リージョナルなブランド | 渋谷で働くマーケターたちのアメブロ

リージョナルなブランド

日曜夜のNHKスペシャルは、シリーズ『激流中国』の第7回、

「訴えられたカリスマ経営者 ~ 追跡・ブランド騒動」でした。


  番組サイト

  http://www.nhk.or.jp/special/onair/071209.html


上記のリンク先にもある通り、題材として採り上げられていたのは、

中国の飲料業界のナショナルブランド「娃哈哈(ワハハ)」と、

合弁相手のフランス・ダノン社との対立関係。


要は「ワハハ」というブランド・商標の使用権に関する争いなんですが

(両者の対立関係に関してのあらましは、

 多少背景に深入りしすぎなきらいがあるもののこちらの記事 を参照)、

印象に残ったのは、このナショナルブランドに対する中国国民の愛着。


ブランドの歴史としてはたかだか20年ほどしかないとはいえ、

自国のブランドというものに対する感情というのは、こうも強いものか

と感じたわけです。

(あるいは欧米勢による経済的搾取は、一方で

 彼らに清朝末期の惨状を思い起こさせているという見方もできるでしょう)



さて、こうした印象から数珠つなぎのように連鎖的に思い起こされたのは

いささか突飛かもしれませんが、「白い恋人」の一件でした。



北海道旅行の土産物として有名なこのチョコレート菓子は、ご存じの通り、

今年8月に賞味期限偽装が発覚して以来、約3ヶ月に渡って販売を停止、

11月15日に製造再開、22日には販売が再開されています。



この11月の販売再開前後の記事見出しを追っていくと、


  「『白い恋人』 3か月ぶりに店頭に…話題性はあるけど」

                         (読売新聞、11月21日)

  「『白い恋人』 販売再開、反応さまざま あなた買う?」

                         (朝日新聞、11月21日)

  「白い恋人が再出発 3カ月ぶり全道店頭に 歓迎、不安思い交錯」

                         (北海道新聞、11月22日)


といった具合に、販売再開前は「堕ちたブランド」の復活を危ぶむような

言葉が並んでいたものの、いざ再開されると、


  「白チョコタイプに製造特化 『白い恋人』売り切れ続く」

                         (東京新聞、12月3日)


なんて状況。



確かに、北海道のおみやげといえば「白い恋人」か、

六花亭の「マルセイバターサンド」が定番ですから、

これらが北海道旅行の「象徴」として働く限り、

こういう事態も特に異常なことではないのだろうと、

はじめは感じました。


同じお菓子でもこれら二つはテイストといい、

うまく棲み分けをしているように思えるし、

特にその他には脅かす存在を見出せないこと、

そして何より、

(消費期限偽造がより致命的な問題となりうる)生菓子でないということが、

「白い恋人」の失墜を救ったのかと考えました。



しかし、実際はこれだけではなかったようです。というのも、


  「過熱、白い恋人ブーム 道民が購入、再出発応援 さらに生産拡大も」

                              (北海道新聞、11月30日)

  http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/63294.html


という記事にあるように、

「観光客だけでなく、石屋製菓の再出発を応援しようと道民が多く買っている」

(記事中より)。



つまり「白い恋人」は、

道外の人々にとって北海道(旅行)の象徴として機能していただけでなく、

同時に道内の人々にとっても愛着の沸くものだったということです。

(これは、おみやげ品にしては珍しいことだと私には感じられました)



と、ここまで長くなりましたが、このブランドのありようが、

中国国民にとっての「ワハハ」と、北海道民にとっての「白い恋人」で

似てはいないか、と思ったわけです。


(少し考えれば、中国の国民は「ワハハ」の消費者である一方、

北海道民は「白い恋人」の通常的な消費者ではない、

という差異も明らかではありますが)




以下、いまだ非常に漠とした考えではあるのですが、

「ブランド」というものはただ生産者や顧客のみによって育てられるのではなく、

それを外側から包むもの、

あえて言葉にするならば「環境」とか「土壌」といったものも、

ブランドを育むもの(そして時に守るもの)として

大きな役割を果たすのではないか、と思います。


そして、やはりリージョナルなブランドの強さはそこにあります。



「ブランド形成」には、(地理的な意味を超えた)「リージョン」の設定が

重要なのではないかと少し考えています。



<メディアマーケティンググループ 新井 俊悟>