「頭が痛い」

 そう思ったのは、昨年(2016年)の9月下旬のことだった。

 

 それは、会社の2度目の休職から半年が過ぎた頃。

休職は、メンタル的なものが原因で、仕事がつらく感じて仕方がなくなったため、取ったものである。前回の休職開始時と比較して、比較的ひどくならない状態の時に休職に入ったのだが、休職から約4ヶ月経った7月下旬に、ある事柄がきっかけで体調を崩していた。

 何かうまく表現できないのだが、心に大きなショックを受け、抜け殻のように、何かのやる気も気力も全くなくなり、夕方に、かろうじて体の中に残っているわずかな気力で20~30分の散歩に行く以外はほぼ一日中布団の中で寝転ぶような状態であった。

 

 それが約1ヶ月半も続いた。過去に経験したことのないほどの厳しい暑さが続いた夏の終わりになって、僕はようやく少し活動が出来るようになった。活動が出来るようになったといっても、それは10時か11時頃になんとか布団から出て朝食を取り、近所のコンビニに行って漫画雑誌を立ち読みし、喫茶店に入って何のやる気も起こらずにスマホでyahooニュースとフェイスブックを1~2時間見続けるという、なんともひどい状態のものだった。

 

 無気力な状態を少し脱したのは9月の半ば。ようやく、何かをする気になった。そのときは、「司法書士の勉強」。12年ほど前に司法書士の資格取得を目指して3年ほど勉強して、仕事で挫折するごとに転職の一つの選択肢として考えていた。3月に休職した後も、時間のあるときに少しずつやっていたのだが、いよいよ資格取得に向けて本格的に腰を入れて勉強を始めようと思ったのだ。

 

 そうして、司法書士の勉強を再開できたのが16年の9月21日(水)。2,3時間ではあったが、久し振りの勉強はなかなか楽しかった。しかしその時点で体への変調の兆しが少し見え始めていたのである。

 

 9月の初旬頃から、頭皮と顔が何か無性にかゆい状態が続いていた。また、目もかゆく、目の奥が重たいような、圧迫されているような違和感があってそれがとれない状態が続いていた。さらに、眠気も強い。まあ眠気の方は、これまで約2ヶ月ほど不規則な生活が続いていたことから来る不調なのかな、とも考えたりもしながら、頭皮と顔、目の異常に耐えきれず、9月23日(金)に眼科と皮膚科を受診した。

 

 結果、目は特に異常なし、皮膚の方は花粉症の疑いであった。

 

 眼科では「眼圧が正常値ぎりぎりです」と言われて戸惑った。眼圧が高くなりすぎると緑内障という病気になる可能性があるらしい。名称だけは聞いたことがあったがどのような病気か分からず、その眼科医に教えてもらったり緑内障のパンフレットを読んだりした。どうやら眼圧が上がったりすることで、目が見えにくくなったり、最悪の場合は失明したりするらしい。

 

 まさか健康面で自分にそんな危機が来ているとは思いもよらず、動揺した。緑内障発見のための検査機器があり、不安を抱えながら検査を受けたが、幸いにも緑内障ではないとのことだった。巷のテレビやラジオ、新聞などではこれでもかというほどの数の健康に関する情報が溢れ返っており、またそれらは、いつ何時、誰の体にも発症し得るものであるが、人は、それらの病気は他人に起こるものであって、自分の身に起こり得るものであるとは露ほどにも考えていないもののようだ。

 

 まあとにかく、緑内障ではなかったということで、冷や冷やしながらもまあ安心し、ただ涙の量が少なく目が乾き気味でドライアイに近いということと、かゆみがあるということで、ドライアイ対策とかゆみ止めの目薬を出してもらった。

 

 次はその足でその眼科の向かいにある皮膚科に向かった。

 

 皮膚科では平日ということもあってか他の患者は一人もおらずすぐに診察してもらえた。その医師は顔や頭皮の状態を見ながら、「少しできものが出来ているが、何か大きな症状があるものではないだろう」とのことであった。続けて「花粉症かもしれない」とのことであった。

 

 9月のこの時期に花粉症?不思議に思ったが、秋は秋で、夏の終わり頃からブタクサと呼ばれるような草などの花粉によって引き起こされる花粉症もあるらしい。目のかゆみなんかも出ていることもあって、症状としては納得のしやすい要因だ。そんなものかなとも思いながら、炎症を抑えるための飲み薬と塗り薬を処方してもらった。

 

 余談だが、皮膚科の医師から「失礼ですが、養毛剤のようなものはお使いか?」と聞かれた。これまで長期にわたってリアップを使ってきた。医師もいい歳のおじさんだし(自分もおじさんだが)、養毛剤を使っていることに特段恥じらいも後ろめたさもないので「使ってます」と答えた。「あなたの場合、リアップなどはあまり効果がないかもしれない。AGAなどで飲み薬などを飲む治療法を試してみては」との提案を受け、「はあ」と答えたが、すでに10年ほど前か、半年間くらい試して効果がなく、やめてしまったことは敢えては伝えなかった。

 

 しかしまさか、これらの症状が、現在までに至る様々な体調不良の、ほんの序章に過ぎなかったということは、このとき知る由もなかった。