第１３９８回　神仏の力（１）

　最近、しばしばさまざまな祈祷を頼まれます。難病に罹った配偶者や家族の病気快癒を願う人。志望校や資格試験の合格を祈願する人。大好きな人との恋愛成就を祈る人。お金を支払ってでも願いを叶えたいと思う人は、誰もが真剣です。特に命はかけがえのないものですから、癌などの難しい病気では本懐を遂げるまで“１年以上でも毎日祈祷を続けて下さい”と言われることもあります。

　私はそれに対して、今は神仏の力を借りながら、願いの成就したイメージを現実化していきます。たとえば病気快癒を願うなら“薬師如来”や“観音菩薩”の力を借りて、願いの叶っている未来のイメージを作って行きます。芸事の願いなら“天鈿女命（あめのうずめのみこと）や弁財天、伎芸天”にお願いします。勝負事なら”毘沙門天“だったり、ストーカーや嫌いな人を退散させたいなら、”軍荼利明王“にお願いします。神仏は、その成り立ちから”専門分野“が決まっていますので、そのお力に敵うようにふさわしい神様を選んでお願いしていきます。

　今はずっとこのスタイルで祈祷を続けていますが、以前は自分のパワーと成功イメージによって自力で祈祷を続けていました。しかし、私がどれだけ頑張っても人間の能力はしょせん神仏の足元にも及びません。そう考えさせられる出来事があり、その辺りをきっかけにして、祈祷のスタイルを変えていきました。

　以前、彼氏との結婚を目前にしていた女性から、“彼氏に付きまとってくる女性を彼氏から切り離してほしい”と頼まれました。“縁切りの祈祷”です。彼氏は優秀な方でさまざまな学会に入っていて、講演会やセミナーなども行っていました。この女性は彼氏の”お手伝いをしたい”ということで、学会や委員会の事務局に入り込んで彼氏に付きまとい始めたのです。初めのうちはあくまでも仕事上のサポート役として彼に接していました。しかし、徐々に打ち合わせと称して一緒に食事をしたり、一人暮らしの彼氏のマンションを訪れるようになりました。彼氏は自分の支援者や後援者の手前、依頼者とお付き合いしていることを公表していませんでした。そのためこの女性はとうとう彼氏のマンションから深夜になっても帰らないことが続いてきたのです。私は依頼を受けてすぐに動きました。まずは分からないように彼氏とこの女性の自宅に結界を張りました。そうやって思いを伝えたり意思疎通できないような状況を作りました。その上で“縁きりの祈祷”を開始したのです。私は雑念の飛んでいない深夜の時間帯を選んで、二人が別れて生活しているイメージを作り上げていきました。そして毎晩のように、繰り返しそのイメージを二人に送り続けたのです。二人の中にお互いに別々の人生を生きている未来を埋め込んで行くことが出来れば、それは二人の無意識の選択を変えていきます。そしてそのイメージを現実化するように二人の選択・判断・行動が変化していきます。その結果、そのイメージは現実のものとなるのです。

　私はこの方法で皆さんの希望する未来をいくつも実現してきました。ですから今回もこの方法によって、二人はスムーズに離れていくと思っていました。しかし、想定外だったのは、この女性の彼氏に対する“執着”の強さです。祈祷を開始して、１か月がたち、２か月が経過しようとしているのに、彼女は彼にしがみついて離れません。事務局の仕事もかなりの気力や体力を消耗するものでしたが、歯を食いしばってやり続けていました。彼女は一度自分が担当した仕事は、苦しくても決して他人へ回しません。そうやって事務局の中で自分の役割（存在）が大きくなっていけば、彼は嫌でも彼女から離れられなくなるからです。それを見越して、無理をしてでも大量の仕事を一人で処理し続けていったのです。

　すると彼氏の気持ちにも変化が表れてきました。そこまで自分をサポートしてくれるこの女性に彼氏の気持ちも少しずつ感化されていきました。彼にとっても徐々にこの女性の存在が大切（無くてはならないもの）に変化して行ったのです。このままでは“縁切りの祈祷”は失敗に終わってしまいます。私は二人が別れている状況を強くイメージして二人に送り続けていましたが、彼女の執着がそれを跳ね返して彼氏を取り込むところまで来ていたのです。（２）へ続く。

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