『それじゃ・・・次は私の番だね・・・・』


麻里絵はいつになく神妙な面持ちで始めた・・・



2年のとき、みんなで海に旅行に行ったじゃない、格安バスツアーで。

車中1泊現地1泊で伊豆白浜!!ってやつ。みんな覚えてるよね?

あのときのバスが通った道覚えてる?

みんな寝てたかな・・・?

なんて名前の山だか知らないけどさ、すごい山道走ってたのよ。

私は寝つけなくて、ずっと窓の外を見てたんだけど・・・

1時くらいかな?前方におばあちゃんが見えたのね。

道は細い一本道だし、山の中だから街灯はほとんどないし・・・

車のヘッドライトに照らされて、腰の曲がったおばあさんが1人で歩いてたの。

『わぁ!ギリギリだなぁ・・・当たらないでよ~!』と思ったよ。

だって、バスが避けるだけの道幅ないところだもん。

私の座ってた左側は山肌、右側は崖だったし・・・


でも、道幅って私が考えてたよりもあったみたいで、おばあさんを追い抜けたんだけど・・・

ほっ、っと一息ついてさ、そこからなんかすごい違和感感じて・・・・

なんだろう??と思って頭ん中で今の場面を思い出してみたのね。


バスのヘッドライトにおばあさんの姿が浮かび上がって・・・

バスがどんどんおばあさんに近づいて・・・

夜道をノンビリ歩いてるおばあさんを追い抜いて・・・・

おばあさんは何もなかったかのように歩き続けてて・・・・

って、そこまで思い出してから急に身体が硬直した。。。。


私たちの乗ってたのは観光バスだったんだよね。

身長168センチの私が窓の外に立っても中にいる人間からは私の頭が見えるか、見えないかくらいでしょ?

でも、そのおばあさん・・・・頭が私の顔の横にあったの・・・・・・・

ぶつからなくて良かった・・・・って思ったとき、確かにおばあさんが歩き続けてるのを確認したんだもん。

普通だったらバスのすぐ横を歩いてる人なんて絶対見えるわけないじゃない。


そういう時ってさ、なんか怖い想像しちゃうんだよね。

振り返ったら猛スピードで走って来てたら・・・・とか。

だから振り返らなかった。

後ろに顔があっても嫌だしね。。。

隣に座ってた優奈を何度も呼んだのに、全然起きないし・・・・


・・・で、その後ね。

なんだかドキドキしちゃって余計眠れなくなって・・・・

ずっと窓の外見てたのよ。

風景は相変わらず山道。

明かりはたまにある街灯とバスのヘッドライトだけ・・・・

そういう単調な風景って眠くなりそうじゃない?

そしたら・・・山肌にポツンと街灯があってね、その下にお墓があったの。

3つくらいだったかな?

墓石が置いてあるのよ。

まぁ、地方って畑の真ん中にいきなり墓石があったりするじゃない。

だから、そんな感じで作ったお墓なのかと思ったの。

そしたら・・・そこに人がいたのよ。

『お墓参りかな??』なんて思ったりして・・・

さっきおかしなおばあさんを見たばっかりなのに、私ってばのんきだよね・・・

夜中にお墓参りする人なんているわけないじゃない。

全然不審に思わなかったの・・・・・

上から街灯が照らしてる状態で、墓石がホントに名前読めるくらいまで照らされてて・・・・

お墓の為に街灯を立てたのかと思うくらい、スポットライトみたいに照らされてたのよ。

だけど・・・

そこにいた男の人・・・なんでか男の人だと思ったんだよね・・・・

真っ黒で顔も何も判別できなかった・・・・・


その人を見た瞬間、本能的にヤバイ!と思っちゃって・・・

後は目をつぶって山を抜けるのを待ってたんだけど・・・


あの山、あれから行ってないの。

伊豆に行くときは必ず電車で行くようにしたんだぁ・・・・

みんなも・・・気をつけてね・・・・・・・・





ふっと蝋燭が消え、また闇が濃くなった。



『早苗、次の話お願いね!』

次は私の番・・・・

心霊体験なんてしたことないのに・・・・・




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