新年には明るく希望に満ちた話題がほしいものですが、元旦の朝刊見出しから明るい話題はない。
極め付けは、東京・渋谷の歯科医宅で女子短大生のバラバラ遺体が見付かり、犯人は浪人中で予備校生の兄だったといいもの。
発見者は母親とか。お風呂場でバラバラにしたというのを聞いて、今頃さぞかし精神を乱していることでしょう。
被害者の親であり、加害者の親であると・・・。
それにしても、この事件にはやや腑に落ちない部分がある。
兄と妹が仲違いをしたとはいえ、同じ家に済んでいて3年も口をきかないなんてことがあるでしょうか?
そんな兄妹を残して親が帰省しますか?
仲のいい兄妹であったとしても、若い娘を家に残して親が留守をしますか?
加害者の兄は予備校があり、受験生であればお正月はありませんから東京の留守宅に残るのはわかります。でも被害者の妹も、なぜ東京に残ったのか、不思議でした。でも前日まで所属していた劇団での舞台に出演していたと聞けば、少しは理解しますが、やはり、二十歳前後の女の子を残して家を留守にするという親。
留守中気になって娘に電話の一本も入れなかったのかと・・・ 普通なら毎日電話するでしょ??!と、それがどうしても気になってしまい、この事件の異常性や残虐性とは別に、家庭環境に疑問を持って、どーしてもそこが気になってしまいます。
殺された妹にも、多少の落ち度を感じる。
勿論どんなことがあっても人を殺していいものではない。けれど妹は、兄に対して先に言葉の暴力を発していると思う。
犯人である兄を擁護するつもりは少しもありません。
ただ、人の一番の弱点。触れられたくないことをグサリと言われて、それに逆上して一瞬我を忘れ、兄はバスルームで更に反抗に及びながら、心の中に煮えたぎる思いを抱えていたのではないかと想像します。
誰がどう見ても兄が悪いに決まっている。
けれど妹の言葉。「あなたには目標がない」と言ったようだが、両親が歯科医というだけの理由にせよ、自分も歯学部に行こうと、3回受験している。4回目の受験を目指すには、根性がいりますよ。
受験を前に、何度も失敗の経験をして、ナーバスになっていたことでしょう。兄弟がいて、妹や弟に抜かれてしまうのって、かなりのプレッシャーなんですよ。その妹に「あなたは・・・」と言われ、さぞかし心にグサリときたのだろうな・・・ということは、想像できます。
言葉の暴力というものがあることを、私たちは知らなければいけないと思う。昨今社会問題になっているいじめ問題も、実際に暴力を受けるというケースより、言葉の暴力を受けているケースの方が遥かに大きいでしょう。サッカーW杯の折のフランス代表ジダン選手が暴力に出たのも、イタリア選手より言葉の暴力を受けたからでした。
私たちは言葉の暴力というものにもっと注視し、目に見える暴力にばかり留意しないで、言葉の暴力というものがいかに人の心を傷つけ、えぐっているかを、もっと考えるべきではないでしょうか。