上司と部下だった私とTさん。

当時、私たちの課では飲み会が頻繁で、新入社員だった私は強制参加だった。

Tさんは、私を含め4人を、いつも車で送っていてくれた。

会社から1番近かった私が、1番最初に降りる。

それだけだった。

でも、ある日・・・

何故か、1番遠い先輩を先に送っていった。

最後に車に残ったのは、私とTさんだけ。

「帰したくない。

沈黙の続く車内でイキナリ言われた時には驚きよりも怒りの方が強かった。

なんていい加減な人なのだろう。

そう思っていたのが顔にも出ていたのか・・・

私が言葉を挟む隙もなく、彼は話し続けた。

奥様の事。

不倫を望む男は大体妻の悪口を言うのは当たり前。

結局、この男も・・・

話し続けながら運転するTさん。

早く解放されたい気持ちで一杯の私が異変に気がついたのは、30分は経った頃。

先輩を送ってから、私の家まで、もう着く頃のはずなのに・・・

周りの景色は、全然知らない場所のものだった。