長いあいだ、両親とは会っていなかった。

 

きっかけは、ほんの些細な喧嘩だった。 

言葉がすれ違い、気持ちがこじれ、連絡を取らなくなったまま時間だけが過ぎていった。

そこへコロナ禍。 

外出もままならず、子育てに追われ、気づけば何年も会わないままになっていた。

 

息子の大学受験が終わり、ようやく心に少し余裕ができた頃、

ふと「会いに行こう」と思った。 

その思いに背中を押されるように、母の入居している施設へ向かった。

 

母は要介護4で、施設に入居している。

 久しぶりに会う母は、以前より小さく、静かに見えた。 

 

けれど、私の顔を見た瞬間、ゆっくりと笑った。

その笑顔を見たとき、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。

 

 会わなかった時間の長さよりも、「会えた」という事実が、ただただ大きかった。