聞いてくれ
全国、どこの修行寺にも、俺みたいな奴はいると思う―――早く言えばよろず調達屋だ。注文の銘柄の煙草、もしそっちが好みならハ○シュ、息子や娘の誕生日を祝う一本のブランデー、その他色々を密輸するわけ……むろん、常識の範囲内でね。むかしは常識なんてばかにしてたんだが。
奴の欲しがってる物を聞いたのは一ヶ月前の事だ。奴は8ギガバイトマイクロSDを欲しがっていた。深夜アニメをワンセグで録画しておいてバッチリってわけだ。
で、俺は送るとき伝票の品名の所になんて書こうか迷っていた。煮干し?逆に怪しいだろ。髭剃り?奴は自分で買える。怪しい。
それで俺はそのまま「マイクロSDカード」って書いて送った。奴が棚業(あえて業)の時、携帯で寺と連絡を取っていたのを見ていたから、何とでも言い訳できるだろう、と考えたのさ。もしもの時のためのデータ保存用だとか。それにどっちにしろ中身の検査はあるはずだ。あんだけの恐怖政治下ならな。
しかし奴は捕まった。運が悪かった、ともいうが、やっぱり偽装はしたほうが良かったらしい。断じて嫌がらせではない。しかもあん時はバイト先のガキ二人が家に来ていてよく寝てなかったんだ。正常な判断力を失っていても仕方ないだろう?しかもそのガキ二人は翌日から付き合い始めたんだぜ?俺が腹出して酒浸りになって唸ってる間にあのクソガキどもは……。仕方なかったんだ。あの時はジャムでバカルディ飲んで家に帰ってスミノフを三本空にした上、クソガキどもが飲み残したチューハイ二本、さらにビール一本だ。飲めないんだったら飲むな。ガキども。そして俺は俺の昔話を爺さんのように語りだし、そして何を話しかけても「イエー」と答える物体へと成り下がったんだ。クソだ。あいつら、「クソがき帰れ」と何度言っても帰らないから居座られる寸前だったんだぜ?わが友ゴキ蔵クンの出没に心から感謝だ。だから俺は今度からはこういう事に決めた。「俺の部屋でやったら殺すぞ」