第１４６２回　リンク（４）

　朝の通勤ラッシュの時間帯に、地上にある地下鉄の出口のところで、スーツを着た若い男性がうずくまりました。その男性はそれから大の字になって意識を失いました。周囲は通勤途中のサラリーマンが何人も通り過ぎましたが、誰もが“出勤途中に面倒にかかわりたくはない”と思い、足早に通り過ぎて行きました。みんな“誰かが救急車を呼ぶだろう”と考えて自ら率先して助ける人はいません。人によっては真っ青になって倒れている男性をスマホで撮影していました。その時、A君が人混みから飛び出すとすぐに倒れた男性へ駆け寄りました。そして倒れた人を道の端に寄せて、大声を張り上げました。

「誰か！救急車を呼んでください！」

「………はい！」

A君の切羽詰まった呼びかけに後ろで女性の声が響きました。A君は近くにAEDが無いことを確認すると、すぐに「応急手当」を始めました。“胸骨圧迫30回と人工呼吸2回”これを救急車が到着するまでの間、休むことなく必死で繰り返しました。約10分して救急車が到着しました。A君の両腕は痺れて上がりません。額からは汗がしたたり落ちています。A君は見ず知らずの男性の命を救うために、必死で体を動かし続けていたのです。

　倒れた男性はすぐに担架に乗せられて救急車へ収容されました。A君がホッとして地面にへたり込むとすぐ隣から女性の声が響きました。

「お疲れさまでした」

その女性はBさんでした。A君の呼びかけに応えて救急車を呼んだのもBさんでした。A君の隣で、出会ってから初めて見るBさんの優しい笑顔がキラキラと輝いていました。それからしばらくして二人は交際を始めました。口下手で不器用でも優しくて誠実なA君をBさんは心から愛したのです。

　こんな例もあります。練習過多で指の筋を壊したプロの演奏家がいました。その人は優秀な音楽大学を出て、有名な演奏家の弟子になり、自分もプロとして演奏することで暮らしていました。ただ、生活は楽ではありませんでした。個人的に弟子を取ったり、部活動の顧問をしたりして何とか生きていたのです。ただ、その生活を一変させた評価を高めた演奏会がいくつかありました。その素晴らしい演奏は日常の練習から生み出されたのではなく、指の怪我をして演奏できない時間が、きっかけになったのです。最初、練習のし過ぎで指の筋を壊した時、本人もこれで“演奏家としての人生は終わった”と諦めました。しかし、治療期間中は楽器に触ることが出来なかったので、この人は他の人の演奏をたくさん聴いて回っていたのです。自分の練習はできなくても、自分と同じ楽器を奏でる有名演奏家の演奏を聴き続けたことで、自分には出せなかった素晴らしい音色をたくさん耳にしました。そして治療が終わってからは、自分が感動したその音を出せるように練習を続けました。その結果、その人の演奏スタイルは今までになかったものに変わりました。その演奏が高い評価を生んだのです。後日、本人も

「あの演奏できない時間が無かったら、今の自分は無い」

と振り返りました。

　今まで述べてきたように、自分が幸せになるきっかけも、不幸になるきっかけも、思いがけないところに落ちているものなのです。ですからもし、あなたが今、八方ふさがりで、不安と苦しみのどん底でもがいていたとしても、決してあきらめないでいただきたいのです。その苦しい時間の中にあなたが飛躍するためのエネルギーや幸運の種が埋まっていることがよくあります。人の縁がどこでつながっているか分からないように、人生を好転させるきっかけも、どこからリンクしているかは分からないのです。

【２０２２年９月１日から、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店、インターネット書店（アマゾン・楽天など）で、シュンさんの本が発売になりました。「地球はどうしてできたのか」「人類はどうして誕生したのか」「霊界の仕組みや構造はどうなっているのか」そして「幸せに生きるすべはどのようなものか」、シュンさんがさまざまな体験に基づいて明確に答えています。悪質な”霊感商法”が問題になっている今だからこそ、霊や霊界について正しい知識を身に付けて、悪徳業者を見分けるポイントを把握してください。