自宅に向かっているとばかり思っていた私はパニックになった。

「どこに行くの?」

Tさんは、無言になった。

車は停まる気配もなく、着いた場所はラブホテルだった。

既婚者、それも上司にラブホテルに連れて行かれて、私は緊張と恐怖で一杯になっていた。

逃げなければ、どうにかして逃げなければ。

ただ、それだけしか考えられなかった。

さっきまで感じていた、怒りや嫌悪感よりも、ただ恐怖だけだった。

連れて行かれたのは車から直接部屋に入るタイプのラブホテルで、助けてくれそうな人は、周りには誰も居ない。

車から降ろされて、腕を掴まれたままの私は、完全に逃げるタイミングを失っていた。