第１５０３回　動物とつながること（２）

　実は私にもそんな思い出があります。私は犬もネコも動物は大好きです。私は高校生の頃、実家の庭に時々やってくる野良猫に、しばしば冷蔵庫の中から喜びそうな食べ物を取って与えていました。当時、私と同じように動物が好きだった友人がいました。その子の家はマンションで、しかも親はマンションの管理人をしていました。そのため家で動物を飼うことはできません。そのため「ペットショップ」や「動物病院」へ行って、しばしばペットの動物を眺めていたのです。

　あるときその友人が訪れた動物病院の籠の中に、生まれて間もない“子ネコ”が入れられていました。その動物病院では中絶できない子猫は出産していて、生まれた子猫は病院内でしばらく飼って“里親”を探していました。ただし、２～３か月を過ぎても里親が見つからない場合は“安楽死”させていたのです。そのことを知っていた友人は、一匹のかわいい子ネコに目が留まりました。そしてこのままでは安楽死させられるため、引き取って家に連れて帰ってしまったのです。しかし、マンションの管理人をしている親が、子ネコを家で飼うことを許すわけがありません。「すぐに動物病院へ連れて行くように」強く言われたた友人は、私が猫が好きなことを知っていたため、私にその子ネコを預けたのです。

　私の親も、“いつか死に別れるときがくるため”ペットを飼うことは嫌っていました。私はそのことを知っていましたから、家でこの猫を飼えないことは分かっていました。そのため家の中の自分の部屋で、親に隠れてこっそりと飼い始めたのです。餌になる食べ物は冷蔵庫を開ければいくらでも見つかります。トイレは私の部屋の中に用意して、昼間は普通に高校へ登校していました。しかし、こんなことがいつまでも続くわけがありません。しばらくして私が部屋で猫を飼っていることは親に発覚しました。私は親からひどく叱られましたが“飼うとか飼わないとか”親と揉めているうちに、親にも情が移ってきました。そしてなし崩し的に“ネネ”と名付けられたその猫は家で飼うことになったのです。

　そうやってネネとの楽しい生活が始まりましたが、別れの時は嫌でも訪れます。私が33歳の時、実家に住んでいた私は日曜日に朝から車で出かけて、深夜12時に帰宅しました。すると家を出る時には普通に生きていたネネが、寝床で倒れていました。すぐに親に尋ねると「夕方6時ごろに突然倒れてから、寝床でずっと横になっている」というのです。私は「なぜ、すぐに動物病院へ連れて行かないのか」と親を責めました。親は「もう、15歳で寿命だから、病院へ行ってもどうせ助からないから」と答えました。私は“親子喧嘩”もほどほどで止めて、すぐに電話帳を見て動物病院へ電話をかけ続けました。しかし、日曜日の深夜12時を回っていますから、ほとんどの動物病院は電話に出ません。出ても「深夜は受け付けていないから、翌日来てください」と断られるだけでした。私は1時間ほど電話をかけ続けた後、あきらめてネネの寝床へ行きました。そして体をさすりながら、ネネの名前を呼んで、「明日、明るくなったらすぐに病院へ連れて行くから、それまで頑張れ！頑張れ！」と励まし続けました。私がネネの名前を呼ぶと、ネネはときどき声は出せませんが口を開けて返事をしました。そして私が体をさすり始めて15分ぐらいすると、目から涙を流したのです。そしてそのまま静かに息を引き取りました。

　ネネは私が友人から預かって家へ連れてきた猫です。私が18歳から33歳という人生の一番良い時期に一緒に生きた猫です。私にはネネが私の呼びかけに応えて、口を開けて声にならない返事をした時、明らかに“さよなら”を言っている鳴き声が聞こえました。ネネは夕方6時に倒れてから、私が深夜12時に帰宅するまで、きっとお別れを言うために6時間も頑張ってくれたのだと思います。（３）へ続く。

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