相談者は暗闇の山道をかなり歩いているのに先輩に会わないことに不安を感じはじめていました。それに伴って二人の間の会話も無くなっていきました。僧侶はその気持ちを察したように、
「もう少しでお堂に着きますから、そこまで行けば、お仲間にも会えるでしょう」
そう言って後ろを振り返りました。相談者は笑顔で「はい」と返事をしましたが、胸の中の不安は一層強くなっていきました。
そのときです。相談者の後ろから懐中電灯の光が一瞬、足元に届きました。その明りは大きく揺れていましたから、後ろから誰かがこちらへ向けて速足で追いかけてることに気づきました。すると後ろから
「ダメだ!ダメだ!そっちへ行っちゃいけないぞ!危ない、引き返せ!」
それはキャプテンの声でした。
「先輩!先輩!」
相談者は恐怖を感じて、泣きながら振り向きました。すると目の前の住職がその声を遮るように、
「もう、お堂は目の前ですよ、早く行きましょう!」
そう言って相談者をせかせました。相談者は首を振って拒否すると、後ろからくるキャプテンの方へ走りました。
「おい、お前何やってんだよ、道を間違えてるぞ!この先は切り立った崖になっていて、落ちたら怪我じゃすまないぞ!」
キャプテンの顔もひきつっていました。
「先輩、私………私………」
相談者は今の状況を説明しようとしましたが、言葉になりませんでした。キャプテンはこの合宿も4回目ですから、この辺りの地形はしっかりと頭に入っていたのです。そしてチェックポイントにいた部員から“相談者がまだやって来ない”と聞いて、慌てて探しに来たのです。キャプテンが相談者に同伴して歩き始めた時、袈裟を羽織っていた初老の僧侶はどこかへ消えていました。
翌日、相談者はホテルに近いお寺にキャプテンに連れられてやってきました。そして昨夜の一部始終をお寺の住職に話しました。すると相談者を連れて行こうとした初老の僧侶はこのお寺にも近隣のお寺にも該当する人はいませんでした。ただ、昔はこのお寺の裏山の道は、街道へ出る抜け道になっていて、急ぎの旅人が通っていました。ただ、山道でたびたび“がけ崩れ”が起こり、 道の整備もされていなかったため、裏山の崖に転落して亡くなった人もいたと言います。
「きっと修行半ばで崖から転落死した僧侶が、寂しさから波長の近い人間を誘い込もうとしたのではないか」
住職はそう話していました。相談者は自分を先導した僧侶とは普通に会話までしていたのです。今思い出しても死霊ではなく「生きている人間にしか見えなかった」と話していました。
2022年9月1日から、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店、インターネット書店(アマゾン・楽天など)で、シュンさんの本が発売になりました。「地球はどうしてできたのか」「人類はどうして誕生したのか」「霊界の仕組みや構造はどうなっているのか」そして「幸せに生きるすべはどのようなものか」、シュンさんがさまざまな体験に基づいて明確に答えています。悪質な”霊感商法”が問題になっている今だからこそ、霊や霊界について正しい知識を身に付けて、悪徳業者を見分けるポイントを把握してください。
■書名
霊界が教えてくれる
この世で幸福になる方法
■著者:霊能者SHUN(シュン)
■四六判248頁
■定価1650円(本体1500円+税10%)
■ISBN978-4-341-08818-7
■発売 株式会社ごま書房新社
目次
序章:地球の誕生と人類の出現
第一章:霊界の存在とその仕組み
第二章:人の縁の不思議
第三章:心霊スポットが危険な理由
第四章:霊障は理不尽なもの
第五章:先祖と私たち
第六章:この世の上手な過ごし方