父の思い出と‥ | Chez Nous 

父の思い出と‥

最近父のことをよく思い出します。
私の父は10年前に他界する前は小さなクリニックの医者でした。
私が海外旅行を楽しんでいた頃、父は
「パパは飛行機に乗ったことがないんだよ。それに西は広島までしか行ったことがない。はははっ」
と笑って教えてくれました。

父のささやかな楽しみと言えば、週末に本屋に行って頼んでいた本を受け取り、カフェで本を読んで過ごすか、家の書斎で音楽を聴きながら本を読むことだったのではないでしょうか。
ゴルフや外でお酒を飲むわけでもなく、私が免許を取るまで、うちには車というものもありませんでした。
父はなにより、家が大好きでひとりで過ごす時間が大好きだったように思います。

と言うのも、毎日が人と接する仕事で、父が落ち込んだ雰囲気を漂わせているときには、決まって重篤な患者さんを抱えているときだったので、静かに過ごす時間が必要だったのかもしれません。

その当時、私は、父に対して尊敬の念というものをそんなに持ってはいませんでした。
もっともっと、人と関わって、新しい世界を知ればいいじゃない。と反発さえ覚えていました。
でも今になって、父の生き方が好きに思えるようになりました。

父は、欲のない人間だったな~と思い出すと同時に、大好きなことをして、人と比べることのない幸せを得ていたんだと思えるようになったのです。

時々、信号待ちをしているときに、隣に止まった高級外車の運転手さんの怒った顔を見かけます。派手なエンジン音をふかして、怒りを表現しているかのようです。
何と競争してやっきになっているのだろう。
目に見える、となりの人と競争する必要はない。自分の中の満足感をどうやって感じるかなのだ。

私は父のように達観はできないけれど、父を思い出しながら時々、そんなことを考えてみたりするのです。