『巨人と玩具』
先日、「午前十時の映画祭」で『裸の島』を鑑賞して来ました。
新藤兼人監督、究極の映画のカタチ、、
瀬戸内海の孤島に暮らす家族、人間の生死と自然の営みを観察するのに余計な言葉はいらない!という気概がひしひしと伝わる衝撃的な作品でした。
ですが、、
今回は、全く別モノにカテゴライズされる様な、大都会に生きる大手企業で働くヒト達の物語。
いや、、
根底にあるテーマ「生きるか死ぬか?」という観点からすれば…むしろ一緒かも知れません。
菓子業界ライバル三社の熾烈な争いは、人智の限界を超えた死闘の如く厳しかった。。。
増村保造監督の社会風刺に満ち満ちた、アヴァンギャルドな問題作!
◇ 1958年作品(大映)
監督 : 増村 保造
原作 : 開高 健
脚本 : 白坂 依志夫
撮影 : 村井 博
音楽 : 塚原 晢夫
出演 : 野添 ひとみ、川口 浩、高松 英郎、小野 道子、信 欣三、伊藤 雄之助、藤山 浩一、山茶花 究、町田 博子、潮 万太郎
〈簡単なあらすじ〉
大都市の朝、、駅から流れ出る人の群れは、
まるで、製造器機からコンベアーに絞り出される加工菓子の様に、規則的に隊列を成して、各々の会社へ振り分けられていく…‥
戦後十年余、、経済成長に伴い、同業社間の過当競争は激化するばかり…
今や、キャラメルやドロップキャンディー、チョコレートなどを専門とする菓子業界大手三社(ワールド、ジャイアンツ・アポロ)の争いは、味や品質だけで勝負するのではなく、懸賞のセレクトと宣伝力により売れ行きが左右されている現実。。
「ワールド」の宣伝部・合田課長(高松 英郎)は、部長の矢代(信 欣三)の娘・鈴枝(町田 博子)と政略結婚までして周囲からは、若くして次期部長とも囁かれる程のヤリ手だ。
そして、まだ入社一週間の西 洋介(川口 浩)は、合田課長から大学時代のラグビー経験に親近感を持たれ、以来、付き人の如く働くようになる。
西の学生時代の親友・横山 忠夫(藤山 浩一)は、ライバル会社「ジャイアンツ」に入社した、、その横山の紹介で知り合った「アポロ」の倉橋 雅美(小野 道子)と競合三社で正々堂々闘おうと誓った。。
合田課長は、
街中で見つけた、一見冴えない虫歯だらけの娘・島 京子(野添 ひとみ)に未知の魅力があると見極め、直ぐに売れっ子カメラマンの春川(伊藤 雄之助)に京子の撮影を依頼した。
そして、そのグラビアが雑誌に掲載され、大評判となり、京子はたちまち話題の人となる。
合田の思惑通りに作戦が成功して、ワールド社専属のタレントとなった京子を武器に、大々的な宣伝活動が始まった❗❗
そして「アポロ」の懸賞は、、
婚礼品の家具や家電等一式❗
この争いは、現実的な懸賞を掲げた「アポロ」が抜きん出た実績を上げ、見事アイデアの勝利かと思われたが……‥
その「アポロ」の生産工場が大火災となり六ヶ月間の商品出荷停止を余儀無くされ、機会損失も甚だしい事態に追い込まれてしまった。。
ライバル会社の失速をチャンスと捉え、合田課長は、更なる宣伝キャンペーンに打ってでようと気勢を上げるが…‥
益々、売れっ子になっていく京子は、西への気持ちを打ち明け自らの高収入をエサに交際を迫るが、西は元々京子を「ムシバ」と呼ぶ程、異性として意識をしていない上、雅美と交際をしていた為、あっさり断られると、京子は「ワールド」から離れ、別のマネージメント会社へ勝手に移籍してしまった。
「ワールド」の社運を賭けた宣伝キャンペーンにはどうしても京子が必要だったが、ギャラの釣り上げを要求され破談となる、、
部長に昇進した合田は、京子をワールドに戻す為の最後の手段として、西に京子と男女の関係を持つ様に命令した。。
この醜い争いは、一体いつまで続くのだろうか?
……‥…‥…‥…‥(★ネタバレしますm(__)m)
京子を発掘した合田曰く、、
他の宣伝等でイメージのついてしまった既存の人気タレントを使うよりも何の色も付いていない、新人の京子を使う方がインパクトは大きいだろう、、なるほど!合田課長は相当のヤリ手なのが分かる。先見の明然り、マスコミを巧みに使ってスターを作り上げる技に長けた策士だ。
そして、合田の思惑通りに有名になった京子を「ワールド」の宣伝に起用するが、、「アポロ」の懸賞が断トツ人気だった為に、高い宣伝費を注ぎ込んだ割には売上は期待値ほどは伸びなかった……‥
当時は勿論、ブラック企業と言うWord自体も無かったのだろうが、、
後半は只々、虚しく見えて、正直言って、かなり胸くそ悪かった、、
覚醒剤をやりながら、ひどい頭痛に悩まされ鎮痛剤まで服用して、昼夜問わず働き続ける合田は、崩壊する家庭も顧みず、ひたすら取締役に昇進する事だけを目標に生きている。。
「日本という国にいる限り、会社の為に死ぬまで働き続けて、会社に尽くせ!」と、最後まで、ほざき続ける合田は殊勝な日本人か…‥
部長昇進の代償、、血塗られた辞令書は、ホントに痛々しい。。
結局、京子を連れ戻せなかった事で、血ヘドを吐きながらも、自ら会社のトレードマークの宇宙服を着て宣伝に向かおうとする、夢遊病者の様な合田を西は殴り倒す、、
仕方なく、その宇宙服を着て街に出た、西。。
不貞腐れた表情で街を歩き、笑い者にされている所を雅美が見付け「笑顔で!」とアドバイスを受けると、自棄っパチになった西の表情が、笑顔に変化していく、、
街の喧騒を傍観しながらエンドマーク…(終)
腹を括った様に見える、前途洋々(?)なラストシーンは非常にシニカルで、結局何も変わらず西は、狂気に満ちたカオスにどっぷり浸かっていく……‥
彼はこの先、
出世街道をひた走って行くのか?
それとも会社を去り違う道を選ぶのか?
主人公・西の心中の葛藤の如く、、
笑いに始まり、苦笑いに変わり、そして怒りが込み上げ、辟易して、最後はバカバカしさに笑うしかなくなる映画でした。。
★★★
……‥…‥…‥…‥…‥
とにかく、、
ワールド社のテーマソング
「ワ・ワ・ワ・ワールドキャラメル🎵🎵」が、頭から離れません(笑)
そして、斬新な構成・演出、、
あの、カチカチと中々火が着かないライターからフラッシュバックに移行するシーンがパターン化して行く所がまた面白い!
ライターの火が着かず、滞ってしまった時間に回想や経過を短いカットで組み込む無駄のない演出?(笑) それがまた、スタイリッシュでした❗
増村保造監督と言えば、
若尾文子さんとのコンビ作品が有名で、人間の暗部をえぐりだす様なダークサイド的な作品が多く見られますが、本作は、より近代的な作風で、辛辣な社会批判に徹底していて、只、奇をてらった、まやかしモノとは一線を画す作品だと思いました。
決して一筋縄では行かない、増村監督の映像マジックには、恐れ入りました。m(__)m
○●◎○●◎○●◎○●◎○●◎
和製シンデレラストーリーのヒロイン京子役の【野添 ひとみ】さん、、前歯がひどい虫歯というだけでインパクトがハンパないが👍後半、虫歯が治療済みだったり、華やかな変貌ぶりも、イイですね❗(笑)
熱血タイプの新人・西役の【川口 浩】さんと、出世街道まっしぐらの合田役【高松 英郎】さん、、最初は尊敬する大先輩だったが…‥あまりにドラスティックな考え方を強要され、段々と亀裂が生じて行く、、最後の二人の衝突は迫真モノでした👍
もう一人のヒロイン雅美役の【小野 道子】さん、、出来るOLを色っぽく好演し西の心を鷲掴みしました❗(笑)
西の親友・横山役の【藤山 浩一】さん、、
ジャイアンツ社を早々に退職して、京子のマネージメントをしていた。西からは裏切者と罵られるが「会社に一生安月給でコキ使われ続けるのか?」と悟った様に熱くなった西をなだめる。確かに、京子を横取りした事は誉められないが、この横山が行った事が唯一正しい選択だったのかも知れない。。。
保守的な男とレッテルを貼られている矢代部長役の【信 欣三】さん、、義を重んじ、人が良すぎて一般社員からも卑下される様な小心者と見られ、胃を壊し定時の薬が欠かせず、最後はヤリ手の娘婿の合田に地位を奪われてしまう。。
しかし、存在すら否定されようとも、会社にはこの様な、ご意見番的に違う角度から物事を見れる人間も必要なのではないかと私は思っています。特にワンマン経営の会社には。。。
踏んだり蹴ったりのこの部長に同情している私自身も、その敗北者の一人…‥🙏(苦笑)
以上。。

























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