第１４４３回　知らないで良いこと（１）

　私が皆さんからさまざまな相談を受けている中で、知らないで良いことを知ったことによって不幸になる人が何人もいます。先日受けた相談では、生涯の伴侶として年をとっても仲の良い夫婦でいられたはずの二人が、知らなくても良いことを知ってしまったおかげで離婚することになりました。会社員のご主人は元々真面目な方で会社でも親類の中でも信用されている人です。中堅の企業で課長職に付いていて、このまま部長～役員になることも可能な人です。会社の業績は良く、特に社内の人間関係の問題もありません。このまま定年まで働いて、退職後には子育ても終わりますので、夫婦で田舎でスローライフを送ることを夢見ていました。

　そんなご主人はある日、会社の慰労会の後、泥酔した部下の女性を一人で帰すことができずに、タクシーで一緒に帰ることになりました。それはもちろんおかしな下心は無く、酔ってフラフラの女性を心配してのことでした。彼女のマンションの前でタクシーを止めて、彼女に帰宅を促しましたが、フラフラでまともに歩くこともできません。しかたなく肩を抱えながらエントランスまで行って、彼女に鍵を借りてオートロックを開錠しました。女性の部屋へ上がることははばかられたので、エレベーターに載せて別れようとしましたが、ベロベロの彼女はまともに歩けないので、彼女を部屋の中まで送り届けることにしました。彼女の身体を支えながら預かった鍵で部屋のドアを開けて、中に入ると二人は崩れるように廊下に倒れ込みました。そこで引き上げればよかったのですが、このまま廊下で寝かせて風邪でもひいてはいけないと、親切心から彼女を抱きかかえながら寝室のベッドに寝かせました。するとその瞬間、酔っぱらった部下の女性はご主人に抱きついてキスをしてきたのです。ご主人は驚いて身を引きながら離れようとしましたが、彼女は「課長、好きです」と繰り返しながら、何度も唇を重ねてきたのです。年下の若い女性からそう言われて抱きしめられて、酔ったご主人もだんだんその気になっていきました。そして気が付けば、お互いが裸になってベッドに入り関係を結んでしまったのです。

　翌日、気まずい空気の中で起きた二人は、お互いに多くを語りませんでした。そして彼女の家から時間差をつけて出社しました。しかしご主人は職場で彼女の顔を見るたびに、自己嫌悪に襲われていました。

～妻を裏切ったことは初めてだし、部下の女性を傷つけてしまった。これからどうやって彼女との関係を解消すればよいのだろう～

そんなことを考えながら憂鬱な一日を過ごしました。そして仕事が終わって帰宅すると、残業で会社に泊ることもめったにありませんから、昨夜の無断外泊について妻から追及されました。そこで昨夜は仕事が終わって慰労会で酔っぱらって若手社員と一緒にサウナへ泊ったこと。そして酔っぱらっていて連絡できなかったことにして謝罪しました。真面目人間として信用のあったご主人ですから、妻もその言い訳を素直に受け止めて、特に問題にはなりませんでした。

　それからも特に部下の女性と接触することは無く、会社では何もなかったように振る舞って一週間が過ぎました。そこでご主人は内心“このまま何事もなく時間が過ぎれば、この前のことはうやむやになるのではないか”そう考えて少し気持ちは安堵しました。しかし、その期待はすぐに砕かれました。仕事中に彼女が「書類をお持ちしました」そういって仕事の書類を持ってきたとき、書類の一番下に封筒が入っていました。その中には彼女からのメッセージが書かれていました。

～今日、退社後に〇〇ホテルのラウンジ〇〇で〇〇時に待っています。必ず来てください～

　このメッセージはご主人からすると、恐ろしい脅迫のように響きました。“もしこの前のことが会社にバラされたらどうしよう。妻にバレたらどうしよう。お金を渡して謝罪をして何もなかったことにしてもらうしかない。どうせ男とすぐに関係を持つような女なんだから”そんなことを考えながら約束の場所へ出かけたのです。しかしそこで待っていた彼女の対応はそんな都合の良い提案ができるような状態ではなかったのです。（２）へ続く。

【２０２２年９月１日から、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店、インターネット書店（アマゾン・楽天など）で、シュンさんの本が発売になりました。「地球はどうしてできたのか」「人類はどうして誕生したのか」「霊界の仕組みや構造はどうなっているのか」そして「幸せに生きるすべはどのようなものか」、シュンさんがさまざまな体験に基づいて明確に答えています。悪質な”霊感商法”が問題になっている今だからこそ、霊や霊界について正しい知識を身に付けて、悪徳業者を見分けるポイントを把握してください。