おととい見た夢
とあるバーで二人の男が話しをしていた。
片方はミック。
ミックは相手の欠点を散々あげつらっていた。
お得意の言葉の暴力だ。
相手はいかにもさえない社会的弱者な風貌の小男。恐らく無職だろう。
ミックは男を散々からかいへこませると、その場を去ろうとした。
するとドアの前に男が立っていた。
「そこにいると邪魔だよ」
「……」
横をすり抜け外へと出る。
「今日もクソしてねようっと」
ミックは自宅に向かって歩きだした。
ミックは自宅へと向かう途中の田舎道を歩いていた。周りには人子一人いない。
すると後ろから人間の気配がする。
振り向いたミックは、先ほどバーのドアですれ違った男が走って来るのを見た。
ミックは本能的に逃げた。
しかし立ち止まる。
「なんで逃げる必要がある……」
男はミックの目の前で立ち止まると、こう言った。
「やあ、少し話がある」
ミックはいぶかしんだが、相手は何かしてきそうな気配はない。
「なんの用だ。俺は忙しいんだ」
「お前がからかっていた男、さっきトイレで首を吊っていた」
「……だからなんだってんだ」
「死んだよ」
「俺が殺したんじゃない」
「悪かったとは思わないのか?」
「さすがにくたばったとなりゃいい気はしないな。俺にどうして欲しいんだ」
「俺の話を聞いてくれ」
「お前は奴のダチなのか?」
「まあそのようなものだ」
「それは悪かった。でもあいつの精神状態じゃいずれああなっていたさ。俺が何か言わなくてもな。ダチならもっとフォローしてやればよかったんだ。じゃあな」
「待ってくれ。いい話がある。保険金だ」
「何だと?」
「奴の生命保険だ」
「俺には関係無いだろ」
「分けてもいい。受取人は俺なんだ」
「何で俺に分ける」
「その代わりある仕事をしてもらいたい」
「何の仕事だ」
「それは今言えない」
「どっちにしろやる気は無いね」
「じゃあそこで一杯奢るから話を聞いてくれ」
ミックは段々と違和感が湧き上がって来るのを感じた。
こいつが言ってることは支離滅裂。
話を引き伸ばそうとしているように思える。
そう、まるで時間稼ぎをしているようだ。
これは何かマズイな。
ミックはすぐさま背を向け逃げ出した。
どうやら相手はミックに追いつけないようだ。そのまま距離を開け、ついには相手は見えなくなった。
安心したミックは立ち止まって息をつく事にした。
「……待て」
「!」
奴が走ってくる。
ミックはまた走った。
しかし相手の体力は底なしなのか距離は詰められていく。あいつ、走る速度が全く変わらないのはなぜだ。
「畜生!」
ついに追いつかれたミックは男に腕をつかまれ、その場に立ち止まった。
「話を聞いてくれないか」
男は言う。
「なんだ、おまえっ!」
「まあ話を聞いてくれ」
「お前はいかれてるっ!」
「あんたに話があるんだ」
「クソ!」
その時ふとミックは空を見上げた。ミックは驚愕した。
背中に羽根の生えた悪魔のような化け物が向こうから飛んでくる。全身紫色で
耳が異様に長い。
「え……」
ミックはもう残っていないと思われる体力を振り絞って走り出した。予感は当たった。
何とか街中まで逃げたミックは絶望した。
誰も歩いていない。
「誰か助けてくれ!!!!」
叫ぶが反応は無い。
すると酔っ払いがフラフラ歩いているのが目に付いた。
「おい、おっさん、助けてくれ!」
酔っ払いは虚ろな目でミックを見つめ言った。
「三百円くれないですかね、タバコを買うんですよ」
「クソ」
こんな酔っ払いに頼るなんてバカげていた。
「ミック、話を聞いてくれ」
追いつかれたミックは悪魔に見下ろされていた
「俺は何もしていない!犯罪者じゃないぞ!お前のダチの事は悪かった!許してくれ!」
「ミック。あんたの目だよ」
「何?」
「ミック、安心してくれ。ちゃんと代わりを入れてやるから……」
その瞬間、怪物が手を伸ばしミックの目玉をえぐり取った。
すばやく男が義眼をミックの眼窩にはめ込むと、ミックはフラフラとダンスを踊るようにして地面に倒れこんだ。左右の義眼をグリグリと動かしながら。