監獄病棟 | 解脱

監獄病棟

そのとき、煙のなかに、おやじを見た。全身血にそまり、プルオーヴァーシャツは裂けて。いつもは細い目が、かっと見ひらかれている。ほとんど同時におやじとわたしは膝をつき、割れた石の上に腕をおき、仕切る相撲取りのように対峙した。おやじは何かどなろうとするかのごとく、口をあけた。だが、そこからどっと出てきたのは、血であった。(Uボート)

 俺は頭痛によって目覚めた。これは歯か?歯医者は、でかい虫歯なんで再度来やがれシット。とのことでバファリンを飲んで就寝、できず、バファリンを飲みまくる。三十分で効果が切れるが、あんまり飲むと具合悪くなるんで我慢、できず痛みにのた打ち回りながら一時間位寝る。そして起きた途端吐き気をもよおし吐。それでもとまらず吐。吐。吐。黄色い液体を吐。なんも出なくなっても吐。アクションだけは見せる私の胃袋。激しい頭痛は立っていられない程で、唯一吐いている時のみ痛みが和らぐ。これはマジで死ぬかも、と思ったのも束の間、次はゲリ。吐、ゲリ、吐。いかん、水を飲んでしまった。胃袋に再度吐きだす物を与えてしまった。との後悔も遅く、ブリッ、ゲロッ、ブリッェ、ゲロッイェ。生まれて初めて死をうっすら意識しつつ、タクシーを呼ぶ。病院に着くと、座るところがネエ。壁に寄りかかり、吐き気を抑えつつひたすら壁を見つめ、待つ。よほど重病人に見えたのか、おばさんが席を譲ってくれる。受付をすました俺はありがたく着座。ありがとう。でも吐いたらすまん。そしてベッドに寝かされる。「吐きたいんですが」と言うと洗面器。間髪いれず吐。そこから先は覚えておらず。気付いたら病室で点滴を打たれていた。相変わらず頭イテエ。変な注射を打たれると二時間ばかり頭痛が止まる。その間になんとか寝る。看護婦の点滴の換え方が雑。一気に注射液押し込むんじゃねえ!血管広がるだろが!とキレられるわけもなく、イタイッと非難をするが根性が足りんのか、五月蝿いガキだわね!って感じで完璧スルー。シット!プッシィ!プッシィ!メシは不味い。残しまくると、好き嫌い多い?との事。心の中で、いえ、ジャガイモが生煮えなだけです。食えないことはありませんが、消化悪そうなんで辞退しました。俺、点滴につながれてるんであんまトイレ行けないじゃないすか。風呂にも四日入ってないし。頭痒くて気が狂いそうなんでメシどころじゃないっす。と、思いながらも、食欲がまだ出ません、と病人ヅラで言い放った。五日目、フロー、フロー、アタマー、カイー、シヌー。しか考えられなくなる。前から何度フロに入れてくれ、言っても絶対に入れてもらえない。脱走するか・・・。と本気で考えてた所、洗面所で頭だけ洗わせてもらえる。クソッタレのヤブ医者は超絶ファットマンで、ズボンのチャックが開いていた。腹が邪魔で下半身が確認できないらしい。または単純に閉められんのか。ギターの話で盛り上がる。頭痛はだいぶ退いており、そろそろ帰してもらえませんかねー、との事で、一時帰宅。七月の昼下がり、眩しい日差しにうっとりしつつ、家に戻りフロに入る。真夏の日陰でコーヒーをすすりながら午後の洋画を見る。しかし地獄に戻らなければならん時が近づき、病室という名の塹壕に入る。そして二日後退院。入院費40万。保険で引かれて10万くらい。病名はたぶん髄膜炎。