岩波少年文庫の『フランバーズ屋敷の人びと1 愛の旅だち』を読みました。K.M.ペイトン著。フランバーズ屋敷はシリーズもので第5巻まであります。約10年ぶりの再読なのでどんなお話だかすっかり忘れていて、新鮮な気持ちで読むことができました。

 

 

 このシリーズは、児童文学はどうあるべきなのかということをとても考えさせられる本です。私は児童文学は子供が将来の希望を持てるように明るいお話であるほうがいいし、また心豊かになれるようにあたたかいお話であるほうがいいと考えています。

 

 ところが『愛の旅だち』は冷たい現実を突きつけるようなお話。主人公のクリスチナは両親を亡くした女の子。21歳になったら莫大な遺産を相続することになっているのですが、それまでは文無しのため親戚中をたらいまわしにされています。

 

 最終的にフランバーズ屋敷に住む狩猟好きのラッセルおじという人に引き取られるのですが、この人がとても残酷な人でした。狩猟好きな息子マークだけは可愛がり、もう一人の息子ウィリアムとクリスチナに対しては暴力をふるいます。

 

 マークも残酷な性格で、屋敷の使用人のバイオレットとディックという兄妹を苦境においやります。

 

 物語の最後でウィリアムとクリスチナは駆け落ちすることとなり屋敷を逃げ出すので、いちおう希望をもてる終わり方ではあります。しかし子供にこんな暗い話を読ませていいものなのかと思ってしまいました。

 

 著者のペイトンさんは何を考えていたのだろう。このお話のもつ暗さ、読んでいて胸が悪くなる感じは、すごくディケンズ作品に似ていると思います。

 

 クリスチナのこともあまり好きになれませんでした。つらい状況の中で頑張っているところはえらいと思うのですが、どうにも頭が悪くてたびたび事態を悪くするようなことをしでかすからです。

 

 フランバーズ屋敷シリーズは絶版になっていたところを岩波少年文庫に仲間入りして復活するのですが、現在はまた絶版とのこと。暗い話だし主人公も魅力的じゃないから人気ないのかな。

 

 ちなみに第2巻は青春の輝きをテーマとした明るめなお話です。ところどころ暗さもにじみ出てきますが。近いうちにご紹介するつもりです。