第１５１４回　魂の定め

　人は死んで肉体が無くなった後、魂は体を出てまずは自分の姿を目にすることになります。やがて死んだ肉体の葬儀が行われ、体は火葬されて骨は骨壺に入ります。そして骨壺はお墓の中の“カロート”に安置されます。肉体を出た魂はその様子をすべて目にしながら、自分が死んだことを認識します。魂は肉体をまとっていませんから自由に移動することができます。そして自分が生まれた場所から死んだ場所までを何度も辿りながら、自分の人生を振り返って行きます。特に思い出の残る人や場所は何度も訪れながら、自分の人生を総括して自分なりに人生の意味を見出します。これは肉体を与えてもらい、生きる時間をもらったことに対する報告に他なりません。ここまで来るとそろそろ現世を離れてあの世へ旅立つ時が近づきます。今まで現世で自由に移動出来ていた体は、上へ上へと上がっていき、“あの世”と言う“別世界”へ入ります。そこでは生きていた時の記憶・意識・感情をすべて洗い流されて、次にまとう肉体が決まります。そして遠くに見える小さな光の点へ向かって長いトンネルを進んで行きます。すると小さかった光の点はどんどん大きくなり、やがてトンネルを抜けると目の前には光の世界が広がっています。そしてたくさんの笑顔と優しさに包まれて来世に誕生します。そうやって魂は永遠の命をつないでいくのです。

　これが命を得て現世に生まれた私たちが、死後に進む道のりです。死んでからあの世へ上がるまでの時間は、どのような人生を生きたかによって大きく異なります。常に誠実に正しく頑張って生きた人は、人生に悔いを残しません。そう言う人は死後約２か月であの世へ上がって行きます。逆に人を騙したり、いつも嘘でごまかしたり、怠惰な時間を無為に過ごした人は、人生に大きな悔いを残します。それは生に対する執着を生んで、なかなかあの世へは上がれません。死後２年、３年経ってもまだ現世にとどまっている魂は珍しくありません。さらにせっかく与えられた人生を自殺によって自ら放棄した人や、他人の人生を奪ったり、殺されたりした人は生に対して強く執着するため、50年、100年経っても、まだ上がれないでいることもあります。たとえばよく言う“平家の落ち武者”は“壇ノ浦の合戦”で一族が滅んでから840年が経過しています。それでもなお、源氏を恨んで生に執着している間に、魂はその形がどんどん崩れて行きます。そして正常な魂の形は崩壊して、埃のような”霊的な物質“になって現世を漂い続けます。そうなるともうあの世へ上がることもできませんから、輪廻転生もできなくなります。せっかく与えられた永遠の命は失われて最後には現世で霧散して消滅します。それほど不幸なことはありません。

　ですから死んで肉体が無くなった後は、早くあの世へ上がって来世へ生まれ変わることが魂にとって望ましい状態なのです。もし、若くして亡くなり、自分の子供の成長を見届けたかったり、自分の家族を守りたかったり、生きている人の力になりたいと思っても、死んだ後は速やかにあの世へ上がることが“魂の定め”なのです。

　自分の家族が亡くなったあと、死んだお父さんやお母さんの臭いが家の中に時々漂っていることがあります。霊的な間口の広い人であれば、亡くなった家族が今、家に戻ってきたことをはっきりと感じるでしょう。それは生きている人にとって嬉しかったり、懐かしかったりする瞬間です。でも、いくら嬉しくても、亡くなった魂を引き留めないでください。亡くなった魂にお願いごとをするのも良くありません。現世に思いを残して執着を生むからです。死んだ家族に語り掛ける言葉があるとすれば、「自分たちはみんな元気に頑張っています。どうか安心して、早くあの世へ上がってください」そう言って亡くなった人を安心させてあげてください。死んだ人の魂は、生きている人の行動をしっかりと見ています。ですから魂が安心できるように、地に足の着いた正しい人生を生きてください。それが死んだ人への何よりの供養になるのです。

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