紋をめぐまれた直後に、
この長屋の因業大家がやって来て、「溜まっているたな賃だ!」と言って、
その三百紋を毟り取るようにして帰って行った。
あまりの非道に、源兵衛さんはショックで舌を噛み、
お上さんは、カモイに帯を掛けて頸を吊ったというのだ。
「えっ!私の三百紋がそんな悲劇を…」
と、声を詰まらせる八百屋。
娘と息子が火が付いたように泣いているので、
長屋連中が駆けつけて、両親の自殺に気付く。
これを知った鳶の頭が、大家の家に殴りこみ。
鳶の火消し道具のトビ口を掴むと、大家の家や蔵を破壊する!
これに長屋の衆も加わって、大家の家は廃墟に・・・
あらかた破壊し尽くされたところに役人が来たものの、
「それは、大家おまえが悪い」と言って、頭や長屋の衆はおとがめナシ。
逆に、大家は、番所に連れて行かれて、
たな子を自殺に追い込んだと説教された上で罰金。
みんな留飲を下げたものの、娘と息子はテテ無し子になった事に違いない。
結局、頭が、この子供たちを養っているが、経済的には非常に苦しい。
そこで、子供の居ない八百屋さんが、頭と兄弟の契りを交わして、
この子供たちを引き取り、一応のハッピーエンドとなる。
八百屋の情、鳶の頭の怒り、大家の因業な欲、源兵衛夫婦の悲哀、
そして、どんな場面でも純真で素直な二人の子供の笑顔。
これを、人間の業の肯定として、鮮やかに描く談志の『人情八百屋』
あれを観て知っていると、こん会の談春の『人情八百屋』は、まだ半ば。
もう一度、これを横浜にぎわい座で、来月聴くのですが、
その時までに、75%以上になっているのか?楽しみです。
さて、談春アナザーワールドⅩの点数は、81点です。