『どん底』(1957)
凡そ二十五年位ぶりに再見しました。
当時は【黒澤映画】にハマりだした頃で、色々な作品を鑑賞しましたが、、どちらかと言うと地味な作品と分類される本作を、軽視してしまった感は否めず、、今更ながら自分の青さを恥じています…‥m(__)m
ロシア文学作家【ゴーリキー】の戯曲を、江戸時代に舞台を変え、長屋暮らしの貧困住人達のごちゃ混ぜの人間模様を、おもしろ・哀しく体現した作品。
「大家vs住人」の白熱のバトルが見物です!(笑)
◇ 1957年作品(東宝)
監督・脚本 : 黒澤 明
脚本 : 小国 英雄
原作 : マクシム・ゴーリキー
撮影 : 山崎 市雄
音楽 : 佐藤 勝
出演 : 三船 敏郎、山田 五十鈴、香川 京子、中村 鴈治郎、千秋 実、三井 弘次、左 卜全、根岸 明美、清川 虹子、東野 英治郎、上田 吉二郎、藤原 釜足、三好 栄子、田中 春男、藤木 悠、渡辺 篤、藤田山
〈簡単なあらすじ〉
江戸の場末の棟割(むねわり)長屋
大家の六兵衛(中村 鴈治郎)とその妻・お杉(山田 五十鈴)は、住人達を手当たり次第にあてこすり疎ましがられている。
お杉の妹・かよ(香川 京子)は、いつも姉夫婦から苛めを受けているが、住人からは可愛がられ擁護されていた。二人の伯父の島造(上田 吉二郎)は、下っ引きながら、博打好きでうだつの上がらない役立たずだ。
年中小言ばかりの鋳掛(いかけ)屋・留吉(東野 英次郎)と寝たきりの妻・あさ(三好 栄子)、蓮っ葉だが面倒見のいい飴売り・お滝(清川 虹子)、夢想ばかりの、ちょんの間の夜鷹・おせん(根岸 明美)、御家人くずれの殿様(千秋 実)、アル中の元役者(藤原 釜足)、人に金をせびってばかりの遊び人・喜三郎(三井 弘次)、ひねくれ者の桶屋・辰(田中 春男)、駕籠かきの熊(渡辺 篤)と津軽(藤田山)、そして気性が荒く女たらしの泥棒・捨吉(三船 敏郎)らが一つ屋根の下で貧困に喘ぎながらも楽天的に暮らしている。
そこに、お遍路の老人・嘉平(左 卜全)が現れ、この長屋に寝泊まりする事になった。
嘉平は、いがみ合う住人、一人一人の悩み事等を聞いて回り、正しい方向に導いてあげようと説得して行くと、いつしか住人達から信頼される存在になっていた。
一方で、、
お杉と捨吉の色恋沙汰は、夫の六兵衛本人までも知る周知の事実だったが、捨吉は妹のかよに惚れていて、この長屋から出て堅気になり夫婦になろうと迫っていた。
捨吉の心変わりを知ったお杉は嫉妬から、かよへの虐待がより激しくなっていき、遂にかよへ熱湯を浴びせ火傷まで負わせてしまう騒ぎとなる。
掛け付けた住人達は大家の理不尽さに怒りや憎しみが頂点に達し、、事態は混沌とする。。
…………………………(★ネタバレしますm(__)m)
混乱する長屋、、
多くの野次馬に役人や下っ引きまで集まる中…
捨吉は六兵衛を突き倒し、、
それが、運悪く致命傷となり死んでしまった。
お杉は、捨吉が殺したと回りに吹聴する。
苦し紛れに捨吉は「お杉に六兵衛を殺せと、そそのかされていた」とバラしてしまう。
それを聞いたかよは、、
二人はグルになり邪魔な六兵衛と自分までも殺そうとしているのではと、、被害妄想し正気の沙汰では無くなる。。
結果、、
六兵衛が死に、捨吉とお杉は牢屋へ、かよは行方不明、、そして嘉平はいつの間にか姿を眩ました。
その後、、
島造が大家に入り、飴売りのお滝が嫁となる。。残った住人達は、相変わらずの自堕落な生活に戻る。。
「どうせ人間なんて同じ事の繰り返しよ、朝起きて晩寝て、朝起きて晩寝て、、」
宴で、いきなりのジャムセッションが始まる❗
「こんこんちきしょう・こんちきしょう🎵地獄の沙汰も金次第🎵仏の慈悲も金次第🎵」
賑やかに盛り上がる宴!
軽快なリズムが跳ね踊り出す、阿吽の呼吸でデクレッシェンドしては、エア横笛(?)やボイススクラッチがクロスオーバーする。
最高潮に達した所に、、
殿様が帰って来て、役者が自殺したと知らされ一同ポカン。。
次々と死に行く者に辟易した遊び人・喜三郎が発する刹那的なラスト。。
「せっかくの踊りをぶち壊しやがって、馬鹿野郎…‥」
余韻皆無の突然のエンドマーク。
結局最後まで黒澤監督は彼等を「どん底」に突き落としたままだった。。
………………………………
オープニングの山の手から見下ろす寺の修行僧が「どうせ掃き溜めだ」と、崖下の長屋の屋根に、集めた落ち葉を棄てる、侮蔑を表現した描写から、長屋の住人達への差別が日常横行していた事が伺い知れますが。。
この下流階級と言われる方々…実は、割りと自由で、上流階級の人々よりも楽チンで、安酒あおって今夜は最高!なんて人生を楽しんでいる人も多かったみたいですね(笑)
それを考えると、黒澤監督が当てはめた江戸時代が、背景として物語にピッタリと合致している様に思えました。
「地獄の沙汰も金次第」とは言いますが、、
捨吉は、女たらしの泥棒らしからぬ、
かよへの純粋な気持ちが災いして「どん底」へと落ちる悲しい結末。。
「色恋沙汰もかよ次第」になってしまいました(苦笑)
とにかく、映画というより演劇の舞台を観ている様で楽しかった!
久々の鑑賞ですっかり見直してしまいました。
隠れた名作、間違いなし❗
★★★☆
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長期に渡り綿密にリハーサルを重ねて、本番を一気に撮りきったと言われていますが、、その緊張感とチームワークの絶妙さが、作品にテンポを生み全く飽きることがありませんでした。
それもこれも、監督の才覚も然り、名優達の技量無くしては、成し得なかったでしょう☝
本作は全員が主役であり脇役でもある、、
出演時間等も緻密に計算されたのでは?と思える程の各役者さんのバランスが取れていて面白い。。特に、どうやっても、役柄的にも、インパクト的にも捨吉役の【三船 敏郎】さんが目立ってしまう所(笑)を、出番を控え目にして、主役一人に依存させない群像劇に仕立てています。
「パンフォーカス」を用いた事で、遠目にいる人の細かい表情(演技)までしっかり分かり、大変効果的だったと思います👍
お杉役の【山田 五十鈴】さん、、恨み・妬み・嫉み全ての感情を晒けだし、恐ろしく妖艶に演じられています。。とにかくこの方、黒澤映画では善良な役柄が無く、どの作品をとっても鬼気迫る演技がホントに凄い!
かよ役の【香川 京子】さんは、可憐なアイドル的なお顔立ちながら、本作では体当たり的な汚され?役に徹しています。姉夫婦に虐げられ………可哀想過ぎます。
六兵衛役の【中村 鴈治郎】さん、、最初見て、誰か分からない位にメイクされています(笑)
ホント不気味でイヤミな老人(50代後半位の設定か?)は、見事でした。。
嘉平役の【左卜全】さん、、
「あんたいい人だねえ」と言われると、
「ただの石ころだ、散々揉まれて丸くなったのさ」なんて、いい味出してますが、、
六兵衛に「尻に帆をかけじゃねえのかい?」(悪事を犯して逃亡してるのでは?)なんて見破られて、騒ぎが起こると退散してしまいました。。
喜三郎役の【三井 弘次】さん、、「この唐変木!」なんて台詞も心地よく、粋が感じられる。嘉平からも「気っ風がいい」と言わしめた男、やはり喜三郎が、この物語の象徴だったのか!とラストで唸りました(笑)
役者役の【藤原 釜足】さん、、アル中で何言ってるか分からない(笑)が、「ゴロウロップ」=「五臓六腑」は辛うじて確認出来た☝
その他も、
夜鷹のおせん【根岸 明美】さんを、いつもからかうが、実は惚れてる殿様【千秋 実】さん、長屋でせっせと仕事する留吉【東野 英治郎】さんと辰【田中 春男】さん、下っ引きの島造【上田 吉二郎】さんから十手を奪うトラブルメーカー(笑)卯之吉【藤木 悠】さん、お色気(笑)で大家の座を勝ちとったお滝【清川 虹子】さん、ノリノリ踊りの駕籠かきの熊【渡辺 篤】さんと津軽【藤田山】さん、、
其々に存在感と見せ場ありありでした👍



















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