少年舞妓・千代菊がゆく!―許されぬ想い、かなわぬ恋 (コバルト文庫)

なんとなぁく物語が佳境に向かっているなと感じさせる巻でした。亜紀ちゃんに、従兄の宏章に、それぞれ思いもよらぬ決断をするんですから。宏章に関しては前作から行動的な一面をみせているんですが、だんだん切なくなってきてしまいます。続編ではどうなってるんでしょうか。

この巻で美希也が「チャリ」って単語を使うんですけど、ああこの子が千代菊と同一人物なんだと考えるとあの可憐な少女の口から「チャリ」って単語が飛び出してくるのを想像して微笑ましかった。


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★既読の【奈波 はるか】作品感想★

・今までに読んだ「奈波 はるか」さんの作品一覧はこちら ⇒ ★奈波 はるか


それは宇宙人のしわざです 竜胆くんのミステリーファイル

ファッション雑誌の廃刊に伴いオカルト雑誌に移動させられた雛子の最初の仕事は「宇宙人にさらわれた」人にインタビューをすることでした。
その過程でUFOオタクの高校生・竜胆くんと出会い宇宙人が絡んでいる<かも>しれない謎に振り回されることになります。
華やかな世界から一転、怪しさ爆発な職場に配属された雛子。
バカバカしいと思いながらも「宇宙人の仕業かもしれない」という竜胆くんの期待に応え、あちこち駆け回ることになります。


個人的には宇宙人は存在していると思っています。
こういう言い方をするとトンデモ人間に分類されそうで怖いですが、少なくとも宇宙<人>でなく宇宙<生物>なるものは存在すると思います。
人間は宇宙の全てを知り尽くしているわけでもなく、未だに新たな惑星が発見されているのだから、地球人が探ることのできない位置に存在していてもおかしくない。
人の形をしているのか、ブタみたいな形をしているのか、クラゲみたいに透明なのか、微生物なのか。
明日地球の空に未確認飛行物体が飛んできても不思議ではないと思っている思考の持ち主です。


テレビでやっているようなUFO番組は全く信じていません。
あくまでバラエティとして楽しんでおり、宇宙人に浚われただとか、子供を産んだとか、ロズウェル事件やNASAの陰謀説などは問題外。
Xファイルに関しては部分的には的を得ているかもという説もあったりでドラマとしては大好きな作品です。

まぁこういう考えを持っていたのでこの作品の主人公にちょっと共感する部分もありました。
竜胆くんほどの知識と熱量をもってすれば嘘を嘘と見抜け、本物を本物として認識することも可能であると確信できます。


UFOにさらわれたかもしれない人たちに出会う第一話、
ミステリーサークルと遭遇してしまったかもしれない第2話、
未確認生物と交信してしまったかもしれない第3話。


全ては宇宙人のしわざかもしれないという突拍子もないものをテーマにしていながら、作品としては非常に地に足がついたものでした。
不可思議は不可思議のままで終わらないところが良く、説得力もあります。

短編形式で進む話ですが、特に大変素晴らしかったのが3話(最終話)。
思えば竜胆くんが宇宙人を信じ始めたのは幼少期に無線で木星にいる何者かと交信したことがキッカケでした。
ですから最初のスタートがこの最終話にきっちりと繋がって感動と切なさを感じます。
はっきり言って3話のレベルが高すぎました。この話だけでも短編映像化してもいいくらい素晴らしかった。
宇宙は広く可能性は無限なんだと信じたくなる、そんなお話だったのです。


当たり前ですが、宇宙人がいるのかいないのか、この作品で答えは出ません。
そんな悪魔の証明誰にもできっこありません。
だから信じたくなるのです。
竜胆くんにピコピコとリモートコントロールされているかのような雛子と、外には出たくないがUFOと雛子にだけは興味を示すイケメン高校生の二人が未知の何かと遭遇する瞬間を。

できればシリーズ化希望です!!

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「雪冤」 大門 剛明

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雪冤 (角川文庫)


十五年前、まだ大学生であった八木沼慎一は二人の男女を惨殺したとして殺人の罪で逮捕され死刑判決を受けた。慎一の父親悦史は息子の無実を信じ、誹謗中傷を受けながらビラ配りなどを通じて無実を訴える日々を送っていた。しかし息子の手記が雑誌に投稿されるや否や、メロスと名乗る人物が自分が犯人であると名乗り出てきたのです。


被害者側、加害者側、それぞれ思うところがあります。どちらの側からの視点も丁寧に描かれ死刑の是非を問う重い作品進行になっています。

被害者側は大切なものを奪われた立場から死刑を支持するも、メロスと名乗る真犯人の存在により少なからずの動揺を覚えます。

加害者側、慎一の父親は息子が無実だと信じていたのでメロスの登場には歓喜します。怒りはありません。長い年月の間にそういったものは薄れ、ただただ自首したいと名乗る犯人に感謝の気持ちさえ沸いてくるのです。けれど、今すぐに自首できないと言う犯人。


小説の中でメロスは友の為に約束を果たします。しかし、この作品に登場するメロスはどうなのでしょう。死刑を間近に控え、いつ執行されてもおかしくない状態の慎一の為に本当に真実を話してくれるのか。

そして父親と面会しようとしない息子。彼は何を想い日々を生きているのか。

常に綱渡り状態の中、ハラハラとした展開が続きます。

一向に正体の見えないメロス。増え続ける死刑執行人数。再審請求をするべきなのか、静観するべきなのか。父親の立場に立てばたまらない気持ちだと思います。


雪冤とは無実の罪をすすぎ晴らすこと、の意だそうですが、ぐさりとくる言葉なのです。

たくさんの人間が「雪冤」の言葉を胸に閉じ込めているのです。


人間描写がとても巧く登場人物の黒い心情までも余すことなく描かれていました。その中で慎一だけが一点の曇りもなく気高い心を持ち得ていたのが不思議です。彼の起こした行動、心情が理解できません。けれど、人の心に響く歌を歌う人間なのです。あの瞬間、その場にいた人々の心を打ち震わせることができた人間なのです。彼は神だったのでしょうか・・・深い作品でした。

人間の心とはここまで崇高で美しくなれるものなのかとそう感じました。


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