(「僕たちビーグルは空想大好きです。有名なスヌーピーもそういう設定でしたよね」とビーグル犬まろさんオス10歳)

 

 東京ステーションギャラリー「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」展(2024年7月13日(土) - 9月23日(月))を見てきました。東京ステーションギャラリーは東京駅丸の内北口にある美術館で、「まさかこんなところに美術館?」というところに入り口があります。ジャン=ミッシェル・フォロンは1934年生まれで2005年に亡くなったので、私にとっては同時代人で父と同世代か少し下くらいの年代になります。

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン (ejrcf.or.jp)

 ここは写真撮影禁止で写真を載せることはできないので、「ジャン=ミッシェル・フォロンって誰?」という状態の方は、まず上のリンクを開いて「ああ...うん、うん?なんか見たことあるかもしれない」と思ってください。そうです、この方、名前以上に色々なところで目にしたことがありそう、と思う人が多いのではないかなと思うのです。

 フォロンの作品で象徴的なのが「リトル・ハット・マン」という人物。人物、というか「キャラクター」と言った方が良いのでしょうか。帽子をかぶってコート着ている人物(のデザイン)。これが色んな作品に出てきます。フォロンは同じベルギー出身の画家、ルネ・マグリットの作品を見て感銘を受けたそうで、ルネ・マグリットの有名な作品にも帽子をかぶった人物が出てくることがありますので、そういうところも影響を受けているのかもしれません。ベルギー出身の画家、というとあまりピンとこない人が多いかもしれませんが、実はこのフォロンやマグリットの他にもヤン・ファン・エイク(油彩絵画の創始者で超絶技巧)、ペーター・ブリューゲル(繊細な線)、ペーター・パウル・ルーベンス(あの有名な:フランダースの犬でも有名)、ジェームズ・アンソール(「仮面」を描くことでで有名)とか、結構、有名な人達、絵画の歴史上での重要な人達が出ているのです。

 その幻想的なベルギーの画家の衣鉢を継ぐ...ということかどうかしりませんが、このフォロン、なかなかに幻想的な絵を描くのです。もちろん、上に挙げたベルギーの画家たちとは全く違った画風ながら。比較的淡い色彩でぼかしを入れたマンガのような感じの絵。水彩とか、カラーインクの印象が強い。でも、しっかりとその絵の中で独特の世界観が描かれているのです。

 この展覧会、「最初から最後まで油彩画」というわけでもなく、紙に墨とかの線画も結構含まれています。色のついた絵も水彩だったりカラーインクだったりというのが中心だったりします。それで全体が300点近く。普段の他の画家の展覧会だとなんとなく「物足りない」とも感じてしまうのですが、この展覧会、全くそんな風には感じませんでした。最初から最後まで「フォロンの世界」とでも言うものが一貫して感じられたのです。

 展覧会の構成は「空想旅行案内人」のコンセプトでまとめられていて、

プロローグ 旅の始まり

第1章 あっち・こっち・どっち

第2章 なにが聴こえる?

第3章 なにを話そう?

エピローグ つぎはどこへ行こう?

 というもので、それぞれのテーマにふさわしいものが展示されています。なかには「世界人権宣言」の中の挿絵原画というような政治色の強いものも含まれていたりしますが、空想的な絵でメッセージの生々しさはオブラートに包まれてるような効果があります。

 フォロンは有名なSF作家レイ・ブラッドベリの「火星年代記」等にも挿絵を描いていたりするのですが私が読んだ早川文庫版ではフォロンの挿絵ではなかったと思うので、ちょっと見てみたい気もします。

 

 「フォロン」というと分からない人も、絵をみると「ああ、あの絵か」と思う人がたくさんいると思うので、上のリンクで興味を持たれた方は是非ご覧になると良いかと思います。映像作品や彫刻もあって、面白いと思いました。