「もっと怒ってもいいのに」

精神科長期入院、断念と希望と





筆者の植田太郎氏は精神保険福祉士、ソーシャルワーカー。


精神障害の人の支援に長年携わってきた仕事柄、

数十年にわたって精神科病院入院してきた、

あるいは入院中の精神障害者の人達の姿を目にしてきた。


彼らの多くは、

あまりにも長かった自分の入院について、

誰かを呪うわけでもなく淡々と現実を受け入れてこの社会の片隅で暮らしている。



植田太郎氏は思うのである。


「もっと怒ってもよいはずなのに」!!


そういう思いからの本のタイトルになります。



この本、図書館で借りて読んだのですが、

精神科病院に入院歴のある私、

日本の精神医療の歴史を調べたことがある私にとって、

文献や映画や資料などからの知識でしかなく、

リアルに精神科病院に長期入院させられた人々を目にしたわけでないのですが、

それでも胸が詰まるような内容の本でした。



改めて「日本の精神医療のお粗末な歴史の現実」に怒りを感じずにはいられません。




当事者でもない私が怒りを感じるような現実の内容なのに、

長期入院を余儀なくさせられ、何十年間もの年月を無駄?にした当事者たちは意外にも、

怒りをぶつけるわけでもなく淡々と日本の社会の片隅にひっそりと生きているのがリアル現実らしいです。



メンタルヘルスの問題は、

この20年程でかなり身近なものになりました。


労働者のメンタルヘルス、女性のメンタルヘルス、子どものメンタルヘルスなど。

それらは多くの人に関わる重要なことかもしれない。


しかし一方で精神科長期入院の問題は、ほとんど話題にされることはない。



筆者の植田太郎氏はこう語ります。

「燃えさかる古い家屋の中に多くの人が取り残されているにもかかわらず、

 誰もが見ないふりをして明日の過ごし方について話しているように感じられる」



精神障害者の支援者として長期入院退院後の精神障害者達とも多く関わってきた植田氏。


精神科病院長期入院を体験した人たちから数多くのことを学んだそうです。


数々の断念を通過しながら生き抜いてきた人たちがふとした瞬間に見せる、乾いた悲しみ。


精神科長期入院の問題を考えるということは、

いま私たちが生きる社会のありようを考えることである、

とこの本では我々に問いてます。



ところで、

普通に日本社会で暮らしている多くの日本人、

「日本の精神科病院の長期入院問題について考えたことはあるのでしょうか?」



私の個人的な推測では、

ほとんどの人はそんなこと考えたことない、と思うのです。



メンタルヘルスの問題は身近になり、

精神科や心療内科へのハードルは下がりました。


しかし、

それはあくまでも、うつ病やら不眠症やら発達障害などであり、

いわゆる重度な深刻さが大きいガチな精神病はまだまだ遠い世界の話だと思ってる人がほとんどではないのでしょうか?


重度な統合失調症や双極性障害1型、

いわゆる昔でいうキ◯◯イと言われたような症状の人達は自分とは無縁の遠い世界の話だと思っている。



ゆえに、

手に負えないような重篤な精神病患者が隔離され精神科病院で長期入院となっていても、

大きな問題とは思えない。


むしろ、

そのような人が社会に出てきて自分の身近に存在するほうが嫌だと思う人がほとんどなのでは?



東京都八王子の滝山病院事件。

昔の話でなはい、2023年に起きた事件。



精神科病院である滝山病院で看護師らによる入院患者への暴行事件。

これらの事件はNHKなどが報道して多くの人がテレビでその悲惨な実情を目にしました。



滝山事件では、

改めて精神障害に対する虐待や差別、スティグマの問題、さらには精神障害がある人の家族の苦悩も浮き彫りになりました。


この事件に関しては、

もちろん暴行を働いた看護師や医師、病院関係者、精神科病院の実情にも多くの批判の声が寄せられました。


しかし一方で、

「こんな世話をするのが大変な精神病患者を劣悪な労働環境の中でみていたら暴力も振るいたくもなるよな」

といった、肯定するような意見も多く目にした記憶があります。



そして多くの日本人は

「精神科病院の長期入院は問題ではなく、仕方がない。行き場のない人を病院で見てあげてるのだから仕方ない」と捉えている。


さらには、

世界の先進国の中で「日本が特別に異常に精神科病院の入院患者数が多く、入院期間も異常に長い」

といった実情も知らない人がほとんどだと思うのです。



「無知は罪」 

まさにこの言葉が日本の精神医療問題にはピッタリだと思うのです。


知っていて目をつぶっている、無視しているのではなく、

単純に知らない。

いや、興味がない、というのが問題の根っこにあるように思えます。



私も現実に自分が精神医療と関わったから、色々と調べたり勉強しましたが、

それまでは「正直、興味がない」というのが事実でした。



と、

今回はここまで。