第１５２１回　恨みは継承する（２）

　“因縁”というと、自分が若いころに行った行動が因縁を作って、何十年かしてからその報いを受けることがあります。しかし、その多くは前世など“過去世”から続く因縁、或いは自分の“先祖”から続く因縁になります。中にはこの両方の因縁を背負っていて、ずっと苦労を重ねてきた方もいます。今、皆さんの周りにいる家族や友人、恋人やライバルたちは、あなたの前世でも自分の近くにいた人たちです。前世で親子だった二人が、今世では夫婦になっていたり、前世で夫婦だった二人が、性別が入れ替わって今世でも夫婦であったりします。電車の座席でたまたま隣に座った人とか通りですれ違った人とは何の縁もありませんが、今の自分の人生に影響を与えている人は、前世（その前の過去世）でもお互いに影響を与え合っていた関係にあります。ですからあなたが今、毎日会社で顔を合わせている上司と過去世の中で悪い因縁を作っていたとすれば、その報いを上司から受けることになります。

　私は上司の“パワハラ”で悩んでいる人から相談を受けて、この問題を解決する手立てを探しました。しかし、どう対応してもこの上司が視界に入る中でパワハラをやめさせることはできなかったことがあります。まず、この上司自身が、ここまで部下をいじめる理由を理解していません。自分でもなぜだか分からないままに、この部下の顔を見ると、無性に腹が立って、憎らしくて、我慢ならなくなってしまうのです。それはこの部下が、過去世の中で上司とその家族を死ぬまで何十年間も苦しめていたからです。その時はその力関係によって上司は何ら復讐はできずに、堪えて苦しんで死んでいきました。しかし、その苦しみの時間に募らせた恨みは、上司の魂にしっかりと刻み込まれたのです。やがて死んでからあの世へ上がった魂は、生きていた時の記憶や感情をきれいに洗い流されて、来世でまとう肉体が決まります。この際に前世の記憶が消されても、魂に深く刻み込まれた恨みは、その相手を放しません。その悔しさや恨みを晴らすために、来世では相手の近くに生まれて、復讐の機会をうかがいます。そしてもし、二人が出会ってしまえば、堰を切ったように一気に復讐の刃を向けてくるのです。自分の記憶には残っていなくても魂は決して忘れていないのです。

　人の輪廻転生のサイクルは生きた人生によって個人差は大きくありますが、一般的には30年から80年と言われています。私が対応した因縁の絡んだ霊の問題で、最も古いものは“鎌倉時代”です。つい最近も1571年の“比叡山延暦寺焼き討ち”や1570年頃から続いた“長島一向一揆”、1637年の“島原の乱”による虐殺に起因した問題に直面しました。これらのケースは、何の罪もない僧侶・牧師・信徒たちが老若男女の区別なく赤子まで無残に殺された惨劇です。このような悪事を働いて、仮にその時は権力で相手を黙らせたとしても、その無念さは魂にしっかりと刻まれます。それは何世代をかけても来世の中でしっかりと償却されることになります。特に命は掛け替えのないものです。それを理由もなく理不尽に奪うことは許されません。その最も悪いことを犯した人が昔は数多くいました。人権意識の薄い昔は、今よりも人の命が軽く扱われていたからです。ただ、その罪を犯した者たちは必ず、それ相応の罰を受けることになります。それが“因果応報”というものです。

　よく“人生は不公平だ”と言う人がいます。「あの人は良い家に生まれてずっと裕福に暮らしています。人を騙してお金儲けをすることもあるのに、警察にも捕まらないし、家族もみんな幸せに暮らしている。私は貧しい家に生まれて、中学を出てからずっと真面目に働いているのに生活はいつもギリギリでお金が無くて結婚もできません。どうしてそんなに差がつくのですか？」

　それは80年の人生の中で今という瞬間だけを切り取って見ているから、“運の良い人・悪い人、得をする人と損をする人、富める者と貧しい者”の差が目につきます。しかし人生全体や、もっと言えば過去世から来世へ続くすべての人生を俯瞰して見れば、しっかりと帳尻は合っているのです。だから今がどれだけ苦しくても、前を向いて、1歩でも半歩でも足を進めていかなければいけないのです。(3)へ続く。

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