器用だと言われるけど、
私は、
誰よりも不器用な気がする。
手先が割と器用な方だから、
みんなきっと、
勘違いしてしまうんだろうなと思う。
今日、
大学の後輩だと最近知った方に、
◯◯先生って、緋奈さんと同期ですか?
いや。
2学年上の先輩で、サークルが同じだったんです。
そう言った私の心はなぜかざわついた。
そうなんですね。
僕、〇〇先輩にすごくお世話になって。
先輩は偉い先生にスカウトされて、今は違うところに行ったんですけど、ずっと自分のやりたいことを極めてる方で…
その先はもう何を言ったか覚えてない。
話しに出てきた〇〇先輩は、
かっこよくて、
大学首席で、
冷静で、
穏やかで、
漫画の主人公かと思うぐらい、
すごくいい先輩だった。
さらには、
卒業後に夢まで叶えて、
まっすぐに遠くまで進んでいっているのか。
そう思ったら、
フリーズしてしまった。
一体私は何をしてきた?
大学の成績なんて、
下から数えた方が早くて、
いろんな科目を勉強したって、
好きじゃないことは何ひとつ頑張れなかった。
頑張ったってできなくて、
ひたすら謝るから許してほしい、
と思ったぐらいだった。
奨学金の問題で、
私は、
行きたかった大学院を諦めて、
就職して、
大好きな細菌の分野だけではとにかく頑張った。
そこそこの場所まで行けたのに、
その先が進まなくて、
いまだにこの場所にいる。
そんな自分が許せなくて、
クサクサする日もある。
そんな矢先、
先輩は、
夢にまっすぐに、
高いとこまで、
進んでいたんだ。
それを知った。
先輩の努力からしてみたら、
そうなるべくして、
そうなっているのだ。
私は、
努力してもここなんだ。
頑張れることですら、
ここなんだ。
そんなことを、
叩きつけられたような気がした。
サラブレッドと野生馬みたいに、
あからさまに違いがあるんだよ、
と、言われてるようだった。
完璧主義な私は、
一つ崩れると、
全てがダメなんだと思ってしまう。
今日も、
ガラガラと、
今までの努力が崩れ去るような音がした。
誰も言っていないのに、
そう受け取ってしまっただけ。
ただそれだけなのに、
崩れた心を見ないように、
崩れた心に蓋をした。
強気に見えるのは、
見たくないものを削ぎ落として、
なかったことにするから。
馬鹿みたいに弱いよな。
でも、
弱さを認めたら、
もう立っていられなくなる。
そんなことを思いながら帰り着いてテレビをつけたら流れてきた、
Mrs.GREEN APPLEのSoranjiという曲。
ちっちゃな希望を、
なんとか信じて、
信じてほしい。
涙がこぼれた。
確かに、
大切な人たちが私を認めてくれたことを、
信じてきたから、
ここまで来れた。
なんかそんな気がして、
少し胸が温かくなった。