火龍神の神殿での戦いを終え、リタ達は火龍族の町に戻った。戻って早々、彼女達の目の前に、ゼネラ族長がいた。
「出迎えてくださってありがとうございます、族長」
「いやいや、これは族長としての務めだよ」
ゼネラ族長は、半ば照れたように言った。ナンシーは神殿内で起きた出来事、火龍神に言われたことを、族長に話そうとする。
「あの、いろいろと報告するという約束をしていたと思うのですが」
「ああ、もちろん覚えている。ただ、ここでは何だから、私の家に来なさい。そこでしっかり、詳細を聞かせてもらおう」
リタ達はゼネラ族長に、彼の家まで連れられた。早速ナンシーは、詳細を説明する。
「神域で火系魔道師と会いました。彼は私達を処刑するために、また領国に連れて帰りたい。それが、キアの決定だと言っていました」
ゼネラ族長は首を縦に振ってから、彼女に訪ねる。
「なぜ、キアは君達を処刑する必要があるのだ? それなら、わざわざ九年間も働かせなくても、良いはずだが」
「監視していたのです。私達が成長し、その後どのような行動をとっていくのかを。氷系魔道師と火系魔道師が、連携してね」
リタが口を挟んで言った。族長は頷く。次にナンシーが火龍神から言われたことを、一部分だけ述べる。
「火龍神は、『最近《漆黒の魔道師》の力が強くなっている』、とおっしゃいました」
ナンシーが述べた詳細を聞きながら、族長も召使い達も納得している。
「なるほど。ナンシー、君がリタ姫について行くなら、あのお守りを渡しておこう」
ゼネラ族長は食卓から一メートル進み、飾り棚から石のような物を取り出す。族長は、少し寂しげな顔をして言う。
「これは私や君の両親からの餞別だ。大事にしなさい」
ナンシーは、族長から炎の形をした石を受け取った途端、目を丸くする。
(これ、《業火のルビー》じゃない。確かこの宝石は、お父さんが大事に持ってた物よ。でもなぜ、これを族長が預かってたのかしら?)
ナンシーは、脳裏に疑問を浮かべた。が、このことは敢えて質問しないわ、と彼女は心に決めた。ヨゼフは今回の冒険の中で、疑問に思ったことを族長及び自分の仲間達にもちかける。
「僕はまだ納得いかないな。僕達が出発する前、族長は『神殿内に不審者が潜んでいるから、調べてほしい』と言った。でも実際に神殿に行ってみたら、不審者はフィアロス以外に誰もいなかった。族長が口実をつくるなんて、おかしいと思わないか?」
ヨゼフの意見には、リタもナンシーも納得している。
「確かにその通りだ。族長、どうして神殿の不審者退治の依頼などと、口実をつくって私達を行かせたのですか?」
リタは、族長の本音を確認する。彼は少しうつむき、また頭を上げて三人に、本当のことを話す。
「ヨゼフの言う通り、私は《不審者退治》という口実をつくり、君達を神殿に行かせた。だが、もしも『火龍神が《新たな龍戦士》の目覚めを待っているかもしれない』とだけ言えば、君達はあそこへは向かわなかっただろう」
「と、言いますと?」
途中から、神殿長が口を挟み、説明する。
「君達も薄々感じているだろうけど、最近キア一味の魔道師達も、よく神殿周辺を徘徊しているそうだ。最も、神々の聖なる力に惹かれているのかどうか、真偽の程はわからないがね」
「……」
族長との面会を終え、リタ達は外に出た。ナンシーが、二人を自分の家に誘う。二人は彼女の言葉に甘え、泊めてもらうことにした。
三人は食事の後に風呂に入り、現状を纏めるために食卓に集まる。
「現状を纏めよう。私達は砂漠を出発してから、まだ数日しか経ってない。でも、その数日間でもう、キアの配下達に嗅ぎつけられてしまった。今、私達がするべきなのは魔道族の追っ手を逃れつつ、一刻も早く残り七人の龍戦士を捜すことさ」
「だけど、もしアヌテラの戦いの時のようなことが起きたら、どうするの?」
「その時は、命懸けで戦うしかない。君達が私の援護をしてくれてるのと同じように、私も魔界中の龍魔族を守るために戦うのさ」
「そうね」
「ああ、流石は《砂龍王女》だな。僕達も協力するよ」
現状や今後のことを纏め、三人はナンシーの両親が使っていた部屋に布団を敷く。こうして、慌ただしかった一日が、何事もなかったように過ぎていった。