第10章 アメーバのごとく(実践編)



さて、ある程度教材は揃えた。
手元にあるのは以下のとおり。


●辞書、字典

角川新字源(初版)
三省堂新漢和辞典(第3版)
漢検四字熟語辞典(第1版)
漢字音符字典(増補改訂版)


●問題集

・2010年度版漢字検定ステップアップ30日(実務教育出版)
・漢字検定1級・準1級(高橋書店)
・漢検1級分野別精選演習(協会)



音符字典と精選演習は書店で購入。
そのほかはネット古書などで入手した。


今やっている作業は、四字熟語字典の暗記と、問題集の学習。


当然、知らない漢字が大量に出てくるので、ノートに記録しておかないと忘れてしまう。


困ったのはそのノートの記録方法。


たとえば国字の勉強中、椚(くぬぎ)という漢字が登場。


この漢字を単に覚えるだけでは勿体ない。

情報量をどれだけ増幅できるか、そこに筆者の狙いがある。


それと言うのも、ネット体験談によると

「問題集が全て解けるようになってやっとスタート地点」

「(協会の)精選演習を完璧に消化しても、試験では5、6割しか得点できない」

などなど、やる気を失うようなコメントが多数ある。

つまり尋常一様な学習では1級の壁は超えられないので、何かしらの方法論が重要になる。


ピンポイントで無駄の無い勉強を薦める人もネットにいるが、A型の筆者には無理。


ただ合格すればいい、というのは入学・入社試験や資格試験の話。


辞書を凌駕するような知識を得ることが検定試験の先にある大目標である。



では具体的に上記「くぬぎ」というトピックについて筆者の学習の一例を披露する。


まず国字の椚

門が「内と外を別ける」つまり「区の木」から「くぬぎ」なのだ、という成り立ちで記憶に残す。

さらに「くぬぎ」と訓読みする漢字は

栩、橡、檪、櫪と沢山ある。

これらは熟語で覚える。


栩(ク)から
栩栩然(くくぜん)…喜ぶようす


橡(ショウ)から
橡皮樹(しょうひじゅ)…ゴムの木のこと


檪(レキ)から
樗檪(ちょれき)…役に立たない木


櫪(レキ)から
老驥伏櫪(ろうきふくれき)という四字熟語。
四字熟語字典でもシッカリ確認する。

ついでに音符字典で同じ音符の漢字
轣・瀝・靂・癧(すべて音読み「レキ」)を抑える。



なんとなく五種類の「くぬぎ」の表記があること自体、日本語はおかしいとは思うが、ともかくトピック「くぬぎ」からこれだけ拡散させる。


この段階でもノートには纏めにくい。



さて、一方で四字熟語の勉強をしていると、たとえば

跼天蹐地(きょくてんせきち)

というのに出会う。

蹐(ぬきあし)
跼(せぐくま-る)

この跼から跼躅(きょくちょく)


何やら漢和辞典の「足偏」の漢字ばかり引いてるから、ついでに近所の漢字、たとえば「躊躇」を覚える。



更に、ここで新たに登場した「躅」から

躑躅(てきちょく)

これ、なぜか「ツツジ」とも読む。


また、跼躅(きょくちょく)を使った故事

「騏驥の跼躅は駑馬の安歩に如かず」


…ん?
「驥」?
たしか、老驥伏櫪…


ここで「驥」の字が先の「くぬぎ」と合流する。

つまり拡散した情報が別件と交わることで無意識に復習出来ている。



1級の難しさが少しは分かっていただけただろうか?


こうした情報をノートに残すと紙面はグチャグチャになる。

A型の筆者にはツラいが、まあ人に見せる物ではないから良しとする。



頑張れ俺様!