第十二話:魔界の花園(第二段落目) | マーロールのブログ

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神殿内は緑豊かだった。草原のように、辺り一面に草木が生え、葉龍族の魔族達と協力して神殿を守っているのではないかとさえ思える。


(こんなに美しく神秘的な神殿なのに、華龍女神の力が衰えつつあるなんて、信じられない)


あまりにもこの神殿が美しいせいか、リタには町の荒廃が嘘のように思えてならなかった。だが、カリア族長が言ったことが事実なら、尚更この町を守らなくてはならない。その覚悟を決め、リタ達はサートアンヌの華の在り処を突き止めるために進む。


四人が少し進むとそこには、ガーデニングハウスのように蔓が絡みついているドアがあった。ナンシーはそれを得意気に、斧から繰り出す火属性の魔法で燃やしていく。


ドアの先の部屋にも、蜘蛛の巣が張ってあったり、大きな根があったりと、厄介な物がたくさんあった。


リタ達の後ろをついてくるように、ピンク色のマントを羽織った少女がこそこそしている。


「あれが、キア様が言ってた《砂龍王女リタ》ね。見た感じ、多少は大人びていて強そうな格好だけど、このウィスパー様の敵じゃないわ」


スパイのようにこそこそと歩きながら少女は、リタの動きを観察している。その時の足音や気配を感じ取っていたものの、リタは特に気にも留めていない。ナンシーやニアロスも、何かが気になるかのように辺りを見回したが、気のせいだと思い、見過ごしていた。


神殿の中央と思われる部屋まで進むと、四つの部屋に通じるドアに遭遇した。リタ達は、それぞれのドアを調べてみた。


「何なに? 『正義の部屋』? 君達が見てるドアは何て書いてある?」


リタは、離れている仲間全員に聞こえるくらいの声で、叫ぶ。四つのドアについて詳しく書かれた石盤を、リタは見つけた。だが、その石盤の文字は全て、《古代ガルドラ文字》で彫られているため、彼女には読めない。


(あの時は辛うじて読めたけど、あれはヨゼフの古代文字辞典があったからだよ)


リタは顔を赤らめながら、ヨゼフを呼ぶ。


「どうしたの、リタ?」


「ヨゼフ、私達の目の前に石盤がある。でもこの文字は、全部古代文字なんだ。だから、解読してくれるかな?」


「お安い御用さ」


古代文字という言葉につられて来たかのように、ヨゼフは古代文字をすらすらと解読していく。


「『この四つの扉の奥に巣くう毒の魔物を、全て排除せよ。さすれば、次の扉を開けん』だってさ」


石盤に記されている《毒の魔物》という言葉に疑問を感じながらも、ヨゼフは簡単に古代文字を解読する。


「凄いな。よくこんな混乱しやすい文字を、読めるね」


ニアロスは、感心していた。ヨゼフは顔を赤らめながら、首を横に振る。


「僕なんて、まだまだだよ。古代文字は、それぞれ読み方に法則があるらしいけどね」


無駄話をしている暇(いとま)はないと言いたげに、四人は話を切る。


リタとナンシーは石盤から左側の二つのドアを、ヨゼフとニアロスは石盤から右側の二つのドアを開ける。四人は手分けして、石盤にある《毒の魔物》を退治することにしたのだ。


リタが入った部屋は、漆黒といっても過言ではないほど暗い所だった。それにも怯まず、彼女は《毒の魔物》の在り処を探して、ひたすら走る。その気持ちに応えるように、リタの武器である《デュラック・クロー》という爪は白く光る。その光は、リタを魔物の元へ導こうとしているように見えた。


奥へ進めば進むほど、リタの気分は悪くなっていく。


(う……。なんだろう、この嫌な臭いは? この奥に例の魔物がいるというのか?)


リタは警戒しながら爪を構え、いつでも戦える体勢に入る。爪から出る光を頼りに、広間らしき場所を見回す。その時、走っているような素早い足音が、リタの耳に入った。


リタは魔物の気配を感じ取り、ジャンプして上から引っ掻くように攻撃する。だが、あまりにも彼女の動きが大きいせいか、魔物は軽く攻撃を避けた。


(なんて素早い……。まるで、レザンドニウムの闘技場で戦った、《闇の大蜘蛛》そっくりだ)


リタは、以前飽きるくらいに戦わされてきた、《闇の大蜘蛛》という魔物のことを思い出した。動きが素早く、毒性が強い蜘蛛。この特徴と、今戦っている魔物とを当てはめ、リタは何かに気づく。


(まさか、あの石盤に記されてた《毒の魔物》って、《闇の大蜘蛛》のことなのか? いや、それはあり得ない。あれは私達が領国を脱出した日に、倒したはず)


リタは事実に気づいた時、信じられないという顔をした。


(一体だけでも手こずるというのに、キアはこの神殿にも毒を仕込んでたのか)


きっと、マライテスの花園が荒廃しかけているのは、こいつらが原因に違いない、と思いながらリタは、闇の大蜘蛛と戦っている。


(前と違って、あいつの脚を掴む物がない。でも、どこかに大蜘蛛を倒す突破口があるはず)


リタは突破口を求め、辺りを見回す。すると、天井に粘り気のある物がついていることがわかった。リタはわからないままに、爪の手の甲の部分を天井に翳す。すると、爪の光が天井で屈折し、彼女が立っている位置とは反対側に光が射し込んだ。


これを利用し、リタは大蜘蛛とは反対側に回った。光は大蜘蛛の背中に当たり、体が燃えていく。


奇声に近い大蜘蛛の悲鳴が、リタにとっては苦痛に聞こえる。大蜘蛛が跡形もなく燃え尽きると、神殿の奥へと続く扉がひとりでに開いた。


怪奇現象みたいだな、と思いながらリタは扉をくぐる。