(「僕の黒い背中は、ときに『幼稚園児の服みたい』とも言われますが、『怪傑ゾロのマント』と言ってほしいなあ」と背中は黒い毛のビーグル犬まろさんオス10歳)

 

 1935年生まれの名優、アラン・ドロンさんが8月18日に88歳の生涯を閉じました。

私(66歳)の若い頃と言ったら、「ハンサムな男優」と言ったらアラン・ドロンが代表と言われるくらいに人気がありました。フランスでは同世代のジャン・ポール・ベルモンドの方が人気があるとか当時から言われていたけれども、日本では絶対にアラン・ドロン。1970年代、ほぼ同年代のイタリアのジュリアーノ・ジェンマとか、アメリカのロバート・レッドフォードとかもハンサムと言われていましたが、でもハンサムな俳優と言ったら日本ではやはりとにかくアラン・ドロン。1970年代にできたダーバンというブランドもアラン・ドロンをCMに起用して一躍有名になって、当時フランス語なんて全く知らない自分には「ダーバン、セレレガーンス... ムニャムニャ...」って何言ってるのか全く分からなかってけれども、アラン・ドロンさんが宣伝するだけでなにやら素敵なものに思えてきたものでした*。

 

*D'URBAN, c'est l'élégance de l'homme moderne. ダーバン、それは現代の男の優雅さ

 

 ドロンさんが亡くなって、その死を伝え業績を伝える記事を多く目にしたのですが、「『太陽がいっぱい』のドロン」みたいな伝え方ばかりが目立って、なんだかちょっとモヤモヤしてしまいました。

 確かに1960年制作の「太陽がいっぱい」が出世作であって、私もそれをずっと後でテレビで見たし、パトリシア・ハイスミス原作、ルネ・クレマン監督、ニーノ・ロータの音楽のサスペンス映画、なかなか良くできてる作品、ではあるのです。でも、いつまでもそのドロンさんの役者としての初期の頃の作品、「太陽がいっぱい」ばかりが一番の代表作のように言われるのもどうなんだろうな、と思ってしまいました。確かに名作ではある...のだけれども。陰のある主人公、ラストのシーンなど見事、ではあるのだけれど...なにもそれだけではない。

 

 一般的にはむしろ変かもしれないけれど、私の中で一番素晴らしいアラン・ドロンの作品と言うと、絶対に「アラン・ドロンのゾロ」で、この作品のドロンさんが一番、カッコいい、スカッとする清々しい主人公でした。これ以降もジョージ・ハミルトン主演やアントニオ・バンデラス主演のゾロ映画が作られていますが、それと比べても段違いに爽やか。

 メキシコのどこかのロケ地なのか或いはスペインのどこかか知らないけど昔のスペイン領メキシコの雰囲気漂う太陽の光が燦燦と注ぐ明るい土地で颯爽と馬に乗り建物の上で剣をふるうゾロ、ゾロが剣を左右に素早く動かすと、ゾロ参上を表す「Z」の印が。軽快な主題歌**とも相まって、見るものをワクワクさせる映画でした。ヒロインのオッタビア・ピッコロも日本人好みの可愛さ。当時、私は高校の部活動でフェンシングもやっていたので、西洋剣術のチャンバラシーンは大好きと言う影響も大きくあったのかもしれません。当時は「三銃士」「四銃士」(1973年、1974年、ともにマイケル・ヨーク主演)も公開されたりして、私は「アラン・ドロンのゾロ」も公開されたら映画館にいそいそと足を運びました。当時は西洋剣術/フェンシングはとてもマイナーなスポーツで、それからほぼ半世紀の後に日本のフェンシング選手がオリンピックで金メダルを含む沢山のメダルを獲るなんて想像もできないことでした。

 

**ゾロのテーマ Zorro is back:Youtubeでも直ぐに見つけられますから、是非聴いてみてください、本当にキャッチ―でゴキゲンな主題歌です!

 

 さて、「アラン・ドロンのゾロ」、深刻なところなんてほぼほぼなくて明るい太陽のもとで陽気なゾロが大活躍するという娯楽作品ではあるけれども、ドロンさんが亡くなって過去の作品など名をあげられているのだから、これも是非、強く挙げて欲しいなあと思っていたのです。でも、なかなかそうならずにほぼ無視された形なのがちょっと残念です。

 「アラン・ドロンのゾロ」、いわゆる真面目な「名作」とは必ずしも思われなさそうな「娯楽」アクション映画ではあるけれども、「快傑ゾロ」という、ジョンストン・マッカレーの小説(1919年作)を原作とする沢山のゾロ映画の中では確実に爪痕を遺しているし、「比較的暗めの役の印象が強いアラン・ドロン」というのをひっくり返す映画だと思います。興味を持たれた方がいたら、是非、ご覧になってください。