考察ブログ第一回は、劇団四季新作ミュージカル『ゴースト&レディ』です。

 

目次 

1. はじめに

2. 原作と舞台の比較

 ①   オープニング

 ②   生霊

 ③   Something Four

 ④   アレックスとエミリーの存在

 ⑤   エンディング

3. 考察

4. 結論

5. おわりに

 

はじめに 

 

 劇団四季の新作ミュージカル『ゴースト&レディ』にドハマりしましたので、原作と舞台の比較から見えてくることを考察してみました。バリバリにネタバレしておりますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。

 

 

 

原作と舞台の比較 

 

 原作と舞台で異なる点のうち今回取り上げるのは、オープニング、生霊、Something Four、アレックスとエミリーの存在、エンディングの5つです。

それぞれどのように異なるのか、具体的に見ていきましょう。

 

 

  ①    オープニング

原作

 黒博物館に「かち合い弾」が見たいという老人が訪ねてくる。「かち合い弾」を見た彼の中からグレイが現れ、学芸員に「かち合い弾」の背景を語る。

 

舞台

 照明が急に消えて真っ暗になると、青白い光がゆっくり浮遊する。青白い光が動きを止めると、グレイが現れる。人間(観客)に自分の姿が見えていることに歓喜した彼は、いつか人々に見せるために作ってきた処女作の幕を開ける。

 

 

  ②    生霊

 

原作

 人間の負の感情の権化。形状や大きさは人それぞれだが、化け物の形をしており、人々の頭上にくっついている。他者に負の感情を抱くと生霊は大きくなり、他者の生霊を殺そうとする。

 グレイ曰く、劇を見ている間だけは生霊が見えず皆静かである。尚、グレイが剣を振る対象はこの化け物。

 

舞台

 人々の負の感情が膨らむと影が大きく膨らみ、次第に化け物の形に変化する。フローの家族が彼女のクリミア行きに断固反対する場面と、軍医長官がフローに立ち塞がる際に登場する。

 グレイが彼らの胸に剣を振るうと、化け物の形をした影が崩れるように消える。

 

 

  ③    Something Four

 

イギリスの童謡マザーグースに登場する、花嫁が幸せになるために身に着ける四つの贈り物。「なにか一つ古いもの、なにか一つ新しいもの、なにか一つ借りたもの、なにか一つ青いもの」

 

原作

1.     グレイの過去

駆け落ちを約束した女優のために用意した、ルビーとエメラルドのブローチ、レースの真っ白なハンカチ、ブレスレット、サファイアの指輪

 

2.     エンディング

   天寿をまっとうしたフローにグレイが渡した、新しい医療体制と看護方法、自分自身(グレイ)、青空、かち合い弾

 

舞台

1.     フローのフィアンセであるアレックスがフローのために用意した、代々伝わるブローチ、レースの手袋、母に借りた真珠のネックレス、青い宝石(サファイアだったか?)の指輪

 

2.     天寿をまっとうしたフローにグレイが渡した、自分自身(グレイ)、新しい看護法、ランタン、青空

 

 

  ④    アレックスとエミリーの存在

 

原作

 フローにフィアンセが居る記述や、彼女の部下であるエミリーの存在はない。

 フローが暗殺者に狙われた際は、グレイから教わった防衛法で暗殺者を倒している。

 

舞台

 フローが暗殺者に襲われているところを目の当たりにしたアレックスが彼女を助ける。フローはアレックスに復縁を迫られるが、グレイに惹かれていることを自覚し、彼を振る。

 アレックスは終盤、看護の仕事に自信をなくしていたエミリーと結婚する。

 

 

  ⑤    エンディング

 

原作

 かち合い弾の背景を語ったグレイは、学芸員に「かち合い弾」を貸してほしいと頼む。グレイは学芸員に、夏の夜の夢の名台詞を言い残し博物館を後にする。

 彼は、天寿をまっとうしたフローに永遠の別れを告げるべく、彼女のもとに向かう。

 

舞台

 天寿をまっとうしたフローに永遠の別れを告げたグレイは、観客に向かって夏の夜の夢の名台詞を言う。天国のフローに舞台が上演できたことを報告し、しばらくの沈黙の後、一人つぶやくように「不思議な絆」を歌い、客席から退場する。

 しばらくすると、フローの魂が舞台奥からランプを持って登場し、彼女がランプをかざすと舞台、客席の天井に吊られた照明が灯り、無数のランプで劇場内が照らされる。

 

(↑開幕前の舞台)

 

 

考察 

 

 ①オープニングと⑤エンディングの違いは、原作漫画を舞台にするための変更だろうと考えられます。原作漫画は「黒博物館」というシリーズものであるから、黒博物館に展示されている「かち合い弾」を借りにグレイが訪れる、という構成になっていますが、舞台はシリーズものではないため、黒博物館と学芸員は登場させなかったのではないでしょうか。

 しかし、シアターゴーストであるグレイが、100年以上舞台を見続けた知識を活かしてフローとの物語を舞台にして我々観客に披露する、という舞台の構成は原作のグレイも行ないそうな行動であるし、劇場を上手く使用した構成になっていると感じました。

 Something Fourの「借りたもの」は、原作漫画の「かち合い弾」から舞台ではランタンに変更されています。ランタンをグレイがフローに手渡す場面は劇中の至る所で登場しますが、グレイが最後にフローに渡す伏線の役割だけではなく、ナイチンゲールが「ランプの貴婦人」と言い伝えられていることに絡めているのだろうと考えられます。

 舞台のフィナーレでフローの魂がランタンを掲げた合図で、天井に無数のランタンが現れる演出は、フローのように誰かに見送られて天に召されたものたちの魂のように見えました。

 原作はフローとグレイの絆がラストを飾っていますが、舞台ではフローとグレイだけでなく、生きとし生ける者すべての絆を表し、我々に訴えかけるラストになっていると感じました。

 

 比較して特に面白いと思ったのが、③Something Fourの相違です。まず、人物の違いをまとめます。原作では一回目が生前のグレイから女優へ、二回目はグレイからフローに渡すものになっており、二回ともグレイが渡す側になっています。舞台では一回目はアレックスからフローへ、二回目はグレイからフローに渡すものになっており、二回ともフローが受け取る側になっています。また、原作はグレイが一回目は女優に渡せずに終わりましたが二回目はフローに渡せており、舞台でフローは一回目はアレックスから受け取らず、二回目はグレイから受け取っています。

 次に、Something Fourに使用された物の違いをまとめます。一回目に登場するSomething Fourは原作と舞台で若干相違していますが、どちらも高価な「目に見える、触れられるもの」であり、二回目は「目に見えず、触れられないもの」です。(グレイのことをフローは見えますが、天国に一緒に行けない、と言っているため、ここで与えた「古いもの」はグレイ本人というよりも、彼がフローを思う気持ち、ということだと思います。)

 上記のことから、原作ではグレイがフローに出会うことで幸せになれたことを示す手段である一方で、舞台ではフローの運命の相手がグレイであったことを示す手段となっていると考えられます。また、飛躍した考察かもしれませんが、原作・舞台ともに一回目に登場する「目に見える、触れられる」Something Fourは相手に届かず、二回目に登場する「目に見えず、触れられない」Something Fourは相手に届いていることから、目に見える幸せよりも、後世の人々に残る意思や他者を思う気持ちといった目に見えない幸せのほうが大切である、というのがこの作品のテーマなのではないか、と考えられます。

 

結論 

 

 原作以外の文献を調べたわけではないし、舞台と原作の内容を比較しただけであるため大層な結論が出る訳ではありませんが、原作漫画を舞台化する上で、原作をそのまま舞台にするのではなく、舞台の良さを発揮できるように改変を加えつつ、原作の中にあるテーマを受け継いでいるからこそ、とても満足度の高い舞台に仕上がっているのだろうな、と感じました。

 

 

おわりに 

 

 アメブロ初投稿では、ゴースト&レディの原作と舞台を比較しました。フローの生き様にグレイの過去、感動的なラストなど、原作と舞台を往復することで何度も感動に浸れる作品になっております。

 まだどちらも拝見していない方は勿論のこと、どちらか一方を見たという方も、是非、原作漫画と舞台の両方をご覧になってみてください!