『風船』


【川島雄三】監督が「日活」へ移籍後、、
作品を量産していた時代、、

短期間に、これだけの作品を世に送り出すのは、余程のバイタリティか天賦の才か?

この時代の映画製作関係者&役者さん達は本当に大変だったろうと思います。。。


◇ 1956年作品
監督 : 川島 雄三
助監督 : 今村 昌平
原作 : 大佛 次郎
音楽 : 黛 敏郎
出演 : 森 雅之、三橋 達也、新珠三 千代、芦川 いづみ、北原 三枝、二本柳 寛、左 幸子、高野由美、牧 真介


〈簡単なあらすじ〉

かつては天才画家と云われ将来を嘱望されていた村上春樹(森 雅之)は、実業家に転身し、今では多くの従業員を抱える写真機会社の社長となっていた。
息子・圭吉(三橋 達也)が後継ぎとなる事は確約されており、順風満帆な人生に見えるものの、何処か釈然としない日々を送っている。

圭吉は戦争未亡人の久美子(新珠 三千代)を愛人として囲っているが、結婚の意思等は全くなく父母には内緒にしていたが、小児マヒの残る妹・珠子(芦川 いづみ)にだけは久美子の事を教えてしまい、、珠子は久美子の働くバーを勝手に訪ね圭吉には叱られてしまう。。

ある日、村上家と昔馴染みの都築(二本柳 寛)は、経営するナイトクラブに圭吉を招待するが、、都築の愛人でシャンソン歌手のミキ子(北原 三枝)を紹介し、結婚を考えるなら圭吉を誘惑してみては?と興味本位に薦める。


そして、圭吉はまんまとミキ子の誘惑に堕ち、久美子との関係を解消しようと考える。

一方、村上は出張先の京都の写真店で見かけたヌード写真のモデルが、昔下宿していた家の娘・るい子(左 幸子)だと知り、家を訪ねると、既に父母共に他界しており弟(牧 真介)の学費を稼ぐ為、昼はヌードモデル、夜はバーで働いているという事を不憫に思い、以前の様に下宿部屋を借りる等の援助を始めた。

そんな時、圭吉とミキ子との関係を知った久美子は自棄になり自殺を図ってしまった。。


珠子が昼夜付き添った甲斐もあり、久美子は一命をとりとめたが、、

圭吉はそこに訪れはしなかった。。

………………………
(★ネタバレありますm(__)m)

一代で財を築いた男とその家族の物語。


家族には、厚情な父と娘、薄情な母と息子の二つにカテゴライズされ、最後までお互い相容れない関係性に終始する。


親の七光りを頼り、一向に成長出来ない圭吉、
父は圭吉を立派な人間として立ち直らせる為、会社を退職させる決断をする。。

久美子の自殺にも我関せずを通そうとする、非情な圭吉に対し、父は愛の鉄拳を浴びせた。
圭吉の頬より、父の手の方がどれだけ痛かったことか……

【三橋 達也】さん、本作ではホントに冷徹で薄情な男に徹していますm(._.)m


60歳で自ら社長職を退りぞいた父・村上春樹、、再出発の地が、昔下宿していた京都の古民家の二階の小部屋(今で言うロフト部屋…)というのもノスタルジックですね、、

妻からは、一緒には京都に行かず、息子と居残ると突き放される。。
妻が反対するのは想定内だったが、愛娘・珠子にまで反対されショックを受けてしまう。。

しかし余程、今の生活にはウンザリしていて、原点回帰したかったのでしょう、
村上は一人京都へ行き、、画家としての再出発の一歩を踏み出した。そして、下宿先の娘・るい子への恋心をほのかに覗かせている様にも見えるが、、?

優しく、情に厚い男が、価値観の違う妻と息子へのジレンマに苦しむ所を、巧みに演じた【森 雅之】さん、ロマンスグレーの憂いが、またいいですね☝




この作品は、川島監督の演出によって、純粋な父と娘の物語として完結しました。

ラストシーンでは、優しくじんわりとした感動を覚えます。★★★

揺れ動く人間の心は『風船』の様、
風の吹くままに飛び立ち、
行き着く先は誰にも分からない。

しかし、力尽きた『風船』は落下して、
原点に還っていく。。

………………………


⬆イチイチ村上家を掻き回す都築役の【二本柳 寛】さんの台詞、、
「勝つ人間の影には、いつも負ける者が控えている…」。。確かにですが、、
本作は格差社会への風刺が強く打ち出されており、キッツイ台詞や態度等に、少し萎えます。。。

⬆ミキ子役の【北原 三枝】さん、容姿抜群❗
都築に促されて``ちゃんぼつ´´の圭吉を簡単に誘惑するが、本心は?
日本人離れした、華やかな美しさです!

⬆久美子役の【新珠 三千代】さん、
弱い女の象徴、圭吉が居なければ生きて行けない……ひしひしと情念が伝わりました。冒頭から物凄く色っぽいです☝

⬆るい子役の【左 幸子】さん、弟の学費を稼ぐ為に、体を張って働く健気な女性、、ヌードになっても
「自分の外側だけ見せるだけで、(心の)中とは関係あらへん」という台詞に、、貧しくも逞しく生きる意志の強さを感じます。


⬆珠子役の【芦川 いづみ】さん、
「珠子、オッキしてから泣く人キライよ!」
ままごとの様に目が覚めた久美子を自分の子供の様にあやす…珠子の母性が、切なく見えた。

二十歳を過ぎているが、病弱だった為、世間を知らない純真な少女のまま。。母や兄からは疎ましがられるが、父のみには愛されてきた。。
孤独感を埋める手段は、人懐こく振る舞う事。。最後の姿が愛らしく胸打たれる……

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音楽監督は、お馴染み【黛 敏郎】氏、
『赤線地帯』での批判騒動があった、同年の作品ですが、、オープニングとエンディングに流れるテーマは名曲で、感動のラストシーンを見事に助長しています👍GOOD JOB❗

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いつもの余談☝

本作でまず最初に驚くのが、、主人公【森 雅之】さん演ずる役名「村上 春樹」だろう。。
偶然の一致なのでしょうか?
かの有名作家と同姓同名とは、無関係とは思えないですね……???

実は、私の名は、本作にも出演されている俳優さんの名から取って名付けたと、随分後になって母から聞きました、、
名優と同じ名前にしていただけるのは、いいのですが、あまりにも安易な決め方に、怒ってしまった事がありました f(^_^; 

ベビーブームは落ち着いたとは言え、まだまだ出生率の高かった時代なので、
命名なんかも、そんなノリだったんでしょうかね(笑)