正直に言って・・・この話は怪談とは言わないと思う。

どちらかというと、不思議体験って感じかな。

あ、あんまり期待しないでね・・・(汗)



えっと・・・何から話したらいいのかな・・・

これは夢の話なの。

もちろん、空想とか妄想じゃなくて・・・寝てるときに見た夢ね。


小さい頃から、私の夢によく出てくる人がいるの。

男の人なんだけど・・・いつも顔がわからないのよ。

顔がわからないんだけど・・・なんでか同じ人なのはわかるんだよね・・・


最初にその人の夢を見たのは・・・

小学生のときかな?

夢の中で花畑にいるの。

どこの花畑かわからないんだけど・・・この世のものとは思えないくらいキレイなトコロ。

そこでね・・・パパにある人を紹介されるの。

パパの知り合いの人。

お互いに『よろしく~』って言って、握手するのよ。

すごく大きな手で・・・指が細くて長くて・・・・暖かい手。

その手を握った瞬間に目が覚めたの。

目が覚めたとき・・・ホントに今まで人の手を握ってたみたいな感覚が残ってたんだぁ。。。

あまりにリアルな夢だったから、一瞬自分がどこにいるかわからなくなるくらいだった。


次にその人の夢を見たのは・・・

中学に入るちょっと前。

あの花畑で・・・2人で手をつないで散歩してるの。

そうるすのが当たり前みたいに仲良くね。

そしたら、その人がいきなり立ち止まって私のオデコにキスしたんだ。

その時はそこで目が覚めた・・・

オデコには人の唇が今まで触れてたみたいな感触。

手には今まで握り合ってたみたいな感触・・・

なんなんだろ・・・と思った。

まぁ、考えても答えは出ないし・・・すぐ忘れちゃったんだけどね。


その次は、中学卒業するちょっと前かな?

見たこともない部屋で抱き合ってるの。

それでそのまま・・・キスしたんだけど・・・

私、その頃ファーストキスもまだだったんだ。

けど、人の唇が触れた感じ。

口に入ってきた舌がどんな感触か・・・ものすごくハッキリ感じられた。

さすがにちょっとおかしいんじゃないかな?と思ったけど・・・

何度思い出そうとしてもその人の顔はわからないまま・・・

その頃、私も忙しかったし・・・すぐ記憶の彼方に行っちゃったけど・・・・


その人の存在を思い出さなくなって数年。

高校の時にまた同じ人が出てくる夢を見た。

怖いことに・・・ベッドで抱き合ってるのよ、裸で。。。

彼の肌の感触、回された腕の感触。

彼の胸に顔を埋めた暖かさまでリアルに残ったまま目が覚めた。

もちろん、初体験もまだだよ。

男の人の裸の胸の感触なんて知るはずのない時だよ。


「ちょっとおかしいんじゃないか?」と思って・・・

麻里絵に相談したんだよね?


麻里絵は・・・「それは悪魔に取り憑かれてるんだよ!」って笑い飛ばしたけど・・・

笑い事じゃないよね・・・

顔も知らない人とベッドインだもん・・・


でも・・・もしかしたら『運命の恋人』なのかなぁ?って、都合よく思ったりして・・・

付き合ってる人とね、そういう状況になった時に、やっぱり考えちゃうんだよね。

でも・・・今まで彼と同じ感触の人に出会った事がないの。

最後に彼の夢を見てから何年も経ってるのに、忘れられないの・・・

知らず知らずのうちに"彼"を探してるんだよね。

いるはずない!ってわかってるのに・・・

彼と違う人だと違和感がものすごくて・・・

抱きしめられてても、『私の居場所はここじゃない!』って思っちゃうの。。。






もし・・・私がみんなの知らない人と結婚したら・・・

探してた"彼"を見つけたんだ!と思ってね^^








私は一息置いてから、一気に蝋燭を吹き消した。

さっきからこの教室に蔓延してるよどんだ空気を振り払うかのように・・・

でも、ここまで来たら引き返せない。

進むしかない。なんでかわからないけど、強くそう思ったのだ。





さぁ、次は誰が話す??

周りを見渡すと・・・おずおずと希が手を上げていた。


じゃぁ希、次はよろしくね。


私はちょっと肩の荷が降りた感じで希を見た。

『それじゃ・・・次は私の番だね・・・・』


麻里絵はいつになく神妙な面持ちで始めた・・・



2年のとき、みんなで海に旅行に行ったじゃない、格安バスツアーで。

車中1泊現地1泊で伊豆白浜!!ってやつ。みんな覚えてるよね?

あのときのバスが通った道覚えてる?

みんな寝てたかな・・・?

なんて名前の山だか知らないけどさ、すごい山道走ってたのよ。

私は寝つけなくて、ずっと窓の外を見てたんだけど・・・

1時くらいかな?前方におばあちゃんが見えたのね。

道は細い一本道だし、山の中だから街灯はほとんどないし・・・

車のヘッドライトに照らされて、腰の曲がったおばあさんが1人で歩いてたの。

『わぁ!ギリギリだなぁ・・・当たらないでよ~!』と思ったよ。

だって、バスが避けるだけの道幅ないところだもん。

私の座ってた左側は山肌、右側は崖だったし・・・


でも、道幅って私が考えてたよりもあったみたいで、おばあさんを追い抜けたんだけど・・・

ほっ、っと一息ついてさ、そこからなんかすごい違和感感じて・・・・

なんだろう??と思って頭ん中で今の場面を思い出してみたのね。


バスのヘッドライトにおばあさんの姿が浮かび上がって・・・

バスがどんどんおばあさんに近づいて・・・

夜道をノンビリ歩いてるおばあさんを追い抜いて・・・・

おばあさんは何もなかったかのように歩き続けてて・・・・

って、そこまで思い出してから急に身体が硬直した。。。。


私たちの乗ってたのは観光バスだったんだよね。

身長168センチの私が窓の外に立っても中にいる人間からは私の頭が見えるか、見えないかくらいでしょ?

でも、そのおばあさん・・・・頭が私の顔の横にあったの・・・・・・・

ぶつからなくて良かった・・・・って思ったとき、確かにおばあさんが歩き続けてるのを確認したんだもん。

普通だったらバスのすぐ横を歩いてる人なんて絶対見えるわけないじゃない。


そういう時ってさ、なんか怖い想像しちゃうんだよね。

振り返ったら猛スピードで走って来てたら・・・・とか。

だから振り返らなかった。

後ろに顔があっても嫌だしね。。。

隣に座ってた優奈を何度も呼んだのに、全然起きないし・・・・


・・・で、その後ね。

なんだかドキドキしちゃって余計眠れなくなって・・・・

ずっと窓の外見てたのよ。

風景は相変わらず山道。

明かりはたまにある街灯とバスのヘッドライトだけ・・・・

そういう単調な風景って眠くなりそうじゃない?

そしたら・・・山肌にポツンと街灯があってね、その下にお墓があったの。

3つくらいだったかな?

墓石が置いてあるのよ。

まぁ、地方って畑の真ん中にいきなり墓石があったりするじゃない。

だから、そんな感じで作ったお墓なのかと思ったの。

そしたら・・・そこに人がいたのよ。

『お墓参りかな??』なんて思ったりして・・・

さっきおかしなおばあさんを見たばっかりなのに、私ってばのんきだよね・・・

夜中にお墓参りする人なんているわけないじゃない。

全然不審に思わなかったの・・・・・

上から街灯が照らしてる状態で、墓石がホントに名前読めるくらいまで照らされてて・・・・

お墓の為に街灯を立てたのかと思うくらい、スポットライトみたいに照らされてたのよ。

だけど・・・

そこにいた男の人・・・なんでか男の人だと思ったんだよね・・・・

真っ黒で顔も何も判別できなかった・・・・・


その人を見た瞬間、本能的にヤバイ!と思っちゃって・・・

後は目をつぶって山を抜けるのを待ってたんだけど・・・


あの山、あれから行ってないの。

伊豆に行くときは必ず電車で行くようにしたんだぁ・・・・

みんなも・・・気をつけてね・・・・・・・・





ふっと蝋燭が消え、また闇が濃くなった。



『早苗、次の話お願いね!』

次は私の番・・・・

心霊体験なんてしたことないのに・・・・・




次のお話へどうぞ

実は・・・あたし、小さい頃から『見える子』だったんだ・・・・

人には見えないものが見えるって事に気付いたのは・・・・・・・・

そうだな、いくつだったか忘れたけど小さい頃おばあちゃんと一緒に買物に行ったときだったと思う。


家を出るとね、すごく大きい木があるの。

一番低い枝でも当時のあたしが手を伸ばしても届かないくらいのね。

そこの結構上の方の枝にね、白い着物着た女の子が座ってたのよ。

年頃は・・・私よりも小さいくらいだね。

今でも鮮明に覚えてるよ、白い着物・白い帯。

下駄の鼻緒だけが真っ赤だった・・・

もちろんおばあちゃんに言ったよ。

『ばあちゃん、あんな高いところに女の子が座ってるよ。どうやって上ったのかなぁ?すごいね!』って。

うちのおばあちゃん、ちょっとヤバいくらいにあっちの世界を覗ける人でさ・・・・

あたしが指差した枝を見上げてソッコーで顔色変えて・・・

『絶対に見たらいけないよ!見えた事を誰にも言ったらいけないよ!!』って・・・

自分が何を見てるのかなんてわからないよ。

でも、おばあちゃんがここまで言うなら、あたしは見えたものを口に出したらいけないんだなって思った。


まぁ、それからは見えても何も言わないし、おばあちゃんも『見えた?』って聞かないし・・・

お互い暗黙の了解っての?

2人で目を見合わせて視線下げる~みたいなw


まぁ、おばあちゃんが一緒にいるときは怖い思いはしなかったんだけどね。

怖い思いをする前にあたしの頭抱えて下向かせてくれてたからね。


困ったのはうちの母親。

あの人、創作怪談が大好きなんだよね。

小さいときから母方の実家に行くと、従兄弟達を集めて毎晩怪談大会。

つっても母親が1人で喋って、子供達はみんなで小さくなってただけなんだけど・・・


その夜もみんなで母親の創作怪談を応接間で聞いてた。

向かいあったソファの後ろに大きい窓があってさ、母親が窓に向かった真ん中。

あたしはその隣、これはあたしの特等席。

後はテーブルを囲んだソファに従兄弟とかが座ってた。


その日の怪談は母親得意の『シクシク』って話。

継母にいじめられて殺された娘の怨念が~って話なんだけど、もちろん母親の創作。

最後に血まみれの女の子が向こう側から歩いてくる・・・・ってオチなんだけど。

なんかね・・・いつもと風景が違うんだよね。なんかすげぇ居心地悪いの。

向かい側に従兄弟が座ってて・・・その後ろが窓で・・・・

いつもと同じ場所に座ってるのに、なんか見える風景が違う。

でもさ、怪談の最中、1人で顔あげて周りを見渡すのは怖いじゃん。

目線だけ上げて、心地悪さの原因探ってたんだよね。


そしたらさ・・・窓の向こうになんか見えるのよ。

最初は遠くてわからなかった。

ぼぉっと白い影みたいなのが小さく見えた。

その影・・・どんどん大きくなってきてさ・・・・

ハッキリ人型とってきたんだよ・・・・


人の形を取ってきた影・・・・

あたし・・・目を逸らせなくてさ・・・・・・・・・

バカみたいに口開けてずっと見てた・・・・

どんどん影が近づいてきて・・・・

『ああ~、女の人なんだな・・・』って思って・・・・・

その女の表情まで読み取れるくらいに近づいたときに気付いたんだけど・・・・・














血まみれだったんだよ・・・・





ヤバぃ!と思ったね。

普通、血まみれの女が人の家の敷地に無言で入ってこないでしょ?

またいけないものを見た!と、とっさに気付いたよ。

そのまま目をそらして・・・

『あたしは何も見てない。あたしは何も見えない!』って呪文みたいに唱えてた。

もう怪談なんて耳に入ってこないよね。

意識は窓の外の女に釘付けだもん。


そのとき、我慢の限界に来てた従兄弟が一人泣き出した。

彼は別に何かが見えてたわけじゃなくて、ただ怖かったみたいだけど。

そんで、そのままお開きになったんだけどね。

従兄弟の1人が電気をつけたとき、思い切って窓の外に視線を向けてみたら・・・・


その女、どこにもいなかったんだよね・・・・













あたしの話はこれでおしまい。

蝋燭消すよ!

次、言いだしっぺの麻理絵な!!




また一つ蝋燭が消え、みんなを照らしてた明かりが一つ少なくなった。

麻理絵・・・自信満々な顔してるけど、どんな話をするんだろ・・・・



次のお話へどうぞ