第１１４７回　信じること（１）

先日、あるお母さんから息子さんのことで“除霊”の依頼を受けました。そのお子さんは今、中学３年生ですが、不登校になっていてほとんど学校へは行っていません。息子さんは一日中、自分の部屋にこもって対戦ゲームをやっています。それは深夜も続けているので、朝は登校する時間に起きられるわけがありません。その状態はもう１年以上続いています。そのため“ゲーム依存症”の精神科へ連れて行ったり、カウンセリングも受けましたが、一向に良くなりません。しかも最近では、親御さんが無理矢理、ゲームを取り上げたり、隠してしまうと、手当たり次第に家の中の物を破壊します。電子レンジ、ポット、パソコン、空気清浄機、さまざまなものが投げつけられて窓から外へ捨てられました。そして両親がそれを止めれば殴りかかったり、物をぶつけたりして、手に負えなくて警察を呼んだこともあります。暴れているときの息子さんの顔は、目が吊り上がって悪口雑言を喚き散らして、とても正常な状態ではありません。親御さんからすると、その様子はまさに“悪霊に取り憑かれて暴れている”ようにしか見えません。そこで人づてに私のことを聞いて、除霊を依頼してきたのです。

　私はまず、最近の息子さんの画像を送ってもらいました。自室のベッドですやすやと寝ている画像でしたが、そこに不浄霊が憑いていることは明らかでした。しかも何体か憑いていて、その中にはとても古くて悪いものも含まれています。

～これでは自分を孤立させるために、自分を失って大暴れても仕方がない～

そう思えるほど、悪い不浄霊が憑いていました。私はお母さんに尋ねました。

「息子さんには確かに不浄霊が憑いています。これは除霊によって祓った方が良いのですが、息子さんは自分が除霊を受けることを納得していますか？遠隔除霊でも４０分ぐらいの間、電話の近くで私のマントラを聞いてもらわなければなりません。その準備はできているのでしょうか？」

私の問いにお母さんは、

「息子にはまだ、除霊のことを話していません。しかし、今の状態が不浄霊によるものなら、すぐにでも取ってほしいのです。もし息子が納得しなければ、縛り付けてでも電話の前に、４０分間座らせます。ですから遠隔除霊をぜひお願いします」

と、申し訳なさそうに話したのです。私はすぐに答えました。

「早く改善したいお気持ちは分かりますが、ご本人が納得していないと、除霊はきれいに完了できません。たとえばもし本当に、息子さんをロープで縛り付けて電話の前に座らせたとします。そして私が４０分間マントラを唱えたとしても、その間、息子さんは私のマントラをずっと拒否し続けるはずです。本人が“絶対に受け入れない”と意地を張っている状態ではマントラは本人に入りません。ですから息子さんに憑いている不浄霊に働きかけることもできません」

「………」

「できれば拒否するのではなく、自分自身の気持ちの中に“この悪霊を早く祓いたい”とか“本来の自分自身に早く戻りたい”という除霊を肯定する気持ちを持ってもらうことが必要です。息子さんの気持ちの中に私を信じ、“早く良くなりたい”という気持ちがあるときに、私がその思いを何倍にも膨らまして悪霊を祓います。仮に息子さんが口では私を信じると話してマントラを聞いていたとしても、心の中で“悪霊なんているわけがない”とか、“この人にそんなことが出来るわけがない”と不信感や疑念だけが広がっていたとします。そうするとゼロに何をかけても答えはゼロですから、有効に不浄霊を祓うことはできないのです」

お母さんは黙って私の言葉を聞いていました。（２）へ続く。

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