「それとこれとは別だと思う。叔父さん、投資は応援なの。ただのお金儲けじゃないのよ」



言葉がそう告げると、叔父さんは「手厳しいね」と照れくさそうに笑った。



しかし、その瞳の奥には言葉が今まで気づかなかった、穏やかで強い光が宿っていた。



「わかっているよ。言葉の言う通りだ。……これを見てくれるかい」



叔父さんが本棚の奥から取り出したのは、何冊もの分厚い大学ノートだった。



表紙には年代が記され、角はどれも擦り切れている。



言葉が恐る恐るその一冊を開くと、そこには驚くべき光景が広がっていた。



「これ……叔父さんが書いたの?」



ノートには、びっしりと手書きの文字が並んでいた。



ある企業の決算報告から読み取った数字、



新製品の評判、



その会社が社会にどんな価値を提供しようとしているか。



新聞の切り抜きが丁寧に貼られ、



その横には「この社長の理念には共感できる」



「この技術は10年後の日本を救うはずだ」といった叔父さん独自の考察が、誠実な筆跡で刻まれている。



それは一攫千金を狙う博打打ちのメモなどではない。



まるで、子供の成長を記録する育児日記のように、



一歩一歩、時間をかけて何かを育てようとする

「職人の記録」だった。



「……叔父さん、ずっとこうやって、企業を見てきたの?」



言葉の胸に、静かな震えが走る。



自分が想像していた「投資」のイメージが、



この古びたノートの束によって塗り替えられていく。



叔父さんの人生は、言葉が思っていたよりもずっと、誠実で温かなもので満たされていたのだ。