マン・オン・ワイヤー 原作:Man on Wire | まろんぱんのあれ

マン・オン・ワイヤー 原作:Man on Wire

監督:ジェームズ・マーシュ
製作総指揮:ジョナサン・ヒューズ
原作フィリップ・プティ
音楽;マイケル・ナイマン
字幕翻訳:石田泰子


ストーリー
 後に大道芸人になるフランス人のフィリップ・プティは権力を軽蔑しており、通ったが5個の学校を辞めさせられていた。また、スリやストリートジャグリングの罪で、500回以上の逮捕歴があった。そんな彼は、16歳で始めて綱渡りを行い、17歳でツインタワー建築計画を雑誌記事で知り、ここを綱渡りすることを夢に見るようになった。徐々に作られていくツインタワーに、プティ自身も1971年にパリのノートルダム寺院、1973年にシドニー・ハーバー・ブリッジと経験を重ねていきます。アメリカのニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任する前日の1974年8月7日、もちろん無許可で、前代未聞の地上411m、地上110階の二つのビルの綱渡りにチャレンジしていく。そして45分間かけて8往復した後、フィリップ自ら綱から降り不法侵入と治安紊乱行為で逮捕された。当時の人々は「史上、最も美しい犯罪」と呼んだ。このワールドトレードセンターの綱渡りを行うまでの話を当時の映像や写真、現在の彼らのインタビュー、再現VTRを用いた長編ドキュメント映画。
第81回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品。

まろんぱんのあれ-マン・オン・ワイヤー

 ドキュメント映画であってドキュメントっぽくない作品。インタビューの会話を軸に、その当時の写真や動画、はたまた再現VTRを用いてすすんでいきます。再現VTRは、会話から思い浮かべるイメージを壊さないようにぼやけたイメージで作られております。話のテンポなどが素晴らしく、ドキュメントを見ている気がしませんでした。何か大きな犯罪を起こしにいくのでは?って思わず疑ってしまう展開。綱渡りをするためには、勿論一人ではできません。そんな仲間たちとの葛藤や決裂もあり、スリリングな展開に想像を掻き立てます。綱渡りのドキュメントだし、もっと単純なストーリーかと思っておりました。しかし、良い意味で期待を裏切られた作品でした。一人の夢を、その夢を一緒にみた仲間たちのドキュメント映画。


 今年で60歳のプティ、最初よく喋る方だなって思っていました。不思議なことに、だんだんと彼が若返って見えてきました。目をきらきらさせ、その当時のことを最近のことのように喋るプティ。ワールドトレードセンターの綱渡り後に、アメリカ人はWhy Whyと何度も聞いてきたそうです。それに対してプティは、「理由がないから素晴らしい。」と。命の危険、許可を得ないでしたことなので、捕まるのは確実な行為をしたのに、こう答えるって凄いとは思いませんか?無許可の綱渡りに対して、「確かに犯罪行為だ。でも卑劣じゃないし、むしろ夢を与えてくれる。」と彼は芸でみんなに夢を与えたいと。素晴らしいことではないでしょうか。 それを否定するのは簡単。大人だから否定?でも考えてください、子供の頃はだれだってもっていた感情ではないでしょうか。大人の作ったレールを考えず自分がしたいことをするって。否定する人は、もしかしたらそんな彼を羨ましく思い嫉妬しているだけではないでしょうか。熱く語っているプティを見て胸が熱くなってくる。彼のした行為よりむしろ彼の輝きを見た映画でした。
プティは最後の方で言います。
「人生は、エッジを歩いてこそ意味がある。」

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 ちょっと残念だったのは、このチャレンジに伴って必要だった資金について語られていなかったこと。準備にニューヨークに8ヶ月費やしたりしたそうですが、ニューヨークの道端でストリートジャグリングなどを行いながら、自分で工面したそうです。そういった地道な部分をもうちょっと入れてくれれば、もっと主人公を身近に感じられた気がしました。またプティは1990年に、赤坂にあるミカドビルのオープニングを記念したイベントで日本初の綱渡りも行っております。


結論(私の勝手な解釈)
 理由なき行為。これって母の愛に近いものなのかもしれません。無償の愛。彼はみんなを喜ばせたい、そんな思いからの行動。だからこそ、みんなの気持ちを突き動かし感動を与えた。子供だとおもったプティが実は母的な気持ちで、暗くなった世の中に明るい話題を伝えたかったのだと。