今回は私を悩ませ続けた気まぐれ最強マイラー、

ダイタクヘリオス

のお話。



私がこの馬に出会ったのは競馬を始めて2年ほど経った頃。


この頃には血統背景と戦績から距離適正を考え、持ち時計で地力を見て、出走する馬の脚質を参考にしつつ、一番は展開を予想して全体のペースから勝ち負けを考えるのが予想の軸になってました。


あと、それを補うのが追い切りや当日の馬体重から推測するコンディション。


騎手はあまり気にせず、馬7:人3の考え方です。


まあ、こんな感じで真っ当な予想をすれば人気通りの予想になるもので、比較的堅い予想が常でした。


そんな私の予想を嘲笑うように好走と凡走を繰り返す天敵が一頭。


それがダイタクヘリオスでした。


きっかけはやはり高松宮杯。


91年のことです。


この頃の私は競馬歴2年ほど。


この日も朝一から友人と中京競馬場へ。


週間競馬ブックに中スポの追い切り情報と、事前のデータもバッチリ。


本命はもちろん安田記念馬ダイイチルビー。


距離適正に若干の不安があるものの、充分にこなせると判断。


対抗は距離、コースとも相性の良さそうなホワイトアローか、本格化の兆しを見せる武豊騎乗のヤマニングローバルかといった所。


8頭立てであまり手広く買えないので、馬券はここまで。


ダイタクヘリオスも実績では割と上位な気がしましたが、距離適正が怪しい上に前走CBC賞で5着と凡走。


しかも、調べれば調べるほどマイナス要素が続出。気性悪い、調教走らないなどなど・・・。


あと、走り方がすっごい変で、首を上げて口開けて走ってるんです。


これはCBC賞で実際に見ました。


掛かったりすると行きたがるのを抑えるようにジョッキーが引っ張って首が上がってるのはたまに見ますが、この馬の場合最初から最後までこのまま。


直線、大概の馬は首を下げ前後に振って走ってますが、この馬はやっぱりそのまま。


走り方は面白いけど勝ち負けはちょっと・・・。


てな感じでレース開始。


逃げるのは予想通りトーワルビー。


一番人気ダイイチルビーは3番手の好位追走。


ダイタクヘリオスは2番手に落ち着く。


ここらへんからなんか嫌な予感。


3コーナーから先に持ち出して来たのはダイタクヘリオス。


なんかこっち向いて口を割ってます。


嫌な予感がだんだん現実に。


直線抜け出すヘリオス。


追いすがるダイイチルビー。


2頭並ぶようにゴール。


一着は・・・もはやどっちでもいい。


どうせ馬券は外れてる。


なんだこの馬。


隣で見ていた友人が、

『なんかさー、直線でこっち向いて口割ってたじゃん、あれがもらったぜ〜』って笑ってるように見えるんだよね』


なるほど。


確かにそう見えるかもしれん。


色んな意味でふざけた馬だ。


しかし、マイル馬が宮杯で好走するのは割とある話。前年のバンブーメモリーもそうだった。そう言う意味では侮ってはいけなかったなぁ、などと2人で反省。


秋のマイル戦線では要注意とチェック。


次走、毎日王冠でも2着と好走。


しかしその後スワンSでは9着。


やっぱりマイルだとダイイチルビーの方が強い?とか思ってたらマイルCSでG1初制覇。


やっぱりマイル強いじゃんとか思ってたら、翌年、一番人気で臨んだ安田記念で5着。


宝塚も凡走し、休養明けの毎日王冠で今度は4番人気からのレコード勝ち。


ここまでこの馬の出てるレースで全敗の私は思いました。


コイツは

オッズを見てる。


そして人気の時は凡走し、人気薄だと勝つ。


最早そうとしか思えない。


そして迎えた連覇のかかるマイルCS。


敵は4連勝で勢いに乗る外国産の4歳牝馬シンコウラブリイ。2番人気がヘリオス。


前年から段階的に始まった馬連の一番人気はもちろんこの2頭。


本命党の私なら迷わず軸になるはずですが・・・。


ふっふっふ。


私は知っている。


人気のヘリオスは走らない。


友人の意見も私と一致。


シンコウラブリイから手広くヘリオス外して流す作戦に。


そして、レース。


中京のモニターで友人と観戦です。


好スタートから3番手で折り合うヘリオス。


何度も味わった嫌な予感。


人気のシンコウラブリイは中断待機。


ですが、もはやヘリオスが気になって仕方ない。


3コーナー早めに持ち出すヘリオス。


そして、直線。


余裕の先頭を突っ走るヘリオス。


アップになると口を割ってます。


昨年の宮杯がフラッシュバック。


隣で見ていた友人が頭を抱えて叫ぶ。


『笑っとる〜』


隣で同じく無言で頭を抱える私。


シンコウラブリイの追い込みも届かずそのままゴール。


色んな意味で

お手上げです。




理詰めの予想を嘲笑うかのようなヘリオスの戦績。


重賞を7勝し、生涯獲得賞金は6億を軽く超える歴史的な名馬として申し分ない数字にも関わらず、一番人気に応えて勝利したレースは4歳春の条件戦、さざんか賞ただ一回のみ。重賞では一度もありません。


重賞レースを中心に馬券を買う本命党の私には本当に大迷惑な馬でした。


因みに初年度産駒のダイタクヤマトもスプリンターズステークスで16頭立て16番人気から1着になると言う大波乱を起こしてます。




ヘリオスが強かったかと聞かれれば間違いなく強かったと答えるでしょう。


何にでも穴をあけると評された岸滋彦騎手とのコンビは抜群でハマると確かに強かった。


ただし、気まぐれ故走ってみなきゃわからない。


競馬って奥が深いなぁ〜と思わされた気まぐれ最強マイラー、ダイタクヘリオスのお話でした。