→61話へ
奥へと進んでいくと急に開けた場所に出た。
そこは、ドーム型の空間になっていて、所々天井部分に穴が空いている。そこからは外の光が差し込んでいて、地面には草の生えている場所もあった。
「この辺りかな?」
「そうねえ」
「とりあえず探してみましょう」
「しかし、ワシらでは『ハテナシ草』がどんなものか分からんぞ」
キットのように薬草に詳しい訳でもないアレスたちは、どうしたものかと頭を悩ませる。と、
「仕方ない。ちょっと働くか」
キットが再び目を覚まし、ドイルの背中からそろりと降りた。
地面に足を着けると、骨折していた方の足をトントンと軽く足踏みし、大丈夫だと分かるとニカッと笑った。
「すげえ、治ってる!」
「優秀な神官さんで良かったわね」
「えっ?」
今更ながらに、そこにリィナがいることにキットが驚く。
「リィナ!?」
「なによ」
「何でここにいるんだ?」
「何でって……」
リィナが言葉に詰まったのを見計らうと、すかさずドイルがフォローを入れた。
「お前が戻らないって聞いて、心配してついてきたんだ」
「そっか……。って、俺、どれだけ倒れてたんだ?」
「最低でも3日は経ってるでしょうね」
「3日!? マジか……」
セオの言葉に驚くキットだったが、その横で不機嫌な顔をしているリィナには全く気付いていない。
アレスは苦笑いすると、キットの頭をポカリと叩いた。
「イテっ!」
「ったく、心配させやがって。ガウルじいさんや村の人も、みんなお前の事心配してんだぞ?」
「……悪かったよ」
キットはバツの悪そうな顔をすると、素直に謝罪の言葉を口にした。
「ほら、リィナにも」
アレスが促すと、キットは頭をかきながらリィナに向かい合った。
「心配かけて悪かった」
「べ、別にいいわよ。でも、叔父さん達にはちゃんと謝りなさいよ。叔父さんたら、『自分が探しにいく』って聞かなかったんだから」
「うへぇ。帰ったらどやされるかなあ?」
キットが情けない顔で言うのに、リィナがクスッと笑った。
ようやくリィナに笑顔が戻った事に安心しながらも、キットに対して素直になれない妹分に、アレスもドイルもやれやれと首を降った。
「それにしても、どうして一人でこんな所に?」
セオが尋ねると、キットは照れ笑いを浮かべた。
「いや、実はさ。ある人を助けるために……」
「ある人?」
「ああ。ルコダの街の――」
そこまで言いかけて、キットはハッとした表情になる。
「おい、なんだアレ?」
「えっ?」
キットが指差した方を見ると、そこには巨大な植物が生えていた。
「花?」
しかし、その花は見たこともないような毒々しい色をしていて、とても『愛でる』ような代物ではなかった。
「あれがハテナシ草か?」
「バカ、違うよ!」
顔をしかめて言うアレスに、キットが即答する。
セオが袋の中から本を取り出し調べ始める。と、その手がピタリと止まった。
「あれは……『悪魔の花』です!」
「悪魔の花?」
「なんか、ヤバそうな名前ね」
「植物系の魔物の中でもかなりの強敵です。出来れば余り刺激をしないで、目的の物だけ持ち帰りましょう」
「わ、分かった。キット、ハテナシ草ってどれなんだ?」
アレスが尋ねるとキットが地面を指差す。
「アイツの足下にある、アレだ」
「えっ?」
見ると、悪魔の花の根本(?)部分に、小さな青い花をつけた草が生えている。
「あんなのどうやって採るんだよ!?」
「近付いて採るしかないだろ」
「近付いてって……」
アレスは改めて悪魔の花を見る。薄明かりの中にある毒々しい姿は、見るだけで士気が下がってくるようだ。
「む、無理……」
「ったく、情けねぇな。それでも勇者かよ。ヘタレは相変わらずか?」
「なっ……! い、行くよ! 行けばいいんだろ?」
アレスは半ばやけくそで悪魔の花に近付いていく。
そんな後ろ姿を見て、キットがペロッと舌を出した。
「ったく、発破掛けやがって」
ドイルが苦笑いしながらキットの頭を小突いた。
「へへっ。アレスのやつ、ああ見えて負けず嫌いなとこあるからな」
「ホント意地悪よね、キットって」
「バーカ。勇者様を奮い立たせてやったんだろ?」
「もう……」
調子を取り戻したキットには、誰も口では勝てそうにないようだ。
ゆっくりとした足取りで近付いていくアレス。悪魔の花にじっと視線を合わせながら、慎重に歩みを進める。
近くに行って分かったのだが、悪魔の花はそこに〝生えている〟わけではなかった。
2シャール(メートル)以上ある茎部分の根本は、地面に埋まってはいなかったのだ。
その代わり、うねうねとうねる触手のようなものが生えている。
「う、動いてる……?」
そろりと上を向いたアレスと、悪魔の花の花弁部分が向き合う。
「!」
一瞬固まるアレスに、悪魔の花は嘲笑うかのようにその花弁の中心を開いた。
その中にはギザギザに尖った歯らしきものが見える。
「ギャー!」
悲鳴を上げ逃げるアレスに、悪魔の花の触手が伸びる。
足を絡め取られたアレスはそのまま地面に倒れこんだ。
「ぐっ……!」
「アレス!」
仲間たちが駆け寄ろうとするが、もう3体の悪魔の花が現れた。
「やべぇ……」
「お前のせいだぞ。きっちり方つけろよな」
「他人事みたいに言うなよ」
げんなりするキットにドイルがニヤリと笑う。
「手を貸してやる。その代わり、この前の砥石、少しまけろよな」
「ちぇ、分かったよ」
キットとドイルが剣を構え悪魔の花に向かっていく。
「あ、待って!」
その後からリィナも続いた。
「私達も行きましょう。彼らだけでは無理でしょうから」
「もう、仕方ないわね」
「まあ、アレでこそアレスじゃがな。ホッホッホ……」
「笑ってる場合ですか?」
「フフッ。じゃあ行きましょう」
リディアたちも武器を構えると、悪魔の花との戦闘に加わっていった。
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間を開けないと言っておきながら、結構開いてしまいました(汗)
このところ仕事が忙しく、残業や休日出勤をしていたら、とても書く気力が出ませんでした。
でも、ようやく更新です。
二組のパーティーの活躍、楽しみにしててくださいね(^ω^)