娘婿 | 洋服直し屋の日常

洋服直し屋の日常

服の直しや仕立ての仕事をしています。
日常で出会ったおもしろいこと、服の製図や
自分でできる修理方法など書いています。

                                            娘婿


6年ぶりに娘が帰国する。
娘の夫(名はクリス、私とは4度目の再会)。初孫(4才半)とは初対面である。

(私)
「あんた! 私は今までのお母さんとは別人よ。
歩けない、食べられない、シワまみれ、ゲゲゲの鬼太郎の
砂かけ婆そのものよ。こんなみじめな姿をあんたたちに

見られたくない。                            

会いたくないの。

 

(娘)
「いまさらいいじゃん、もー若くもないんだし。

こ汚くなってあたりまえよ」
 

「せめて、おいしいおふくろの味だけでもねぇ。
食べさせてあげたいじゃん。

それすらもできないのよ。
できない私のプライドはダダ下がり、

メンタルおかしくなりそーよ。
あんた、家の中を4つ足でほふく前進している、
自分の母親を想像できる?あわれで情けなくって泣くよ!」

「日本には10日間いるから、1拍だけでもさせて。あとはホテルに泊まるから」

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実家での初日

「おかあさん、風呂場がカビだらけよ。きれいずきだったのになんで?」
 眼もわるくなってんだなー。それとやせたね~。ガリガリ君キャンディーだよ。
 風呂と部屋のそうじしていいね?なんでヘルパーさん頼まないの?」


「私は昭和の古き良き日本の良妻賢母なの。自分のパンツの洗濯・買い物、
家の掃除などでヘルパーさん雇うなんて、そんな恥知らずなことできないわよ」

世界中の男が「妻にするなら日本の女を!」と叫ぶには
それなりの理由があるんよ。あんたのクリスもそう言っていたのを忘れたの?」

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しばらくして、風呂場のほうからキャッキャと笑い声が聞こえてくる。
親子3人で入浴中のようだ。

うちのバスはかなり狭い。私一人でもバスタブの中で足を伸ばせない。
クリスは背が高い。娘も大柄で、チビは男の子でけっこう体格がいい。
どーやって入浴するんだ?

結婚5年目といえど、娘は夫にムッキムキの裸体を見られて恥ずかしくないんかなぁ?
その心境、私にはわからん・・・・・・。

「ニュージーランドハズバンド」という言葉がある。
    または「キウイハズバンド」という人もいる。
 

ニュージーランドの青年は「かなりの育メン」で有名だ。
クリスもその言葉どおり、育児・家事に積極的でそれを苦に思うどころか、
楽しんで参加している。

女房が体調の悪いときは、食事、洗濯、掃除すべてオイラにまかせとけ~タイプ。
子供の幼稚園の送迎・排泄・PCのトラブル・将来の家族の生活設計プランなど。

嫌味なくやってこなす。



妙なのは「チビを日本に留学させたい!」

理由を訊くと

「ニュージーランドは、教育費は無料です。
そのため学生は勉学に積極的ではないです。
日本の高度な知的レベルと、日本人の礼儀礼節を
重んじる国で思春期を過ごせば、チビは人間的にも成長でき一番いいと思うんです。

正しい日本語も習わせたいですし。
そのためには家族3人、日本に引っ越しもOK!です」

妻を迎えるには日本の女性を!と35才まで結婚しないでいたという彼。

中学生の時、日本とニュージーランドとの「交換留学生」として

北海道に1週間ほど滞在して日本が大好きになったんだ。

 


 

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