夕方、急いで彼の入院している部屋に

向かう事にした。


その前に、何を手土産で持っていこうか?


花か?


フルーツか?


確か彼はまだ、喉が痛いので何も食べられと

言っていた。


だから、暇つぶしになる、彼の好きな漫画本

の新作がでたはずだから買って行ってあげよ

うと思った。


けど、漫画本が1冊だけだと、すぐに読み

終わってしまうと思ったから、私のお気に

入りの少年漫画を初めて大人買いして持っ

て行く事にした。


普段は漫画本などもったいないと思い

漫画喫茶で、読むだけだったので、こんなに

大人買いをしている自分にちょい酔いしれて

いた。


彼は絶対に喜んでくれるはず。


なんだが、久々に彼に会える嬉しさで、

ワクワク、ウキウキしながら病室に向

かった。


確か彼の話によると、4人部屋の廊下側

にいるとの事だった。

だから、一生懸命に重い漫画本を両手に

抱えながら、必死に彼がいる4人部屋を

探した。


なぜ私が病室番号を知らなかったのか?


それは、彼にサプライズをしたかったから。


4人部屋をみていると、見覚えのある

黒髪のロングヘアーの後ろ姿が見えた。


もしや、妹のひかるさん?


今にも心臓が出そうな程、ドキドキしている

自分に気付きながら、もう一度、勇気を出し

て、覗いてみると、、


やはり、ひかるさんがいた。


しかも、二人で漫画本を読んでいる。


手にしているのは、私が今買ってきた

新作の漫画本だ。


なんだが、一瞬で力がなくなった。


こんなドラマみたいな事があるのか?


私は悲劇のヒロインなの?


もうどうでもよいや。


彼をこっそりみただけで、声もかけずに

静かに病室を去った。


なんだか、涙がでてきた。


この涙はなんの涙だろう。


自宅に戻って、大人買いした漫画本をすぐに

あけ、煎餅を食べながら読みまくった。


あれ?なんだか、満足。


やっぱり漫画本は心のオアシスだな。


ありがとう。


『鋼の錬金術師』


個人的に好きなセリフは、


『立って歩け 前に進め あんたには

立派な足がついてるじゃないか』


そうです。


私には立派な足がついてます。