『タクシー・ドライバー』


まさか、この時代に、この作品が映画館で観れるとは。。『ディア・ハンター』といい、私の映画熱が沸点に達していた時代の作品が、続々リバイバルされるのは、嬉しい限りです❗

勿論、何度も観ている作品ですが、
スクリーンで観るのは初見以来で、まだ子供の頃、何処かの名画座だったと思いますが、その時の衝撃だけは、今も忘れていません。

という訳で、
また、久々になりましたが、
「キネマ旬報シアター」で鑑賞して来ました!


[TAXI DRIVER] (アメリカ)
◇ 1976年作品(コロンビア)
監督 : マーティン・スコセッシ
脚本 : ポール・シュレイダー
撮影 : マイケル・チャップマン
音楽 : バーナード・ハーマン
出演 : ロバート・デ・ニーロ、シビル・シェパード、ハーベイ・カイテル、ジョディ・フォスター、ピーター・ボイル、アルバート・ブルックス、レナード・ハリス


★〈簡単なあらすじm(__)m〉


ニューヨーク、
ベトナム帰還兵のトラビス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)は極度の不眠症に悩むが故、夜勤のタクシー運転手として働く様になる。仕事が終わっても眠れずにポルノ映画館等で過ごす日々を送っているが、暴力・麻薬・売春等で退廃したこの街に嫌悪感を抱いていた。


休む事も無く、どんな危険な場所へも行くトラビスは、仕事仲間のウィザード(ピーター・ボイル)達から守銭奴とからかわれる程に働き、金ばかりが貯まっていく。。


ある日、大統領選を控えた候補者パランタイン(レナード・ハリス)の選挙事務所に勤めるベッツイ(シビル・シェパード)に一目惚れしたトラビスは、積極的に彼女を誘い、ようやくデートにまでこぎ着けるが、デート当日、ポルノ映画館へ連れて行った事で、憤慨したベッツイから絶縁されてしまった。
それでも諦めきれず彼女が働く選挙事務所に行くが、同僚のトム(アルバート・プルックス)から追い払われトラビスは激昂するも仕方なく、その場から退散した。


それ以来、「この堕落した街を自分がきれいにする」と取り憑かれたかの様に一念発起したトラビスは、鈍っていた身体を鍛え直し、闇のルートから拳銃4丁を買い、銃の訓練にも励み、その時(?)に備える日々を送った。

以前、、
トラビスのタクシーに突然逃げ込んで来た売春婦らしき少女・アイリス(ジョディ・フォスター)が、追いかけて来たポン引き男・スポーツ(ハーヴェイ・カイテル)に無理矢理タクシーを降ろされ捕らわれるという出来事があり、以来その事がずっと気になっていたトラビスは、間違いなく未成年に見える彼女を、いつか助け出したいと考えていた。。



その後トラビスは、客を装い売春宿でアイリスと会い、この仕事を辞め家族の許へ帰る様、執拗に説得するが、スポーツに愛されていると思い込むアイリスは、その時は意に介さなかった。。

そして、
パランタインの演説が行われる日、


遂に決行の時が来た。。


……‥…‥…‥…‥(★ネタバレしますm(__)m)

トラビスの変化は自分を無下にしたベッツイへの復讐心が発端となる理不尽な逆恨みからで、初めはパランタインの暗殺を計画するが、シークレット・サービスに発見され敢えなく諦めると、矛先をアイリスの救出とスポーツ達売春組織の根絶にシフトして行く。。

この判断が重要な機転となる。。


そして、アイリスのいる売春宿に向かうトラビス……‥

その後の惨劇は、映画史に残る衝撃的な名シーンとなり、一生、私の頭から離れない……‥


凄惨な銃撃戦となり、命を張ってアイリスを救ったトラビスは、その場で自死を試みるが、拳銃に実弾は残っていなかった…‥彼は唯、死にたいだけだったのかも知れない。。

重傷を負ったが、死は免れたトラビスは、、
無事に保護され自宅に戻ったアイリスの家族から感謝され、新聞の報道により世間からも英雄視された。。

皮肉にも、暗殺未遂から一転、ヒーローへと転身したトラビス。


時が経ち、傷も癒え仕事復帰していたトラビスのタクシーに一人の乗客が…‥
バックミラー越しに映る乗客は、あのベッツイだった…‥トラビスは取り乱さず、心情を打ち明ける事もせず、唯、二人だけの特別な時間が淡々と流れて行く。。


精神的にも落ち着きを取り戻したトラビスとベッツイの会話はロマンチックにも見えたが、二人は、最早やり直せる筈もなく、彼女のアパートに到着すると、何か言いたげなベッツイを遮断するかの様なトラビスの態度を察知し、何も話さず別れた。。


そしてトラビスは、
サイドミラーに映るベッツイの美しい容姿に見惚れる事無く、またニューヨークの淫靡な闇の中に吸い込まれて行った。

大人ぶった少年だった頃の私は、只々驚愕し…‥
大人を経験し老いてゆく私は、トラビスの最後の温和な表情に、何とも言えぬ哀愁を感じ…‥しばらくその余韻に浸ってしまった。

★★★★☆


……‥…‥

本作は、
精神疾患を負ったベトナム帰還兵が退廃したニューヨークの街で暮らす苦悩が原点となる、、アメリカン・ニューシネマ後期の傑作で、あの映画館や売春宿等の描写は、今にも饐えた匂いで充満しそうなリアル感があり、凄惨なクライマックスシーン等、どこを取ってもインパクト大の【マーティン・スコセッシ】監督が創造した奇跡的なノワールでした。。


※ 本人も、浮気した妻の殺害を目論むタクシーの乗客役でカメオ出演しています。その後のトラビスの行動の動機付けとなる様な、何気に意味深な役柄でした。。

その昔、鑑賞した時に、特に印象に残ったのが、クライマックスの銃撃戦シーンでスポーツが放った弾丸がトラビスの首に命中した後の彼のリアルを超越した無様で、ある意味滑稽な動きと、その後、右腕に収納されていたスライド式の銃を使うシーンでは、アクション映画にも通ずる様なカッコよさに興奮して、この二つの動作を、よく友達同士でマネをした事を思い出しました…‥m(__)m

この惨劇の一連のシークエンスで、警官が駆け付け、満身創痍のトラビスに銃を向けたシーンから、天井からの描写へと変わり、部屋から入口までの「惨劇の結末」を捉えたカメラワーク等、随所に【ヒッチコック】のオマージュと思えるシーンがありますが、音楽も然り、色々な点でヒッチコック氏に縁のある作品だったと、再見して、妙に納得してしまいました。

1960~70年代は、ベトナム戦争やその帰還兵を題材にした作品が、反戦映画として多く製作されヒットもしましたが、戦後の日本生まれの我々世代にとって、当時は現実味の無い客観的な同情と言う見方をしていたのだと思いますが…‥今や、この日本でさえも、決して安全とは言えない不安の中、戦争が人間へ及ぼす恐怖や心身的ダメージを以前よりも身近に感じた様な気がします。。

……‥…‥…‥……‥…‥


紛れもなく【ロバート・デ・ニーロ】の代表作。同じスコセッシ監督作品でスポーツ役の【ハーヴェイ・カイテル】が主役だった『ミーン・ストリート』の出演から『ゴッド・ファーザーPartⅡ』で、若き日のドン・コルレオーネを演じ見事アカデミー賞助演男優賞を獲得後の本作出演でスターの座を確固としました。
その後も『ディア・ハンター』『レイジング・ブル』等の意欲作に取り組み、多くの賞を勝ち取った当時が、彼のキャリアの中で最盛期だった事は間違いなく…‥ あの独特の危うさを秘めた男を演じさせたら誰も敵いません。。


既に子役として映画に出演していた【ジョディ・フォスター】は、本作撮影時、正に13歳だったんですね(驚)…‥その後、大人になり『告発の行方』や『羊たちの沈黙』等、シリアスな作品に数多く出演して大女優となりましたが、、当時の年齢からして、本作はトラウマにならなかったのか?心配になりましたm(__)m


【ハーヴェイ・カイテル】は、クセのあるナルシストなポン引き野郎をイヤミたっぷりに演じています!その後、渋~いバイプレイヤー俳優となりますが『レザボア・ドッグス』『スモーク』等の名作に主役としても出演している、味わい深い名優です。


【シビル・シェパード】は『ラスト・ショー』等でも然り、終始美しいのですが(笑)、ラストのバックミラー越しの表情がとにかく秀逸!笑みも溢さず、眉もひそめずにクールに通し、トラビスに対して、安っぽい同情を見せない所が、本作の価値をワンランク上げている様にも思えました。
……‥…‥…‥…‥……‥…‥…‥


音楽は、『サイコ』等、ヒッチコック映画でお馴染みだった【バーナード・ハーマン】氏、、1975年12月24日・本作の最後のレコーディングセッションの12時間後に息を引き取られたという、悲しいエピソードもあります…‥メロウで耽美な【トム・スコット】のサックスやミュート・トランペットのテーマも大好きですが、あの抑揚のあるサスペンスチックなスネアドラムが不安感を増幅させていく、あのセンスこそ、ヒッチコック映画を支えて来たバーナード・ハーマン氏、面目躍如の素晴らしさでした m(__)m

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余談☝
⬆アイリスがトーストにジャムを塗りたくって食べるシーン、、私も同じ様にマネをしてジャム・トーストを食べた覚えがあります(笑)その影響か?いまだにジャムパン系統が大好きです(^-^)/

最後に、
本作がリバイバルされたのは「キネマ旬報」誌の1970年代外国映画ベストテンの第一位になった記念からとの事ですが、大ファンとしては感謝・感激 ・感涙モノでした。

今後もこの様な、名作映画をスクリーンで観れる事を願いながら、今の私が出来うる限り映画館へ足を運びたいと思います🚶🚶🚶