(「僕は衣替えはしませんが、毛は季節によって生え変わるみたいです」とビーグル犬まろさんオス9歳)
昔の中学生は6月1日が衣替えの日だった記憶があります。
昔と言うともう半世紀も前の話になるのですが、当時は中学生も高校生も詰襟(つめえり)の学生服というのが全国的に普通に制服とされていて、その襟の内側にはプラスチック製のカラーを装着していたものでした。だから首はプラスチックのカラーの固い感触があり、時には痛く感じました。プラスチックのカラーが割れたりすると特に痛かった。そうした詰襟の学生服の下には普通に長袖のワイシャツを着ていました。
詰襟の制服は、首のところがきちっと合わさるようになっていたので、普通は左右から合わせて着こなしていました。暑くても、窮屈でも。詰襟の制服と言うのは、首がだらしないと、たとえば襟をぴちっと合わせなくして、一番上のボタンをはずしてしまうだけでも、限りなくだらしない、不真面目な不良生徒のような印象を周囲に与えてしまうというものでした。それを逆手にとってわざわざ首周りをだらしなくして、「自分は真面目な生徒ではない」というアピールをするような輩もいたものです。今だと、女子高生であまり勉強のデキなさそうな子達がわざわざスカート丈を短くしているようなものに近いかもしれません。いや、スカート丈を短くしているのは単に「おしゃれ」に見られたいだけか...
そういえば、昔の詰襟学生服が主流だったころは、わざわざ学生服を大幅に改造して着ていた生徒たちがいたそうなのですが、田舎の中学校なのでそれは現物としては見たことがありませんでした。もしもそんなのがいたら職員室に呼び出されて殴られていたみたいな感じだったかもしれません。
さて、その衣替えの日が過ぎれば詰襟の学生服を着なくてもよくなるのですが、それまではお約束のように着ていないといけなかったし、特にエアコンが効いてる部屋でもなかったので、ひなたの席だと本当に結構暑いのでした。今の子達は、ブレザー型の制服が普通みたいで、その点は少し羨ましい気がします。
私が会社勤めするようになった頃はまだまだ「クールビズ」なんてものはなく、1970年代の終わり頃に「省エネルック」という半袖の背広に開襟シャツという妙な格好のものを政府主導で広めようとしたけれどもやはりカッコ悪かったので流行らず、まあまあ「クールビズ」とかいってネクタイしなくてもいいとか、上着を無理に着なくても良いとかなった2000年代までには随分、時間がかかりました。ただ、いまでも「上着を無理に着なくてもいい」、というのは微妙なところもあって、お客さんに会う場合は上着を持参して、訪問直前に着て、会議室に入って「まあお楽に」とか言われて初めて上着を脱ぐ、みたいなところだってあるのではないでしょうか。
私の会社勤めの初期の頃は、私は上着を着たり脱いだりするのは面倒くさいということと、それに上着を脱いだ時に既にワイシャツが汗びっしょりだから上着を脱いだらかえって汗臭い臭いが広がってしてしまうのではないかという心配もあって、夏でも上着を着っぱなしにしていました。家に帰ってくると水をがぶ飲みしたものです。
男性社員はことほどさように服装に気を使って暑いのも我慢しているのに、女性社員はその気になれば涼しい服装をしても特に叱られるわけでもなく、当時は随分と羨ましいなあと思っていました。日本は「女性差別がある」みたいなことを国連の機関とか言いますが、女性のが優遇されていることなど沢山あるのになあとも。
よく、「人を見かけで判断するな」とは言うのですが、やはり相手に対して「しっかりしてる人」という印象を与えるような服装の方がなにかと印象は良い、信用にもかかわるなとも思います。男性の場合は。
ただ、私の経験上、その規則に当てはまらないものがあって、それは「学問の世界の住人達」です。
いわゆる研究者、大学の先生とか研究所の人たち等だったらバリッとしたスーツを着ていなくても、夏だったらポロシャツとかTシャツとか開襟シャツとかアロハでも、そんな楽な格好をしていたとしても、或いは実験中とかで作業着姿だったとしても、それでも人はその人のことをだらしない人、信用に足らない人と思うことはありえません。結局、外面より中身が重要、いまさら外面をとりつくらなくても、その人が個人として優秀なことは分かってますよ、と言う場合には楽な格好も許されるという訳で。
その伝で言えば、芸術家とかもそういうものですね。優秀なスポーツ選手とかもそうでしょう。まあ、「おしゃれ」したい人はそれなりにするでしょうけれども。
今は私も単なる「可愛いビーグル犬に引っ張られて散歩するジジイ」なだけで、「正しい勤め人のファッション」とかいう価値観から全く外れたところに生きていますが、その価値観の中で生きていた時期は、なんだかんだ言って「日常的に背広を着なくて良い、楽な格好ができる職業」は特に夏は羨ましく思っていたのを思い出します。それでも一方、昔着ていたちゃんとした舶来の生地の良い背広と靴でビシッと決めて外を歩いてみたいとも思うこともたまーにあるから、なかなか複雑です。